外国人技能実習生として来日した中国人女性(29)が、「実習先の農家でセクハラを受け、適切な賃金の支払いもなかった」として、茨城県の実習先農家の親子や、実習生の受け入れ監理団体(茨城県守谷市)に対して、慰謝料300万円と未払い賃金183万円の支払いなどを求める訴訟を水戸地裁に起こした。女性は6月26日、東京・霞が関の厚生労働省で弁護士らと記者会見を開いた。
実習生の女性は「セクハラは辛くて、耐えられませんでした。監理団体に訴えたけれども、対応してくれませんでした。農家と監理団体に責任を取ってもらいたい。日本の司法は公正だと信じています」と話した。
会見には、この実習生女性から相談を受け、女性を支援している監理団体職員の男性(42)も同席。男性は「良心が耐えられないと女性を支援したら、監理団体に脅され、解雇された」として、女性と一緒に、解雇無効や賃金支払いを求めて監理団体を訴えている。
●「セクハラが次第にエスカレート」訴状などによると、女性は2013年9月に来日。同年10月に茨城県の大葉生産農家と雇用契約を結んで働き始めたが、この農家経営者の父から、身体を触られるなどのセクハラを受けるようになった。
女性は来日する際、借金をして出国費用や保証金など約120万円を本国の送り出し機関に支払っており、借金の保証人となった親に迷惑がかけられないと思って、当初はしぶしぶセクハラを我慢していたという。
セクハラが次第にエスカレートしたため、女性は2014年8月に実習生受け入れ監理団体に相談。ところが、セクハラを隠蔽しようとした監理団体側から、黙っておくよう恫喝を受けたという。
女性は2015年1月18日以降、仕事を与えられずに放置されたため、現在は労働組合の支援を受けて、労組が用意してくれた住まい(シェルター)で暮らしているという。
●朝8時〜深夜までの「作業」が連日訴状などによると、女性が2013年に結んだ雇用契約では、女性が提示された時給は713円で、平日の労働時間は朝8時から夕方5時までという条件だった。
しかし、実際には朝8時〜夕方16時に大葉を摘み取る作業があり、夕食と入浴後の17時からは、大葉を10枚ごとにゴムで束ねる作業に従事させられ、月によっては連日午前2時〜3時まで続いたという。
この「大葉巻き」の作業について、雇用先の農家は「これは(労働ではなく)内職だ」として、1束当たり2円しか支払わなかったという。大葉巻きは、慣れた人でも1時間に150束程度しかできず、時給に換算すると300円程度だったという。
女性の代理人を務める指宿昭一弁護士は「大葉巻きの作業は労働で、残業代の支払いが必要だ」と指摘した。
●外国人技能実習制度は「人権侵害の温床」技能実習制度は、途上国の労働者を受け入れて人材育成する「国際貢献」を目的とする制度だが、昨今では「低賃金労働者を雇用する手段」としての悪用が指摘され、見直しの議論も起きている。
指宿弁護士は「実習生は、劣悪な実習先に当たってしまったとき、他で働くという選択肢がありません。日本に来るために多額の投資や借金をしているため、途中で逃げ出しにくいこともあり、人権侵害の温床となっています」と制度の問題点を指摘していた。
(弁護士ドットコムニュース)