任天堂から2015年6月25日に発売されたニンテンドー3DS用シミュレーションRPG「ファイアーエムブレムif」。本作は,「白夜王国」「暗夜王国」という2つのルートをそれぞれ収録したパッケージを2本同時に発売するという,ファイアーエムブレムシリーズとしては初めての試みで注目を集めている。
また,これまで長年にわたって受け継がれてきたゲームシステムにもさまざまな変更が行われ,新たな拠点機能を始めとする多数の新要素が追加されるなど,内容面でも大きな変化を遂げている。本稿では,そんな本作のプレイレポートをお届けしよう。
■どちらに味方するのか悩ましい,2つの祖国のあいだで揺れ動く物語
本作でプレイヤーは,白夜王国の王家で生まれ,暗夜王国で育てられた主人公となって,争いの続く2つの王国の狭間で自らの運命を切り拓いていくことになる。
白夜王国と暗夜王国,どちらの勢力でプレイするかによって異なるストーリーが展開されるのが本作の大きな特徴だが,序盤の第6章までは同一の内容となっており,2種類の製品が販売されるパッケージ版では,もう一方のルートを追加コンテンツとして2000円(税込)で購入できる。
ストーリーの序盤では,暗夜王国の王子(もしくは王女)として育った主人公が,戦いの混乱の中で偶然にも白夜王国への帰還を果たし,そこで自らの出生を知ることで,2つの王国のあいだで揺れ動く姿が描かれる。このパートは両王国の主要メンバーの顔見せ的な意味合いも含まれており,どちらの側のキャラクターも非常に魅力的に描かれているのがニクイ。
心情的には,血のつながりは無いものの,これまで共に過ごし,本当の家族のように自分のことを思ってくれる暗夜王国の兄弟に味方したいと思うものの,白夜王国にも主人公の生還を喜んで迎えてくれた兄弟がおり,おいそれと見捨てることはできない。何より,暗夜王国のガロン王の卑劣な手口を目の当たりにした身としては,それを黙って見過ごすのも難しい……というわけで,筆者も第6章でのルート選択で,たっぷり30分は悩んでしまった。ぐぬぬ。
また,ゲーム的に見ると,白夜王国ルートではストーリー戦闘とは別に任意のタイミングで挑戦できる「遭遇戦」でキャラクターの育成ができるのに対し,暗夜王国ルートでは遭遇戦が発生せず,戦闘(=育成)の機会が限られるという点が異なっている。さらに,暗夜王国ルートでは敵がより積極的に進軍してくる傾向があり,全体的なゲーム難度は白夜王国ルートよりも高めだ。
とはいえ,本作では3段階の難易度設定に加え,敵に倒されたユニットが次のターンにその場で復活する超初心者向けの「フェニックスモード」が新たに用意されているので,いきなり暗夜王国ルートからプレイを始めても大丈夫。
■武器の相性や使用回数の見直しでゲームシステムも大きく変化
本作ではストーリー面のみならず,ゲームシステム面でもさまざまな変更が行われている。基本的なゲームシステムは従来どおりのターン制ストラテジーだが,本作では武器と魔法の相性が一新され,「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」以降の作品でおなじみの,武器と魔法それぞれに設定された三すくみ構造が1つにまとめられたところがまず注目すべき点だ。
新たな武器相性は,「剣/魔法」は「斧/弓」に強く,「斧/弓」は「槍/暗器」に強く,「槍/暗器」は「剣/魔法」に強いというもの。ただし,飛行系ユニットは弓に弱いといった「特効」は本作でも健在。武器相性の変更は,長くシリーズをプレイしてきた人ほど戸惑いが大きい部分なので,きっちり頭に入れておこう……と言いつつ,実は筆者もいまだに実感できていない。弓が槍に強いって,どういうこと? みたいな。
また本作では,武器や魔道書の使用回数が撤廃されたのも大きな変化だ。その代わり,高性能の武器になるほど,命中率が低下したり,使用後にユニットの能力が下がったりといったデメリットが付くようになった。一方で,味方を回復させるといったサポート効果が特徴の「杖」カテゴリの武器や,「傷薬」などの消費アイテムには,これまでどおり使用回数が設定されている。
高威力だが使用回数の限られた貴重な武器をどこで使うかがポイントだった従来作に対し,本作では各武器のメリットとデメリットを考慮しながら,状況に応じて装備を変更していくことが求められるようになり,すべてのアイテムに使用回数がある,これまでのシンプルな仕組みに慣れ親しんでいた筆者としては,武器選びにこれまた頭を悩まされてしまう。
また,前作「ファイアーエムブレム 覚醒」で導入されたシステムである「デュアル」「ダブル」は,本作ではそれぞれ「攻陣」「防陣」に名称が変わり,効果も若干変更されている。攻陣は,攻撃を仕掛けた際に隣接したユニットが後衛として戦闘に参加し,前衛ユニットの能力をアップさせると共に敵に追撃を行うというもの。
一方の防陣は,2人のキャラクターを1つのユニットとして行動させるというもので,こちらも前衛ユニットの能力が強化されると同時に,敵からの追撃を後衛ユニットが確実に防御してくれる。さらに,ガードゲージが最大になると「デュアルガード」が発生し,敵の攻撃を一度だけ防ぐことができる。
効果が発動するかどうかが確率によって左右されるデュアル/ダブルとは異なり,攻陣/防陣では組んでいる陣に応じて攻撃もしくは防御が確実に実行される点が便利だが,本作では敵もこれらを活用して攻撃を仕掛けてくるようになったので注意しよう。
戦局を左右する要素としてはもう1つ,マップ上に新たに「竜脈」と呼ばれるポイントが登場するようになったことが挙げられる。竜脈は主人公を始めとする王族のユニットのみが操作可能で,起動することで山を平らにしたり,新しい橋を架けたり,特定の範囲内のユニットにダメージを与えたりできる。
■新たな拠点機能「マイキャッスル」で自由な街づくりを楽しめる
さて,本作では戦闘システムや戦場だけでなく,拠点機能も大きく強化されている。それが,プレイヤーが自分だけの城下町を作れる「マイキャッスル」だ。ここでは,ゲームを進めて入手した「竜脈値」を消費して,武器屋や道具屋などの施設を設置できるほか,自由に歩き回って仲間達と交流したりできる。
もう1つの注目機能が,星竜・リリスを育てる「リリスの神殿」だ。リリスに食事をあげると必ずレベルが1つアップし,与えたアイテムによって異なるステータスが上昇する。牛乳をあげると瓶ごと丸かじりするのはちょっとどうかと思うが,とても可愛い。こうして育成したリリスは,ほかのプレイヤーとのすれちがい通信で発生する「キャッスル戦」に自軍ユニットとして参戦し,活躍してくれる。
キャッスル戦に勝利すると,相手のユニットを1人,自軍にスカウトできるので,腕試しのつもりで積極的に挑戦してみるといいだろう。もちろん,キャッスル戦を行わず,すれちがい通信で訪問したほかのプレイヤーのマイキャッスルを散歩することもできる。
このほかにも,「マルス」「アイク」「ルフレ」「ルキナ」のamiiboを使って,この4人をマイキャッスルに招待することもできる。招待したキャラクターに話しかけたりはもちろん,戦いに勝利することで仲間に加えることができるので,対応するamiiboを持っている人は試してみよう。
ゲームシステムから拠点機能まで,さまざまな変更や新要素が加わり,従来作とは大きく様変わりした本作だが,メインとなる戦略パートの手触り感はまさにファイアーエムブレムそのもの。気を抜くと仲間が倒されてしまう,程よい緊張感のあるバトルを,これまでどおりに楽しめる。
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