銀行は敵か味方か? 親の資産を守るために、おぼえておきたい3つのこと | ライフハッカー[日本版]

150525_book_to_read1.jpg


タイトルを見ればピンとくるかもしれませんが、『家族のお金が増えるのは、どっち!?』(菅井敏之著、アスコム)は、『お金が貯まるのは、どっち!?』でベストセラー実績を打ち立てた著者による最新刊。

前著では元メガバンク支店長という経験と実績に基づき、お金を増やすための方法を説いたわけですが、続く今回に解説しているのは「家族」、特に「親子」と「夫婦」をキーワードとしたお金についての考え方。

「プロローグ」で著者はまず、いくつかの「役割」について触れています。

1.「親」としての役割
2.「子ども」としての役割
3.「夫」または「妻」としての役割
(「プロローグ」より)


「役割ごと」の、お金の「増やし方」、「守り方」があるということ。それさえ知っていれば、家族は豊かになっていき、家族が末広がりに繁栄していく「三角形」をつくることができるといいます。

きょうは「子ども」の立場から「親」と「お金」とのつきあい方に焦点を当てたPart2「お金を増やす『子ども』はどっち?」に焦点を当ててみたいと思います。


親の財産額を「聞く」べきか、「聞かない」べきか。親のためになるのは、どっち?


「子」の役割として著者はまず、「親の経済状態を把握しましょう」と読者に伝えたいのだそうです。「気にしたことすらない」あるいは「聞きにくい」という人もいるでしょうが、それでも子は、親の経済状態や資産の内容などをきちんと把握すべきだとか。最大の理由は、親の資産を「彼ら」から「守る」必要があるから。そうしないと、気づいたときには、親は資産をすべて失っていることにもなりかねないといいます。

そして見逃すべきでないのは、子がなにも知らない一方で、親の資産内容は金融機関、特に「銀行」に把握されているという事実。「子どもたちには内緒だけどね...」という親のことばを銀行員時代に何度も聞いてきたという著者は、このことについて、「子」が危機感を持つべきだと主張しています。

重要なポイントは、親の持つ金融資産を銀行が「狙って」いるということ。親の貯蓄がいくらあるのか、退職金がいつ、いくら入ったか。口座の状況を見れば一発でわかるので、それを銀行が見過ごすはずがないというわけです。なにしろ、銀行員は販売のプロなのですから。

だから、親の経済状態を知ろうとすることは、不謹慎なことでもなんでもないと著者は断言しています。親も高齢になれば、いつ、なにが起こるかわからないもの。倒れたりなくなったりしたときになって、まったく資産がないことに気づいたのでは遅いということです。

親の治療費や入院費、葬式代を自分たちが出さなければならないこともあるでしょう。しかし親だけではなく、自分たち夫婦や子どもも守らなければならない。そのためにも、親の経済状態を知り、守ることは、子どもの大切な役割。それが著者の考え方です。(94ページより)

答え

親のお金を金融機関が狙っている。親のためにも、自分たち夫婦や子どものためにも、親の財産をきちんと把握し、「守る」「準備する」意識が必要。(101ページより)

銀行は、親子の「敵」か「味方」か、どっち?


ただし、親の経済状態を知ることは、「敵」である金融機関から資産を守ることだけが目的ではないそうです。つまり、金融資産を「味方」にすることもできるということ。

銀行は連結で審査するもの。つまり子どもに大きな資産がなくても、親にあるならそれが子どもの信用にもつながる。具体的には、お金を借りるとき、前向きに相談に乗ってくれる可能性が高く、低い金利を適用してくれるかもしれないということです。

年齢を重ねていくと先のことが見えてきて、老後がとても心配になるもの。しかし、自分の資産を親の資産と連結で考えると、一気に世界が広がる。それは、銀行では当たり前の考え方なのだといいます。

たとえば「定年後に店を開きたい」、「主婦仲間とプチ起業をしたい」、「マンションを買いたい」「新しい事業を起こしたい」などというときには、銀行からの借入金が必要になります。そして将来の選択肢を増やすためには、銀行を味方にする必要があると著者は言います。

だとすれば、その際の切り札が、親と自分の資産を連結ベースで診てもらうこと。親の資産をアテにするかしないという単純な問題ではなく、子は現実としていずれ相続をすることになります。だから親の経済状態、資産内容を把握し、自分はなにを相続できるか、なにを相続しなければいけないかを早めに知っておけば、事前の対策もとれるというわけです。(102ページより)

答え

銀行は、親の資産を狙う「敵」にもなるし、お金を融資してくれる「味方」にもなる。親の資産を把握し、自分と「連結ベース」で銀行に診てもらえば、資産を増やすチャンスがくる!(109ページより)

親に、マメに連絡「する人」と「しない人」。信頼されるのは、どっち?


持っているにしても持っていないにしても、親の資産を把握しておくことは大切。でも、「財産を狙っているのか?」と誤解されたくはないし、それを知ることはなかなか難しいものです。そこで大切なのは、無理に聞き出そうとするのではなく、親の方から「話したくなる」ように持っていくこと。つまり、親との信頼関係を築くこと、これに尽きると著者はいいます。

親に信頼されなければ、お金の話にならなくても当然。そして兄弟や姉妹がいる場合、「どの子を一番信用すべきか」と考えるのが親。「子どもだから知る権利がある」というのは甘い考えで、親にとっては、知る権利の「ある」子どもと、「ない」子どもがいるということです。

親と信頼関係を築くためには、年に1度、実家に帰る程度ではダメだといいます。もっと頻繁に連絡をするようにしなければいけないということ。著者も、自分は東京に、親は山形に住んでいたため、毎週土曜日に必ず親に電話するようにしていたそうです。

そして親と話をするときには、親に関心を持つことが大切。コミュニケーションをとるようになると、親が大事にしていることが見えてくる。それがわかったら、自分自身も、親が大事にしていることを大事にするというわけです。ちなみにそれは、銀行員としての営業の基本でもあると著者。別の表現を用いるなら、「聞くこと」こそが、おもてなしだということ。信頼関係はそんな中から生まれ、親は次第に心を開いてくれるそうです。

銀行がお金を貸すのは、その人を信用しているから。そして信用できるのは、「マメに連絡をくれる人」。「今期の決算見通しは、こうなっています」、「資金繰り表は、このようになっています」といったことを定期的に報告してくれる人を応援したくなるのが、銀行員の心情だといいます。

それは、親子でも同じこと。親だからといって甘えることなく、「金融機関」だと思えばいい。融資(相続)してくれるかもしれないのだから、銀行と同じだという考え方。大胆な発想ですが、そういうありがたい存在だと思えば、親に対する態度も変わり、背筋も伸びてくるもの。それになにより、コミュニケーションをとることで親孝行もできるという考え方です。(110ページより)

答え

親に信頼されるのは、もちろん「マメに連絡する人。(中略)質問を重ねて親の「大事にしていること」がわかったら、自分もそれを大事にするようにすると「信頼関係」が生まれる。(117ページより)


❇︎


他項では「親」、「夫婦」についても具体的な解説がなされているため、とても実用的。将来を見据えておくためにも、ぜひ目を通しておきたい1冊だと思います。


(印南敦史)