“若年性アルツハイマー”に侵された女性をリアルに描き、各所で話題を呼んだ感動作『アリスのままで』(公開中)。本作のように、これまでにも一般的にはあまり知られていない病気や、十分な理解を得られ難い病気の実態を捉えた作品は多数存在する。そこで今回は、それぞれの視点で難病を扱った映画を紹介したい。
【写真を見る】主人公のアリスとその家族たちが、闘病を通じさらに絆を深めていく姿に胸を打たれる!(『アリスのままで』)
まず1本目は、注目の若手女優シャイリーン・ウッドリーが主演した『きっと、星のせいじゃない。』(14)。本作では“末期ガン”と“骨肉腫(こつにくしゅ)”を患ったカップルが登場する。17歳にして末期ガン宣告されている少女ヘイゼルと、骨肉腫により片足を切断した青年ガスの2人だ。酸素ボンベが手放せず、行動が制限された闘病生活の中でも、前向きに生きる彼らの姿がストレートに心に響いてくる作品だ。
『セッションズ』(11)は、幼少期に患った“ポリオ”が原因で首から下が麻痺し、呼吸障害を発症している38歳の男性が主人公。頭部以外を動かせず、ベッドに横たわったままの半生を過ごしてきた男性と、魅力的な女性ヘルパーとの“セックスセラピー”を描いている。ポジティブでユーモラスな語り口ながら、“病気と性”のあり方について考えさせられる作品だ。
『マッドマックス』シリーズのジョージ・ミラー監督が手掛けた『ロレンツォのオイル 命の詩』(92)は“副腎白質ジストロフィー”を題材にした1作。奇行や乱暴を繰り返してしまう不治の病に侵された息子を、懸命に救おうとする両親の姿を感動的に映し出している。『レナードの朝』(90)の主人公はロバート・デ・ニーロ扮する重度の“パーキンソン病”患者。30年の昏睡状態から目覚めた男の奇跡を綴った感涙必至の人間ドラマだ。
そのほかにも、物理学者ホーキング博士の半生を描いた『博士と彼女のセオリー』(14)では“ALS(筋萎縮性側索硬化症)”が、息子のために若い夫婦が苦難に立ち向かう『わたしたちの宣戦布告』(11)では“ラブドイド腫瘍”が、それぞれ題材にされた。
ちなみに先に触れた『アリスのままで』には、ジュリアン・ムーア演じる50歳の大学教授アリスがふと漏らす「ガンならよかった。ガンだったら恥ずかしくないのに…」というセリフがある。アルツハイマー病は一般的にも広く認知されている病気ではあるが、当事者の心情…となると話は別だ。アリスが漏らしたこのひと言には、そうした当事者の葛藤が凝縮されているといっていいだろう。
前述したどの作品も、見る者に病気への理解を与え、人間の尊厳をまっすぐに伝えてくれる名作ばかり。『アリスのままで』と合わせて、これらの映画もぜひ鑑賞してみて欲しい。【トライワークス】