「伝承大切」「地元の恥」=受け止め割れる住民―花岡事件から70年・秋田 | ニコニコニュース

 秋田県大館市の花岡鉱山で終戦間近の1945年6月30日、強制連行された中国人が蜂起した花岡事件から間もなく70年。地元では記憶継承の努力が続く一方で、「地元の恥だ」と積極的に取り上げたくないと考える住民も多く、事件への向き合い方は一様ではない。

 花岡では毎年、大館市の主催で慰霊式が行われ、中国人生存者や遺族、市民ら約150人が参加する。50年に山本常松旧花岡町長が個人として慰霊式を行ったのが始まりだ。

 NPO花岡平和記念会は寄付を募って2010年に建設した「花岡平和記念館」を拠点に、事件についての展示・出版やシンポジウムなどを行っている。川田繁幸理事長(62)は「事実を記憶し継承していくきっかけをつくりたい。大館市民として、事件が起きたことを忘れ去ることはできない」と力を込める。

 一方、事件に触れたがらない人も多い。記念館の設計者で花岡出身の鳥潟宏一さん(61)は、母親に「なぜ館を建てたのか」ととがめられたという。「花岡の人が中国人をいじめたと思われるのが嫌で、建設に反対だったようだ。積極的に触れたくないという思いが地元の人間にはある」と話す。

 花岡出身の40代男性も「父親が、中国人への拷問が行われたとされる施設でうめき声や叫び声を聞いたと話していたことはあるが、進んで話題にはしない」と話す。

 作家の野添憲治さん(80)は60年代から聞き取りをしてきた。悲惨な事件を実際に目にした人々が多くを語らないことに理解を示しつつ、「戦争の負の遺産をきちんと残して、真の遺産にしてほしい」と願う。「事件を知らない若い世代で、きちんと向き合おうとしている人もおり、今後に期待している」と語った。