「Ryzen Threadripper」到着! これまでにない製品ボックスと,アイデア賞モノのCPU取り付け方法を見てみよう

 4Gamerに,Ryzen Threadripperがやってきた。

 到着したのは,日本時間2017年8月10日22:00に発売予定の16コア32スレッド対応モデル「

Ryzen Threadripper 1950X

」(以下,1950X)と,12コア24スレッド対応モデル「

Ryzen Threadripper 1920X

」(以下,1920X),そして対応マザーボードなど評価機材一式だ。

 Ryzen Threadripperは,非常にユニークな製品ボックスを採用することが発表済みなので,それが届くのかと思ったのだが,届いた段ボールを開梱して中から出てきたのは,製品名プリント入りの,樹脂製ローリングケース。それを開けると,1950Xと1920Xの製品ボックス――見てのとおり「箱」ではないけれども,便宜的にいつもどおりこう呼ぶ――が入っているのだが,このケースには「扉が開いたことを感知するセンサー」が仕込んであって,1950Xと1920Xの製品ボックスを下から照らすようになっているのである。

 ちなみにケースには,Ryzen Threadripperプロセッサ入りの記念品も入っていた。おそらく市販はされないと思うが,ずっしりとしていて,なかなかの存在感だ。

 というわけで取り出した1950Xおよび1920Xの製品ボックスだが,これまで存在していたCPUの製品ボックスのどれとも似ていない。


 ローリングケースを開けたときのギミックで分かるように,製品ボックス中央部のRyzen Threadripperロゴ部は光を通すようになっているため,やろうと思えば,CPUを取り出した後,部屋のオブジェとして使うことも可能だろう。

Ryzen Threadripper,製品ボックスの中身はこうなっている

 さて,いよいよ“開封の儀”である。

 前段で示した写真を見て気付いた人もいると思うが,Ryzen Threadripperの製品ボックスは,正面向かって左側面にある「RIP HERE」のところを指でつまんで軽く引けば,「本体を覆う紙の帯」がジッパー加工に沿って切れて,外れるようになっている。切り取った部分の裏には「紙の帯を外したら次にどうすればいいのか」がプリントしてある親切設計だ。

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「紙の帯から切り取った部分」の裏には,これからの手順が書いてある。4コマの流れは左から右

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紙の帯を外した状態の製品ボックス。ここにもRyzen Threadripperロゴが入っている。芸が細かい

 というわけで,手順書に従って取り出していこう。まず発泡スチロール製のボックス外装を上下に分離し,大きなRyzen Threadripperロゴの入った樹脂製ブロックを取り出す。

 発泡スチロール製ボックス外装の底面側には,ドキュメント類の入った紙製ケースがあり,その下にはトルクスドライバーとCPUクーラー取り付け用ブラケットが入っていた。

 樹脂製ブロックは見た目こそ大仰ながらも作りはシンプルで,前段でも紹介した,背面側にある「さあ回してください」的なところを回して引き抜くようにすれば,CPUの台座が出てくる。

 CPUの台座は,金属製クリップで黒いカバーを固定するようになっているので,まず取っ手でクリップを外し,さらに,2か所ある「切り込みに囲まれた部分を軽く押すようにしながら黒いカバーを持ち上げる。これでようやく,Ryzen Threadripperのお目見えだ。

 Ryzen Threadripperは,AMDが「

Carrier Frame

」(キャリアフレーム,以下カタカナ表記)と呼ぶオレンジ色の樹脂フレームに覆われている。台座からは,このキャリアフレームごと取り出す仕様だ。

 詳細は続く段落でお伝えするが,Ryzen Threadripperをキャリアフレームから取り外す必要はない。開封作業はここで完了だ。

Socket TR4は新しいやり方で「CPU装着時のピン折れリスク」に対策

 Ryzen ThreadripperはLGAパッケージを採用しており,コンタクト(≒ピン)数は4094もある。「

Socket TR4

」(もしくは「sTR4」)と呼ばれるソケット側のピンが万が一曲がってしまうと,仮に自己責任を覚悟したとしても,直すのは極めて困難だろう。

 そこでAMDが採用したのが,キャリアフレームを活用する取り付け方法である。

 取り付けの流れは下の連続写真を見てもらったほうが早いと思うが,要点は大きく分けて2つある。1つは,Socket TR4の場合,ソケットと,CPUを固定する金属製カバーの間に,「Ryzen Threadripperをキャリアフレームごと挿入するスロット」があり,スロットへ正常に差し込んだ状態を確認するまで,ソケット側のピンを露出させる必要がないこと。もう1つは,製品ボックスに付属するトルクスドライバーは,CPUを固定するとき,必要十分なトルクがかかったときには音を慣らす仕様になっているため,「どれくらい固定すればいいのか」が簡単に分かるようになっていることだ。

 後者についてAMDは「なので固定するときには必ず,製品ボックス付属のトルクスドライバーを使ってほしい」と呼びかけているので,この点は憶えておきたい。

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1.CPUを固定する金属フレーム上のトルクスビスには通し番号が振ってある。開けるときは3→2→1,締めるときは1→2→3の順番だという説明もあり

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2.製品ボックス付属のトルクスドライバーでビスを緩めると,CPUを固定する金属フレームが跳ね上がる仕掛けになっている

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3.赤矢印で示したとおり,青い部分に両端から軽く力を入れるように親指と人差し指(など)で挟み,スロット部を持ち上げる

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4.こちらが持ち上げた状態。「半透明のダミーキャリアフレームがスロットに差さっている」のが分かりやすい

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5.半透明のダミーキャリアフレームを引き抜く

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6.空いたスロットへ,5.と逆の要領でRyzen Threadripper付きキャリアフレームを差す

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7.一番下まで正常に差し込んだ状態がこちら。ズレてしまった場合はスロットが目に見えてたわんだりするため,この段階で慎重に確認することを勧めたい

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8.間違いなくきちんとスロットへ差し込めたことを確認したら,ここでようやくソケットカバーを外すことになる

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9.再びスロット部の青い部分を指でつまんで,ゆっくりと下ろしていく。最後まで下ろし切ると仮固定が可能だ

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10.最後に金属フレームを下ろして,1→2→3の順番でトルクスビスを締める。適切なトルクがかかるとトルクスドライバーが「カチッ」と音を立てるので,音を参考にしよう

 ちょっと慣れが必要かもと感じたのは,Ryzen Threadripperごとキャリアフレームをスロットへ差し込むとき,慎重にやらないと下(≒奥)のほうでズレることがあることくらい。ただそれも,気を付けてやればまず問題にはならないように思う。エンドユーザーがピンに触れてしまう危険性を極限まで減らしてある,よくできた固定機構と言っていいのではないだろうか。

 ちなみに下の写真は,Ryzen Threadripperの製品ボックスに付属していたCPUクーラー取り付け用ブラケットを(こちらは一般的なプラスドライバーで)ソケットに固定したところである。CPUクーラー取り付け用ブラケットの一部がCPUに“かかって”しまっているのが気になると思うが,AMDによれば,ヒートスプレッダの下にあるCPUのダイは,CPUクーラー取り付け用ブラケットで囲まれた円の内部で完全に収まるため,冷却に問題はないのだそうだ。


8月3日時点でAMDが公開しているリスト

によれば,現時点で以下に挙げるCPUクーラーが,製品ボックスに付属するCPUクーラー取り付け用ブラケット,もしくはCPUクーラー側に付属するブラケットを用いた固定に対応するという。簡易液冷クーラーはほぼすべてがCPU付属のブラケットによる固定をサポートするようだ。

  • Arctic「Freezer 33」「Liquid Freezer 360」「Liquid Freezer 240」
  • Cooler Master Technology:「Hyper 212 LED TR Edition」「MasterLiquid 240」
  • Corsair「Hydro Series H115i Extreme Performance Liquid CPU Cooler」「Hydro Series H100i v2 Extreme Performance Water/Liquid CPU Cooler」「Hydro Series H105 Extreme Performance 240mm Liquid CPU Cooler」「Hydro Series H80i V2 Water/Liquid CPU Cooler」
  • Cryorig「A80」「A40 Ultimate」「A40」
  • EVGA「CLC 280 Liquid / Water CPU Cooler」
  • NZXT「Kraken X62」「Kraken X61」「Kraken X52」
  • Thermaltake Technology「Water 3.0 Riing RGB 360」「Water 3.0 Riing RGB 280」「Water 3.0 Riing RGB 240」「Water 3.0 Ultimate」「Water 3.0 Extreme」

評価キットのマザーボードもチェックしておく

 以上がRyzen Threadripperの開梱から取り付けまでだが,冒頭で紹介したとおり,今回届いたのは評価機材一式だ。CPUのほかには,

  • ASUSTeK Computer製「X399」マザーボード「ROG ZENITH EXTREME
  • G.Skill International Enterprise製PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB 2枚セット「F4-3200C14D-16GTZR×2
  • Thermaltake Technology製簡易液冷CPUクーラー「Floe Riing RGB 360 TT Premium Edition」(型番:CL-W158-PL12SW-A)
  • Thermaltake Technology製電源ユニット「Toughpower iRGB PLUS 1250W Titanium - TT Premium Edition」(型番:TPI-1250D-T)

と,より正確を期せばもう1つアクリル板も付属していた。

 製品名を並べただけで気付いた人もいると思うが,これらはすべて,いわゆるRGBイルミネーションに対応している。なので,組み上げて通電すると,下の写真のとおり,とても派手な感じになる。

 というわけで,ここからはASUSTeK Computer(以下,ASUS)のX399マザーボードであるROG ZENITH EXTREMEを概観してみよう。

 メモリスロットは8本で,標準対応はもちろんPC4-25600(DDR4-2667) DDR4 SDRAM。8月3日時点で公開されている英文マニュアルだと,オーバークロックではPC4-22400(DDR4-2800)までのサポートになっているが,これはCPUの発売,もしくは発売後に向けてアップデートが入るのではなかろうか。

 なお,メモリスロットはすべて,耐久度を高めてあるという「SafeDIMM」仕様になっていた。

 上の写真でメモリスロットの右に見えるのは,メモリスロットと同じ形状を採用するM.2インタフェース「DIMM.2」だ。こちらは両面それぞれがCPUとPCI Express(以下,PCIe) Gen.3 x4でつながり,M.2 2110カードを装着できるようになっている。

 ROG ZENITH EXTREMEは別途,サウスブリッジの近くにCPUとつながるPCIe Gen.3 x4接続のM.2 2280スロットも持つため,計算上は標準で3枚のNVM Express型SSDをサポートする。

Ryzen

DIMM.2専用カード「ROG DIMM.2」。カードの表と裏に1枚ずつSSDを差せるようになっている。いずれもPCIe Gen.3 x4接続だ

Ryzen

サウスブリッジを覆うカバーを開けると,ここにもM.2スロットが。「SSD 960 PRO」は評価機材として標準で差してあった

 物理的な拡張スロットはPCIe x16

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4,物理的にはx16カードにも対応するPCIe x4

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1,PCIe x1

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1。4本あるPCIe x16スロットのうちPCIe Gen.3 x16接続なのはCPU側から最も近いスロットと3番めに近いスロットで,2番めはPCI Gen.3 x8接続,4本めは基本的にPCI Gen.3 x8接続ながら,オンボードのU.2スロットにSSDを差した場合はPCIe Gen.3 x4接続になるという。

 物理的なx16スロット4本で,合計48レーンはCPU直結。x4スロットとx1スロットはX399チップセットとつながっている。

Ryzen

ROG ZENITH EXTREMEは4-wayまでのSLIとCrossFireに対応しており,製品ボックスにはSLIブリッジが付属している。2-way用はもちろんSLI HB Bridgeだ

Ryzen

「大量のレーンを使い切りましょう」というわけでもないのだろうが,PCIe Gen.3 x4接続のASUS製10Gbit Ethernetカード「ROG AREION 10G Ethernet Card」が標準で付属している

 その多くがX399チップセットとの接続になっていると思われるI/Oインタフェースと,X399とつながるSerial ATA 6Gbpsポートの構成は下に写真で示したとおりだ。

 USBポートは,青いUSB 3.1 Gen.1 Type-Aが全部X399直結で,赤いUSB 3.1 Gen.2 Type-A&Type-C各1がASMedia Technology製コントローラ「ASM 3142」によるものとなる。

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I/Oインタフェース部。無線LAN機能はASUS独自の小型PCIeカード「Wi-Fi Go!」で実現している。1x1のIEEE 802.11adと2x2のIEEE 802.11ac両対応

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Serial ATA 6Gbpsポートは6基。写真でその左に見えるのがCPU直結かつCPUから最も遠いPCIe x16スロットと4レーンを共有するU.2ポートだ。右はUSB 3.1 Gen.1内部ポート

 基板を覆うカバー類やヒートシンクを外すと,もう少し情報が得られるので,確認していこう。

 CPU用の電源フェーズは見る限り8で,Republic of Gamersのマザーボードでお馴染みのデジタル電源コントローラ「VRM Digi+ EPU」が近くにある。電源部がCPUにかなり近いことと,ヒートシンクが小さめなのが,外観上の特徴と言えるだろうか。熱はヒートパイプで運び,I/Oインタフェース部のファンで冷却するから,近くても問題ないということなのかもしれない。

 CPUのノースブリッジ的機能用と思われる電源部はどこかなと探したところ,Socket TR4を挟んで8フェーズ電源部の反対側に3フェーズあった。これらがノースブリッジ的な機能やPCIeスロット,X399チップセット用という可能性はありそうだ。

 アナログサウンド段はASUSが「ROG SupremeFX」と呼ぶ,最近のROG製マザーボード上位モデルでよく採用されるのと近い構成で,搭載するHD Audio CODECは,Realtek Semiconductorの「ALC1220」をベースにした(と思われる)「SupremeFX S1220」になっている。その近くにあるESS Technology製のチップは同社D/Aコンバータの現行最上位モデルとなる「SABRE

32

Reference 32-bit 8-Channel Audio DAC」(型番:SABRE9018Q2C)で,ヘッドフォンアンプも統合したタイプと,相変わらず豪華だ。

組み上げたPCでテスト開始済み。結果は後日!

 以上,Ryzen Threadripperの評価機材一式を,駆け足で紹介してみた。

 4Gamerでは,組み上げたシステムを使い,テストを開始しているので,結果は後日,あらためてお伝えしたいと思う。

 世界初のデスクトップPC向け16コア32スレッド対応CPU(とその下位モデル)が持つ性能が気になる人は,あと少し待ってもらえれば幸いだ。


AMDのRyzen Threadripper製品情報ページ