miyahan.com | 液晶ディスプレイとカラーマネージメント P.3

■ カラーマネージメントのための環境作り【ディスプレイ編】

 カラーマネージメントは視点を変えると「光のマネージメント」とも言えます。最終的に色を判断するのはわたしたちの「目」なわけですから、光源から出る光が目にはいるまで面倒見てやることもカラーマネージメントのひとつと言えます。この章ではまず、ディスプレイから出た光を正確に届けるための工夫を紹介します。

● 遮光フードを取り付ける

 ディスプレイから出た光を正確に伝えるには、邪魔な成分:すなわち外光をシャットアウトする必要があります。もしディスプレイの光に外光成分(太陽光や照明光など)が入ってしまうと、色純度が低下したり(ex. 赤→ピンク)、暗部が明るくなり(ex. 黒→グレー)コントラスト比が低下してしまいます。

 これを防ぐのに最も効果的なのは「遮光フード」です。遮光フードは人間でいうサンバイザーみたいなもので、ディスプレイの上・および左右を覆うカバーです。材質は紙、プラスチック、金属など様々ですが、ディスプレイの光を反射しないよう内側にフェルトなどが張られています。遮光フードは一部のハイエンドディスプレイに付属していたり、オプションとして用意されています。

遮光フードの奥行き決定 もしディスプレイメーカーの純正品が無くても、簡単かつ安価に自作することが出来ます。光を遮断できればよいので、ぶっちゃけ段ボールでもOKです。内側に反射防止処理をしてやれば、フード自体が黒い必要もありません。しかし一点だけ注意して欲しいのが、フードでディスプレイ上部の排熱スリットを絶対に塞いではいけないということです。これを塞いでしまうと、最悪ディスプレイの故障・火災の原因になります。フードにかかる重力のモーメントをちょっと考えれば、両面テープなどを使わなくても設置することが出来ます。また、フードの奥行きは照明とディスプレイの位置から最適な長さを決定してください。(左図)

自作遮光フード 遮光フードの自作 液晶ディスプレイ用遮光フード
▲ NEC MultiSync LCD2690WUXi と スチロール製 自作遮光フード(NECロゴ入り)
  ※ サイドのパネルがディスプレイ底辺まで届いていないのは、スチレンボードの長さが足りなかったためです・・・(笑)

 この写真は私が自作したオリジナル遮光フードです。800円で買った A2サイズのスチレンボードを使っています。軽く、加工しやすいのでおすすめです。今回は表面に黒いクラフトペーパーが貼り付けられている特殊なタイプを使ったため、反射防止処理は必要ありませんでした。1つ注意すべきなのは、スチロール素材は一般的な接着剤だと溶けてしまうので、専用の接着剤を使いましょう。30分もあれば完成します。一枚成形したい!という人ならツヤ消しPPシートがオススメです。

 では接着剤を含め、総制作費わずか1000円の遮光フードがどれだけの威力を発揮するか検証してみましょう。上の一番左の写真で見えているデスクライトと天井照明を点灯させた状態で、遮光フードを取り付けない状態・取り付けた状態の違いを比べました。

※ 想定外の方法で計測器を使用しているため、輝度データは正確ではありません。

 まず写真でその違いがハッキリ分かる思います。遮光フードなしでは照明光が画面表面に当たってしまい、表示が明るくなってしまっています。 測色器で測ってみると、コントラスト比が 20:1 という悲惨な結果になってしまいました。一方、遮光フードを付けた場合、締まった黒が再現できており、コントラスト比も十分稼げています。

 ※ 遮光フードはカラーマネージメントのために必ず取り付けなくてはいけないアクセサリではありません。 蛍光灯が並んだ眩しいオフィスや、ディスプレイのすぐそばにデスクライトがある場合など、ディスプレイに想定しない光が多く映り込んでしまう場合だけでかまいません。 また逆に、照明光が意図しない方向へ飛ばないよう、照明器具に遮光フード(ガイド)を取り付けるのも有効な手段です。

● スタンドは高めに

 遮光フードを取り付けることで、上や左右からくる邪魔な光をシャットアウトすることができました。残すは "下から来る外光の対策" です。下からくる光とは主に机からの反射光です。遮光フードを筒状にしてはめてもいいのですが、それではあまりに不格好・不便です。そこで簡単にできる対策がスタンドを高くすることです。画面を机の天板から高く浮かせることで、強い反射光(=ディスプレイに近い場所で反射した光)が画面に当たることを防ぐことが出来ます。

 私が使っているデスクは天板が焦げ茶色なのですが、スタンドを下げすぎると反射光がディスプレイに当たって色が変わってしまうことがあります。ですから色を扱う作業をするときは、スタンドを高くして使っています。

スタンドの高さ

 ハイエンドディスプレイの多くは、画面が高めになるようにスタンドを設計しています。逆に、見やすさや駆動性が求められるホビーユース・ホームユースディスプレイでは、画面を机スレスレに下げることが出来るスタンドが採用されています。

● ウォームアップを忘れずに

 ほとんどの液晶ディスプレイのバックライトに使われている蛍光灯(冷陰極管)は、出力が安定するまでに時間がかかります。そのため 液晶ディスプレイで色を扱う場合、コールドスタート後 最低30分のウォームアップが必要です。

コールドスタート時の液晶ディスプレイ輝度・色温度 液晶ディスプレイコールドスタート時の色差(DeltaE、ΔE)
▲ 液晶ディスプレイをコールドスタートしたときのバックライト輝度・色温度の変化、および 色差(delta E , ΔE ) [図をクリックで拡大]

 上の図は、私が使用している NEC MultiSync LCD2690WUXi を、摂氏28度の室内でコールドスタートしたときの輝度、白点色温度の時間変化を調べたものです。一部のメーカーに、照度センサーによってスタート直後から輝度を安定させる機能をもった機種がありますが、グラフを見ると輝度よりも色温度のほうが安定するのに時間がかかるのが分かります。よって「輝度ドリフト補正」などの機能はカラーマネージメントには使えません。潔く待ちましょう。

 さて、驚くべき事にバックライトの出力が完全に安定するまでに2時間もかかってしまいました。冬場の寒い室内では安定にもさらに時間がかかると予想されます。しかし、ΔE をみてみると、1時間経てば delta E < 1.0 になり、人の目で分からないレベルまで到達しているので、そこまで神経質にならなくても良いと思います。

▲ 目次へ戻る

■ カラーマネージメントのための環境作り【照明編】

● 照明を変えれば色も変わってしまう

 もしあなたがディスプレイ以外に色を扱う作業(たとえば画像のプリントアウト)をする場合、最も重要なのが照明です。ホタル等ごく一部の例外(自己発光体)を除いて、この世にあるほとんどの物体は単体で見ることが出来ません。日光や月光、火などの光に照らされ初めて私たちはその色を感じることが出来ます。太陽光(自然光)はあらゆる可視光を豊富に、かつバランス良く含んでいるため、万物の色を豊かに再現してくれます。

太陽光の輝線スペクトル
▲ 太陽光の輝線スペクトル:500nm付近をピークになだらかな曲線になっている。
  ※ 所々ガタガタしているのは、大気圏内の各物質により一部の波長成分が吸収されているため。
  ※ スペクトルは季節や時間帯によって異なる。

 しかし私たちが作った光:人工光源 は太陽ほど高性能ではありません。特にくせ者なのが蛍光灯です。安価な蛍光灯は発光成分が偏っており、色を正確に再現することができません。では、そもそもなぜ波形成分(スペクトル)のバランスが悪いと正しく色を再現できないのでしょうか。

 私たちが目にする物体の色は、物体が持つ色(反射特性)と光源色の積算で求められます。つまり光源のスペクトルがフラットほど物体本来の色が得られ(常に1× 物体色 になる)、光源スペクトルにクセ・偏りがあると色が変わってしまうわけです。ここで小学生クラスの問題です。宇宙空間において青色のスポットライトで真っ赤なリンゴを照らしました。さて何色に見えるでしょうか・・・?(ライトには青以外、リンゴには赤以外の成分は一切入っていないものとします。)

 正解はもちろん「真っ黒で何も見えない」です。これは、かけ算する数字のどちらかが常に「0」を含んでいるため、結果、全ての波長が「0」になるためです。しかし実際のリンゴは赤色以外の色も僅かに含んでいるため、青いスポットライトを当てれば、暗い青色に見えます。これは極端な例ですが、不適切な光源下では物体の色がガラリと変わってしまうということが分かっていただけたと思います。

● 安物の蛍光灯に注意

安価な蛍光灯の輝線スペクトル 話を戻します。安価な家庭用蛍光灯、オフィス用蛍光灯、団地・マンションの共同廊下用常夜灯、街灯 などに使われる蛍光灯は左図のような黄色(570nm前後)の成分を非常に多く持っており、他の成分が少ない特徴を持っています。これは、ヒトの視覚(錐体細胞)が持つ特性を利用し最もまぶしい白に感じるように設計されているためです。このタイプの蛍光灯は事務作業や読書などには良いですが、色の正確性を求める作業には不適です。。

 色の再現性については、ヒトの視覚と異なる特性を持った色センサ:例えばカメラ でより実感することができます。カメラで安価な蛍光灯に照らされた物体を撮影すると、全体的に緑っぽくなる「緑被り」という現象が起こります。緑被りはデジタルカメラのホワイトバランス調整機能を使っても完全に改善することは不可能です。なぜなら、自然光やタングステンなどの光と比べて、あまりに偏ったスペクトルを持っているため、色温度をシフトするだけでは補正できないためです。(Photoshopなどで補正してやるしかない)

サトシ 安物蛍光灯 サトシ 高演色蛍光灯
▲ 左が一般的な安価蛍光灯、右が高演色蛍光灯(色評価用蛍光灯): どちらもオートホワイトバランスで撮影(他のパラメータもすべてオート)
  安物の蛍光灯下では緑被りが見られ、全体的にくすんだ色になっている。 一方、高演色蛍光灯(後述)では被写体が持つ色を引き出しており、生々しさが伝わってくる。

● 色評価用蛍光灯 / 高演色蛍光灯 のススメ

 そこでカラーマネージメントをする人全員におすすめしたいのが 色評価用蛍光灯高演色蛍光灯)の導入です。色評価用蛍光灯とは、色を正確に再現するために開発された演色性が高い蛍光灯のことです。照明の演色性(光源が再現できる色の豊かさ)は一般的に「平均演色評価数(Ra)」で表されます。Ra値は、太陽光を Ra: 100 としており、数値が高いほど色再現能力が高い照明であることを示しています。

 正確に言うと、色評価蛍光灯は、演色AAAランク(Ra値が90以上)の蛍光灯を指し、三菱電機オスラム(色評価用蛍光ランプ )、東芝ライテック(色評価用蛍光ランプ)、松下電工(パナソニック リアルクス)などから発売されています。購入する際、蛍光灯の色温度は DTPやデジタルカメラ撮影で一般的な 昼白色:5000K のものを選んでください。

色評価用蛍光灯:リアルクス(N-EDL)
▲ ナショナル製 色評価用蛍光灯 演色AAA

 高演色蛍光灯は一般的な蛍光灯と比べ値段も大して変わらない(20Wで一本500円程度)ため、積極的に使いたいところですが、いくつか問題があります。

  1. 大型家電量販店にすら売られていないマイナー商品のため入手しづらいこと。これは通販を利用すればOKです。(照明専門店や、カメラ専門店などのカラーマネージメント機器取扱店、東急ハンズ などでは店舗販売されています。)
  2. 色評価蛍光灯には直管タイプしかなく、家庭の天井照明(シーリングライト)によくつかわれる円形タイプがないこと。直管 20W x 4 や 直管 40W x 2 の照明器具を購入してもよいでしょうが、高価ですし設置するために取り付け工事が必要な場合がありおすすめできません。(また業務用なため見た目も悪いです。)そこで、天井照明は諦めて直管タイプのデスクスタンドに取り付けて使用するのがベターでしょう。
  3. 色評価用蛍光灯は明るさよりも演色性を優先した光源なため、ヒトが感じる光量が少なくなる。つまり一般的な蛍光灯よりも暗くなります

自作遮光フード ところで多くのデスクスタンドは、Uの字タイプや4列タイプなどのコンパクト型蛍光灯を採用しています。もし 20W直管タイプを採用したデスクスタンドを購入する場合、日立ライティングの「FS2015E-H」をおすすめします。アームが長いため、大型ディスプレイを置いても干渉しませんし、価格もたいへん安価(5200円程度)です。もちろんインバータ駆動。私も使ってます。(写真の上部に見えるのが日立の電気スタンド。高さ50cm、奥行き30cm もある LCD2690WUXi を楽々またげる。)

 また、ブランド物好きな人たちには、山田照明の「Zライトシリーズ」が人気なようです。性能・機能はほとんど同じですが倍以上の価格です。直管20W蛍光灯が使えるZライトに Z-208Z-801 がありますが、Amazon.co.jp のレビューでは作りが荒く、外見もチープなようで、Zライトのブランドだけが一人歩きしているように感じました。ちなみに私はこういう実力や品質を伴っていない“ブランド物”は大嫌いです。とはいえ、照明器具としての性能は問題ないようですので、好みで選べばよいと思います。

 また、既にコンパクト型デスクスタンドを持っている方は 三菱電機オスラム社が販売している 27W U字形 高演色コンパクト蛍光灯「FPL27ANX」(5500K Ra:95)を利用するのも良いでしょう。

  三菱オスラム 東芝ライテック 松下電工
名称・型番 色評価用蛍光ランプ
FL20S・N-EDL・NU
色評価用蛍光ランプ
FL20SN-EDL
リアルクス
FL20S・N-EDL
定価 819円 1,050円 1,050円
販売価格 480円 630円 600円
紫外線カット膜 × ×
全光束 920 lm 900 lm 890 lm

● そのほかの蛍光灯と型番による見分け方

 もし色評価用蛍光灯(演色AAA)の入手・運用が難しい場合、演色AA昼白色蛍光灯か、ブランド名が付いた三波長形昼白色蛍光灯 を使ってください。電気屋さんに売っている、パルックプレミア・メロウZ・ルピカ などは Ra: 85前後 を持っています。(安物の蛍光灯は Ra 60前後)

 蛍光灯には機能にによって特定の型番が付けられているので、購入前に確認してください。

  • 演色レベル → EDL : 演色AAA > SDL:演色AA > EX : 三波長形
  • 色温度 → N : 昼白色 5000K
  • 形状 → FL : 直管形 、 FCL:環形(円形・丸形)
  • 紫外線カットコーティング : NU(褪色防止タイフ)
  • つまり最良は「N-EDL」タイプの蛍光灯
  • EX-N(三波長形昼白色)は略して "EN" と表記される場合あり

● 一般蛍光灯 と 高演色蛍光灯 の比較

Ra66 Ra99
▲ 演色AAA蛍光灯は広い帯域を持ち、バランスも良い。
  ※ データは「三菱電機オスラム」の製品カタログより引用

 私が唯一持っているフィギュア「メディコムトイ RAH220 ASH with PIKACHU」を2種類の光源下で撮影したものを比較してみます。

ピカチュウ 安物蛍光灯 ピカチュウ 色評価用蛍光灯
▲ 普通の蛍光灯では気色悪い蛍光イエローになってしまった。色評価用蛍光灯では正確な発色で、被写体の質感や立体感が感じられる。

サトシ 一般用蛍光灯 サトシ 高演色蛍光灯
▲ 顔色はもちろんのこと、服が紫になっていた色転びも改善。また帽子の赤の発色が良くなっている。

とうもろこし 安物蛍光灯下 とうもろこし 色評価用蛍光灯下
▲ 食べ物はみずみずしく、おいしそうに見える。(ちなみに、明らかに茹ですぎである。)

野菜 + 一般蛍光灯 野菜 + 色評価用蛍光灯

Amazon 色転び
▲ Amazon.co.jp より。左は見事に緑被りしている。影の出方も見栄えが悪いので、色や撮影の知識がない者が撮影したと考えられる。

 蛍光灯下の緑被りはフィルム・CCDのカラーフィルタの特性によるものですが、それを除いても肉眼で色評価用蛍光灯の再現性が十分に分かります。特に自然の食べ物は、見える世界が全く違います。

[ 太陽光の力 ]

 ところで女性の方で、家の中で適度な化粧をしたつもりだったのに、外に出てビルのガラスなどに映った自分の顔を見ると、ものすごく厚化粧だったことに気づいて驚いた経験をしたことはないでしょうか。また男性を含め、家では気づかなかったのに、外で肌のシミや服の色あせ、バッグやブーツの傷などが目に付いた経験はないでしょうか。 逆に日が良く入る明るいブティックで、色がとても気に入り買った服等を家で着て鏡を見てみると「あれ・・・?」となった経験はないでしょうか。

 これらは全て、蛍光灯の色再現能力が低いために起こる現象です。また、日光下で微少な性質の違いに気づくのは、太陽光が極めて明るいせいもあります。ところで、自然光は時間や季節、天候によってその色が刻々と変化します。色のプロフェッショナルの間では「屋外で色を評価するときは 晴れた(快晴ではない)日の午前11時前後が良い」とされているそうです。数値的にみると、この条件がそろったときに太陽光の色温度が 5000〜5500K になるそうです。

[ 色評価用蛍光灯が買えるお店(アフィリエイトプログラム)]

三菱オスラム 色評価用蛍光灯 1本楽天市場 ルクス / 三菱オスラム
色評価用蛍光灯 FL20S・N-EDL・NU / 480円
単品の 20W 直管型 色評価用蛍光灯(高演色形演色AAA昼白色)。紫外線吸収膜が付いているので、貴重な資料の色あせを防ぐことができ、美術館などでも使われています。送料は500円(1万円以上は無料)

三菱オスラム 色評価用蛍光灯 25本入り楽天市場 ルクス / 三菱オスラム
色評価用蛍光灯 FL20S・N-EDL・NU 1箱(25本入) / 8,298円 ( @332円 )
上記製品の1カートン:25本パッケージ。企業や、家中の蛍光灯を高演色タイプに交換したい人に。1万円以上で送料が無料になるので、他に電球でも買っておくと良いかも知れません。

三菱オスラム 色評価用蛍光灯 40W 25本入り楽天市場ルクス / 三菱オスラム
色評価用蛍光灯 FL40S・N-EDL・NU 1個(25本入り) / 12,850円 ( @514円 )
40W 直管 25本入り。直管蛍光灯はワット数があがるほど高寿命になり、単価も安いので、オフィスやギャラリーなどでは40W形をおすすめします。

HITACHI デスクスタンド 20W直管型A.T.O.M : 日立 電気スタンド FS2015E-H / 5,133円 [最安値]
おすすめの 20W 直管型蛍光灯 デスクスタンド。

● 環境光変化を最小限にする

 さらに厳密な環境光マネージメントを行うならば、外光は遮光カーテンやブラインドで極力室内にいれないようにします。(日光は時間によって色が変化するため。)また、反射した光による影響がないよう、壁や天井に反射の少ないナチュラルダークグレーの布を貼り付けるのが好ましいです。しかし、これはあくまで「プロ」が「作業場」で行う対策のため、一般人の我々がここまで徹底する必要はありません。ただ このことを頭の片隅に置いておくと、部屋の模様替えや家具の購入をする時などに役立つかも知れません。

● 松下電工(パナソニック)の一般蛍光灯は避けましょう

 シーリング照明(天井照明)には色評価用蛍光灯は使えないので、昼白色(5000K)の三波長型蛍光灯を選ぶのが一般的です。しかし松下電工(パナソニック)製の三波長型蛍光灯(パルック蛍光灯、パルックプレミアL、ツインパルックなど)の光は緑成分が多く、肉眼でも緑被りして見えます。特にダイニングで使用すると食べ物がまずそうに見えてしまいます。

パルックと日立ハイルミックの比較
▲ 2ちゃんねる「蛍光灯の色温度、蛍光灯の傾向等について語るスレ」208氏撮影
  パルックシリーズが緑被りして、色がくすんでいるのが良く分かる。
  ※ ハイルミック:日立ライティング製 ルピカ:三菱電機オスラム製

  • 撮影場所:白い壁のクロス
  • カメラ:FUJIFILM Finepix F700
  • 色温度:太陽光に固定
  • モード:絞り優先(+0.7EV)

 そこでおすすめしたいのが、東芝ライテック社の「メロウZ」シリーズです。メロウZ PRIDE は、寿命が従来の約2倍、明るさが1.3倍になった高級ランプで、一般家庭用丸形蛍光灯(FCL)で唯一 Ra: 88 という高い平均演色指数を実現しています。

 また、一見中途半端な 5300K という色温度も利点の一つです。一般的にシーリング照明には半透明のカバーがついていますが、このカバーを光が通過するときに色温度が200〜500K 低下します。(要はほんの少し黄ばむ。)そのため、ランプ自体が +300K分の余裕を持っていることで、生活空間に届く色がちょうど 5000K前後になって、色評価用蛍光灯を取り付けたデスクスタンドともマッチするわけです。

理想見本 リアルクス 色評価用蛍光灯 メロウZ PRIDE パルックプレミアL
▲ ホワイトバランスを太陽光(晴天)に固定し、他の設定はすべてはオートで撮影。(KONICAM MINOLTA DiMAGE A200)

  1. CGによる理想見本
  2. パナソニックリアルクス FL管(直管蛍光灯) 20W 昼白色 FL20S・N-EDL / デスクスタンドに装着して使用
  3. 東芝 メロウZ PRIDE FCL管(丸形蛍光灯) 40W+32W FCL32-40ENC-PD-2P クリアナチュラルライト / 東芝製インバータシーリングライトに装着して使用
  4. パナソニック ツインパルックプレミア FHD管(二重環形蛍光灯) 70W ナチュラル色 FHD70ENWH / パナソニック製FHDシーリングライト「ツインPa」に装着して使用
    【訂正】写真では「パルックプレミアL」となっていますが、正しくは「ツインパルックプレミア」です。

 いくつかの蛍光灯の色再現性を検証してみましょう。まず最初の画像がカラーチャートの仕様書に書かれているLab値から算出した本物の色です。2番目の画像は色評価用蛍光灯で撮影したものです。オレンジイエロー(右端・上から2番目)や、ライトスキン(上端・左から2番目)の色がズレ気味ですが、かなり再現できていると言えます。(そもそもデジカメをキャリブレーションしてませんし・・・。)

 次に3番目の画像が私がおすすめする東芝の蛍光灯です。青系が紫に転んでいたり、黄色系がくすんでいたりと、色評価用蛍光灯と比べ色再現性は劣りますが、一般家庭用蛍光灯としてはトップクラスの性能です。さて最後の画像が問題のパルックです。ぱっと見ただけでかなり緑かぶりしているのが分かる思います。

 パルックは明るく、寿命も長いため、この緑被りさえ無ければ良いランプなんですけどねぇ・・・。

▲ 目次へ戻る