2015年7月1日午前8時59分59秒と午前9時00分00秒の間に、「うるう秒」が1秒挿入されます(日本時間)。下の写真は、東京・国分寺市にある情報通信研究機構(NICT)に掲示されている時計です。普通、デジタル表示の時計では「59秒」の次は「00秒」のはず。「60秒」の表示は珍しい! 実はこれ、2012年午前9時に、うるう秒が挿入されたときの写真なのです。
●うるう秒って何?
「うるう年ならおなじみだけど、うるう秒……?」と思いますよね。「うるう(閏)」とは、1年の日数や月数が暦の上で平年より多いことを指す言葉で、現代の暦では4年に1回やってくる、2月の29日(普段より1日多い)が「うるう日」。うるう日がある年が「うるう年」になります。
昔から知られていた「うるう日/月/年」に対して、うるう秒という概念が現れたのは原子時計が登場して以降の話。それまで時(1日/1時間/1分/1秒)は地球の自転をベースに決められていましたが、1967年に「1秒=セシウム原子が91億9263万1770回振動する時間」と1秒が再定義されたことに始まります。
実は地球の回転速度にはムラがあり、常に同じ速度で回転しているわけではありません。地球の回転が速い状態が続いたり、遅い状態が続いたりした場合に、原子時計と比較した差を調整するために、うるう秒による調整が行われます。つまり地球の回転速度が遅い場合はうるう秒を入れて、回転速度が速い場合は、うるう秒を抜いて調整する……のですが、実際には1972年〜2014年までに行われた25回のうるう秒調整はいずれも「挿入」でした。
今回(2015年7月1日)のうるう秒は、平日としては18年ぶりとなります。
手持ちの時計で、うるう秒はどう表示されるのか
さてそんなうるう秒、実際に手持ちの時計を見ているとどんな動作をするのでしょうか。セイコーウオッチ、シチズン時計、カシオ計算機の国内時計メーカー3社に聞いてみました。
まず共通しているのは「電池式のクオーツや機械式時計には、うるう秒対応機能はない」ということ。通常の誤差と合わせて、気になったときに手調整するのが良さそうです。
電波時計は、標準電波を受信することで正しい時刻を知ることができる時計です。この場合、7月1日の午前8時59分59秒以降、次に標準電波を取得するまでは1秒進んだ状態で時間が表示されることになります。強制的に手動で電波受信を行えばその場で正しい時間になりますが、電波時計は1日1回、毎日深夜2時頃に電波を受信するので、7月2日の深夜に電波を受信すれば、それ以降は正しい時刻を表示します。
メーカーによってちょっと違うのが、最近増えているGPSウオッチ。セイコー「アストロン」、シチズン「エコ・ドライブ サテライトウェーブ」、カシオ「G-SHOCK G1000」「OCEANUS G1000」といった、GPS衛星からその国々の正しい時刻を取得する腕時計です※。
※「G-SHOCK G1000」「OCEANUS G1000」は、GPS電波と標準電波を両方受信できる
まずシチズンの「エコ・ドライブ サテライトウェーブ」は、GPSでの時刻受信を手動で行うようになっているので、うるう秒を反映させるためには、7月1日9時以降に手動でGPS時刻受信を行う必要があります。手順はこちらに載っています。
セイコー「アストロン」とカシオ「G-SHOCK G1000」「OCEANUS G1000」は、6月中にうるう秒の情報を含めたGPS衛星の電波を受信しておく(通常のGPS受信よりも長い時間がかかる)ことによって、7月1日の朝9時以降も正しい時刻を表示できるのだそう。「6月中に受信しておくことをオススメしますが、6月中に間に合わなくても、7月以降に手動でGPSを受信しても正しい時刻になります」(セイコー広報部)、「6月中にうるう秒情報を受信しておけば、7月1日の9時に針が止まり、9時00分00秒が2秒間表示されます。6月中に受信しなかった場合も、うるう秒実施後にGPSを受信するか、7月2日午前に標準電波を受信した時点から正しい時刻を表示します」(カシオ広報部)とのことでした。
3社それぞれにうるう秒には対応していますが、午前8時59分59秒や午前9時00分00秒を2秒表示するか、秒針が止まるといった動きになるため、午前8時59分60秒という表示は見られないようです。
●どうしても8時59分60秒の表示が見たい人は……
「どうしても午前8時59分60秒の表示が見てみたい!」という人は、7月東京・国分寺のNICT(東京都小金井市貫井北町4-2-1)に行くことをオススメします。
NICTの研究本館に設置されている時計は、「日本標準時表示装置」。ここであれば、挿入されたうるう秒(8時59分60秒)を目で見ることができますよ。