「大阪都構想」の賛否を問うた住民投票は、各党にとり憲法改正の国民投票の予行演習となった。両方とも一般選挙に比べ運動への規制が緩く、住民投票では賛成、反対両派が多くの資金や人を投入し激しい運動を繰り広げた。消耗戦との指摘もあり、規制強化を求める声も出ている。
「国民投票を行う際の参考にしたい」。都構想の住民投票から2日後の19日、谷垣禎一幹事長は自民党総務会でこう述べ、住民投票の運動を分析し、憲法改正国民投票に向けた戦略を検討する考えを示した。
都構想に賛成か反対かを二者択一で選ぶ住民投票は、一般の選挙より規制が緩い点で憲法改正国民投票に似ている。
運動費用は「青天井」で、テレビCMや新聞広告、インターネットの広報活動は制限がない。維新は広報費に約4億円を投入。大阪市の橋下徹市長の録音メッセージが流れる自動電話も100万件分かけた。最終盤には地方議員や国会議員秘書らを1千人規模で現地に入れたという。
これに対し、自民、公明、民主、共産は運動面で連携。共産と自民が宣伝カーを並べて街頭演説したほか、各党が持つ支持組織をフル回転させた。
住民投票は憲法改正国民投票と同じように、投開票日にも運動ができる。投開票日の5月17日、投票所の大阪市の城東区役所前には、賛成派と反対派が両方陣取り、投票に訪れた有権者に訴えた。維新、共産はそれぞれ、ボランティアや議員を市内365カ所の全投票所に派遣するなど、最後のぎりぎりまで各党が運動を展開した。
こうした状況について、憲法改正に積極的な橋下市長は「都構想の住民投票は、憲法改正の予行練習だ」と言及。同様の運動が展開されるとの認識を示した。護憲派で大阪選出の辻元清美・民主党政調会長代理も「維新はCMなど物量作戦をしたのに負け、草の根運動の反対派が勝った。国民投票へ地道なネットワークを作っておかねばならない」と語った。