【アテネ時事】ギリシャのチプラス政権は5日、欧州連合(EU)など債権団から課された緊縮財政の是非を問う国民投票を実施する。緊縮反対派が勝てば政権とEU側との関係悪化が決定的となり、ユーロ圏からの離脱懸念がさらに強まる。賛否は拮抗(きっこう)し、予断を許さない情勢だ。
債権団との金融交渉が暗礁に乗り上げたギリシャは、6月末が期限だった国際通貨基金(IMF)に対する債務15億ユーロ(約2000億円)を支払えず、事実上のデフォルト(債務不履行)に陥った。国内では資金枯渇を防ぐため6日まで銀行の営業が停止され、国民の不満が高まっている。
緊縮財政を緩和する方向でEU側と協議してきたチプラス首相は、国民投票で「反緊縮」の世論が示されれば、債権団の譲歩を引き出せると説明。1日のテレビ演説でも「国民投票で反対票を投じることが、より良い合意に必要なステップとなる」と訴えた。
地元紙が1日報じた調査機関プロラタによる調査結果では、銀行が営業を停止した6月29日以降に緊縮策に「反対する」と答えた人は46%と賛成の37%を上回った。一方、実施機関によっては、賛成47%、反対33%という逆の結果もある。
1月まで政権にあった最大野党新民主主義党(ND)の元顧問、アテネ大学のイオアニス・カラコスタス教授(法律学)は、将来に希望を持てない貧困層ほど緊縮策に反対する傾向があると指摘。ユーロ離脱は国内経済に「致命傷を与える」と警告し、「貧困層は失うものがないため過激な主張に走りやすい。チプラス政権はこうした人々に支持を求める危険な誤りを犯した」と指摘している。