「アニメ業界どうなってんの?」『とんかつDJアゲ太郎』監督・大地丙太郎と『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ演出・山本寛が語る"ダメなプロデューサー"が増えた理由とは | ニコニコニュース

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 『おじゃる丸』『とんかつDJアゲ太郎』でおなじみ、アニメ監督の大地丙太郎氏と、社会現象を巻き起こしたアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』で、シリーズ演出を務めたアニメ監督の山本寛氏が対談。

 「今のアニメ業界どうなってんの?」を、テーマに「プロデューサーの在り方」や「制作費の立場が弱くなった経緯」についてたっぷりと語った。

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理想的なプロデューサーと監督の関係

山本:
 大地さんが、プロデューサーに対する考えを10月の末から11月の初旬までずっと一週間ぐらいTwitterで語っていて。僕はこれを見て、大地さんだいぶキテいるなと思っていうのを受け止めたんですけど、僕のブログでこう書かせてもらってるんです。

 「プロデューサーとは、本来保護者だと思っている。良く僕も対外的には、監督とプロデューサーは車の両輪、二人三脚みたいな説明をするが、実はパワーバランス的にはちょっと違う。監督は結局子供なのだ。おもちゃーおもちゃーとアニメをいじって騒いでいる。大地監督のおっしゃる通り、文化祭の気分で働いている。プロデューサーはそこに張り付いて、時にはおだてたり、褒めたり、時には叱ったり、躾をする。監督やクリエイターの面倒を見て、保護し、教育していると言ってもいい。」

 僕が先月書いたブログなんですけども。

大地:
 大賛成だよ。

山本:
 そういう関係でしたよね?

大地:
 この前江口寿史とも話したんだけど、俺たちを大人と思うなよと。

一同:
 (笑)

山本:
 別の例えをするとね、ピッチャーとキャッチャーみたいな例えも僕は、よくするんですけど、ピッチャーがアニメ監督で、キャッチャーがプロデューサー、要は女房役なんだと。

 でも、キャッチャーが球を投げるわけではない、と。球を投げるのはピッチャーであって、球を要求するのがキャッチャーだという。

 最近、己で投げているような感覚に陥っているプロデューサーがなんか多いんじゃないのかなという気がしてならないんです。「じゃあ、あんた監督やれば?」みたいな。

大地:
 どこから話せばいいか......。

一同:
 (笑)

山本:
 もうどの辺でも、どの辺でも(笑)。

時代劇が消えたように、アニメも同じ目にあう危機感

山本:
 (大地さんのTwitterでは)いかにプロデューサー不在、いや、いるだけのプロデューサーというのが増えたという指摘がされていますね。

大地:
 初めてプロデューサーって大事なんだと、このキャリアでやっとわかったわけですよ。いままで、それこそちゃんと子ども扱いしてくれて、プロデューサーに保護されて、「あんた何も考えなくていいのよ。面白いもの作っておいで」って言われて「うん、描く描く!」なんて。「遅れちゃだめよ」なんて。「はい、わかりました」ってコンテ描いて。で「いいの出来たねー」それで「えへへ」なんてやらされていたわけですよ。

 でも、それをやってくれなくなった現場が、急に増えてきた。結局、俺(監督)の下にいる、現場のやつらに今度は、プロデューサーがやるべきところをやらなくちゃいけない。そうじゃないと現場の精神も死んでしまう状態になったんで。

 初めて「はっ、これプロデューサーいないわ」って、2本もやって、やっとわかったわけです。

 で、よくそういう目で周りを見ると「だいぶいないな」と。春日太一君が描いた『なぜ時代劇は滅びるのか』。かつてあんなにあった時代劇が、今は全然ない。

山本:
 『水戸黄門』もBSで流れていますけれども......。

大地:
 まあ、ないに等しい。とにかく今のアニメのように時代劇は流れていたんだから、それがなくなった。そんなに時代劇をやっていたのということ、たぶん今の人は信じられないと思う。これと同じ目に合うなという、危機感が生まれてきて。

山本:
 何もかもプロデューサーのせいにするつもりはないんですけれども。日本のアニメ今年100年迎えますけど、本当に50年以上は監督とプロデューサーとのタッグ、まさに車の両輪のような関係で、僕は持ち堪えてきたんじゃないかと思っている。僕も経験があるんですよね。

 僕も色んなプロデューサーに支えられてきて、やってきました。だからプロデューサーがいなければ、今の僕は絶対にいないと思います。いろんな人に感謝しているんだけど、ちょっと最近は......。もう一回僕のブログに戻りますけど。

 「今やプロデューサーは子供となってしまった。まず、コミュ障が多くなった。監督やクリエイターとまともに会話しないのだ。挨拶すらできないやつもいる。年明けに話題になった彼とかそうだった。クリエイターが怖いのか知らないが、現場には全然寄ってこない。こっちだって怪物ではない、理を通してくれれば、無茶も聞く。ていうか今までそうしてきた。今のプロデューサーは、最初からそれをしない。黙ったまま、時間切れを狙って海外へぶん投げて、溶かす。追い込み時期なのにこちらが変に長く手空きになって、おかしいな、と思っていたらそれをされて、呆然となった記憶がある。そもそも、コミュニケーションの取れないプロデューサーって、なんなんだ? 何の役に立つんだ?」

大地:
 (笑)

山本:
 コミュニケーションを取ってくれないんですよ。

大地:
 そうかもしれないね。

山本:
 話してくれないですよ。もうなによりも、ちょっとクレームがあったり、こうしろああしろというんじゃなくて、もう端から信用していないというプロデューサーが増えた気がするんですよ。

大地:
 コミュ障タイプでも多分いろいろあると思うんだ。本当にコミュ障というのは、対人が苦手という人がいると思うんだけど、昔はできたのにという人もいるんだよね。

山本:
 ああ、変わっちゃたんですか?

大地:
 そうなんだよ。それに、気が付かないまま、二作品もやっちゃったんだよ。もうずっと、やってきたのに。

山本:
 そういうことなんですね。

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