10メガビット・イーサネットは、10Mbpsの転送速度のイーサネット。 厳密には、「イーサネット」は10BASE5 (IEEE 802.3) のことを指した。また、それに対して安価にネットワークを構成できる10BASE2 (IEEE 802.3a) が作られ、CheapernetやThin Ethernetと呼ばれた(そこから10BASE5をレトロニムとして"Thick Ethernet"と呼ぶこともある)。追って1BASE5のスター型トポロジーを取り込む形で10BASE-T (IEEE 802.3i) が作られ、さらに光ケーブルを使う10BASE-F (IEEE 802.3j) が使われるようになった。なお、IEEE 802.3は拡張規格を統合する改訂が行われており、IEEE 802.3a, IEEE 802.3iなどはすでにIEEE 802.3に含まれている。また、双方向ケーブルテレビのインフラを利用して信号を伝送する10BROAD36がある。
10BASE2編集
10BASE5は、ケーブルが太いため引き回しに難点があったり、分岐装置の取り付けが面倒という問題点があった。そのため、同軸ケーブルだが細いもの(直径5mm)を、線の両端にコネクタを取り付けて、簡単に接続可能にするようにしたのが10BASE2(テンベースツー)のイーサネットである。IEEE 802.3aとして標準化。
最長セグメント長は185mで、4台のリピーターを介して最大5セグメント:925mまでの延長ができる。
コネクタを使った接続によって取り扱いが容易になったが、端末を接続するための分岐を作るには一旦線の途中のコネクタを切り離してT型の分岐コネクタを取り付けなければならなかったため保守性に欠けた。ネットワーク構成を変える度にネットワークが寸断されるので作業を行なうタイミングに制約があった。ケーブル末端には反射を抑えるターミネーターと呼ばれる終端抵抗を取り付ける必要があった。
10BASE2と10BASE5は線の損失が違うだけで、電気的特性(インピーダンス50Ω、電圧±1、等)は同じであるため、実際には10BASE2に10BASE5のケーブルを足しても通信自体は可能であった。ただ継ぎ足す部分でのインピーダンスの違いによって生じる電気的な反射のために通信が不安定になることがあった。
10BASE5編集
10BASE5(テンベースファイブ)は直径0.375インチ=約9.5mmでインピーダンスが50Ωの太くて硬い同軸ケーブルを利用したイーサネットである。IEEE 802.3として標準化。この同軸ケーブルに、タップという分岐装置を取り付ける事により、各装置との間で通信を行う。タップは、同軸ケーブルの心線に針を刺すような形で接続を行う。この線を噛み込む様子からヴァンパイヤと俗称されていた。
多くの場合、タップとコンピュータとの間にはAUI (Attachment Unit Interface) と呼ばれる信号変換装置が設置された。
末尾の数字の示す通り最長セグメント長が500mと比較的長く取れることと、線の耐久性が高いことから、10BASE2や10BASE-T普及後もLANの基幹線として使用されていた。
初期には多くの同軸ケーブルが黄色だったため、イエローケーブルと言われていた。実際には赤や青、緑など様々な色のケーブルも販売されていた。
10BASE-T編集
10BASE-T(テンベースティー)の物理層は、カテゴリ3以上のアンシールデット・ツイステッド・ペア・ケーブルを用いて、各末端機器とハブとを配線するものである。
各機器はハブとの間だけで結線が済むため、各機器の接続を個別に変更する事が可能である。ハブは、レイヤー1で分岐するダム・ハブまたはカスケードハブ、レイヤー2で分岐するスイッチングハブが存在する。カスケードハブを用いた結線では半二重通信を、スイッチングハブを用いた結線では全二重通信をサポートする。10BASE5と比較して細いツイストペアケーブルを使用するため取り回しし易く、拡張性が高かったため急速に普及した。またそれに従って機器価格も低下し、さらに普及の速度が高くなった。IEEE 802.3iとして標準化された。
10BASE-Tで使われるケーブルはツイストペアケーブル(カテゴリ3以上)の2組の両端にRJ-45コネクタを付けた物である。RJ-45コネクタには8つのピンがあるが、10BASE-Tではこの内2対4線しか使用していない。1と2を送信データとして、3と6を受信データとして用いる。ストレートケーブルでは同じ端子を接続し、クロスケーブルでは1と3、2と6を接続する。
信号は2本のピンの電位差が-1Vから+1Vに変わる事で0を表し、+1Vから-1Vになることで1を表す。このような方式を「マンチェスタコード」と呼ぶ。
TIA/EIA-568-B規格では、送信データはオレンジの組を、受信データは緑の組を使用する。ストレートケーブルの中にはISDN等への転用が可能なように、この他に4 - 5番を青の組で、7 - 8番を茶色の組で繋いだ製品や、8色の単色線を2本ずつ束ねたものも存在する。尚、全ての線を使用しているか否かに関わらず、カテゴリ5以上のケーブルに正しくコネクタが結線されていれば、100BASE-TXでも使用可能である。
10BASE-F編集
メタルケーブルではなく、マルチモード光ケーブルと850nmのレーザー光を使用する規格である。10BASE-FP・10BASE-FB・10BASE-FLの3種類が存在する。IEEE 802.3jで標準化された。
10BASE-FP編集
パッシブ型光カップラを中心にスター型構成をとる。カップラー・ノード間距離は500m、ノード間は1000mとなる。
10BASE-FB編集
バックボーン向けに、アクティブ型光カップラ間で接続される。直接ノードに接続されることはない。カップラー間は最長2000m。
10BASE-FL編集
FOMAU (Fiber Optic MAU) とリピータを用い、端末間の接続を可能としている。FOIRLを置換するための規格であり、互換性がある。ノード間距離は最長2000m。
10BROAD36編集
双方向CATVを伝送路として使用するイーサネットである。他のイーサネットとは異なりRF信号に変調している。IEEE 802.3bとして標準化。
最長セグメント長は3600mとなっている。ケーブルはテレビ信号を伝送するのに用いられる75Ω同軸ケーブルを使用する。太さはCATVのシステム設計により決まる。
物理的にはツリー状の配線となり配線の自由度が高いため各機器の接続・切断が容易である。電気信号としては機器間で直接受け渡しするのではなく、CATVの上流端へ全て送られそこに設置した機器により中継される。周波数を違えることにより複数のセグメントをケーブル上に作ることができる。ベースバンド信号での制御は10BASE5と同じバス状の動作である。
構成するシステム・装置の複雑さから普及しなかった。