天然毒キャラで再注目・市原悦子 家政婦じゃない魅力が若者にも浸透 | ニコニコニュース

本当の姿も石崎秋子に非常に近い? 再び注目を集める市原悦子(写真は2012年撮影) (C)ORICON NewS inc.
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 『家政婦は見た!』シリーズ(テレビ朝日系)の家政婦役や『まんが日本昔ばなし』(TBS系)の声優でおなじみ、超ベテラン女優・市原悦子(79)が注目を浴びている。ソフトバンクモバイルのCMでは、犬のお父さんの白戸家と共演し、「巨大な桃が川を流れてくるが拾わない」桃太郎のおばあさん役を演じる姿が印象的だ。また最近では、樹木希林と共演した映画『あん』の公開もあって、バラエティ番組にも出演し、歯に衣着せぬ発言で注目を集めている。

市原悦子、ゆっくり話す理由明かす

■大らかなイメージの役柄とのギャップに驚きの声

 今年5月22日放送の朝の情報番組『あさイチ』(NHK総合)に、市原が出演したときに“事件”は起きた。「『まんが日本昔ばなし』ではどの話が好き?」という問いに、「やまんば」と答えた市原は、その理由を語る際、放送禁止用語を連発。その発言後、有働由美子アナが謝罪するという場面があったのだが、市原自身は憮然としていたという。これに対し、ネット上では批判する声はあまりなく、「前後の文脈を考えれば違和感はなかった」との意見が圧倒的だった。ちなみに、この後、市原は「彼ら(やまんば)は反骨精神と憎しみがあって、他人への攻撃がすごい。そのかわり心を通じた人とは、こよなく手をつないでいく。その極端さがいい」と続けたのだが、この発言からも、市原の意外な“骨のある”一面を感じ取ることができた。

 市原悦子は、千葉県No.1の公立進学校・千葉県立千葉高校を卒業する才媛ながら、1957年、卒業と同時に俳優座に入団、1964年には早くもゴールデン・アロー賞新人賞を受賞する。1990年には、映画『黒い雨』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞するなど、実績もさることながら、数多くのドラマや映画に出演する大女優であることは、誰しもが認めるところだ。一方で、『必殺』シリーズのカルト版ともいえる『翔べ!必殺うらごろし』(朝日放送)で、殺し屋を演じるという意外な過去も持つ。

 しかし、やはり市原といえば、『まんが日本昔ばなし』の優しそうな声色と落ち着いた語り口であり、『家政婦は見た!』や『おばさんデカ 桜乙女の事件帖』(フジテレビ系)などの2時間ドラマでの庶民的で大らかなおばさんながら、どこか鋭く、品もありそうな役柄というイメージが強い。だからこそ、先の“放送禁止用語事件”も、そうしたイメージとのギャップから話題にもなったのだろう。ゆっくりした語り口に関して市原は、「私たちの育った時代は戦後の食糧難のピーク。両親もしつけや行儀を教えてくれなかった。上座も敬語もわからず成長したので言葉を発するのに臆病になっている。ずいぶん失礼もして、しらけさせてきたので、ゆっくりになっちゃったの」と説明するが、どこかしたたかさを感じるのは気のせいだろうか。果たして、市原の真の姿はどこにあるのだろう?

■実はダークな側面もあった“家政婦”

 そもそも『家政婦は見た!』の石崎秋子役にしても、冷静に見るとけっこう強烈なキャラクターだ。主人に雇われている身でありながら、雇い主のプライベートを勝手に覗き見したあげく、雇い主一家をとことん糾弾する。ひとりでスッキリした後、「お暇いただきます」と勝手に退職するのである。今なら、“コンプライアンス違反”でも問題になりそうだし、“Twitterで有名人の来店情報をつぶやいた”なんていう最近の事件など、かわいく思えるほどだ。やっていることは強烈だが、どことなく品の良い語り口で覆い隠され、結果としては視聴者を楽しませてくれる。もしかしすると、市原の本当の姿は、石崎秋子に非常に近いのかもしれない。

 実際、市原はライフワークのように、『戦争童話シリーズ』という反戦的な朗読CD・DVDを出し続けている。また、東日本大震災後は、反原発運動の呼びかけ人になるなど、社会的な行動も多く、おっとりとした優しそうな一般のイメージとは別に、どこか気概のある、反骨精神に裏打ちされた強靭さをも持ち合わせているようだ。そして今、各バラエティに出演する際も、落ち着いた上品なトークの合間に、ちょいちょい毒のある発言を織り交ぜてくる。それでいて本人は、まったく表情も変えず冷静なまま。温和な外面と毒を秘めた内面を、絶妙に発信し始めたかに見える市原悦子。若い層からも、“天然で可愛い”との声も多く聞こえてくる現在、御年79歳の彼女のさらなる活動に注目していきたいものである。


(文/五目舎)