中国メディアの環球網は6月29日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)について「問題は中国に経験が不足していること」とする記事を掲載した。だからこそ「日本に参加してほしいと表明しつづけている」と論じた。
記事はまず、米国に対する不信感を露骨に示した。世界銀行や国際通貨基金(IMF)は米国の利益と一体化していると主張。
1997年のアジア通貨危機の際にIMFはマレーシア、インドネシア、韓国などに緊急支援を行ったが、極めて厳しい緊縮財政を強いたことで、支援を受けた国の経済が「さらに悪化したことは疑いない」と決めつけた。
日本や米国がAIIB不参加の理由として、監督メカニズムや透明性の問題を挙げていることについて、「国際金融機関の監督メカニズムと透明度は規則や機構を1つ制定することでは保障できない」として、AIIBでは理事会が重要な役割りを担うと主張した。
さらに、「現在に至るまで、世界のすべての国際金融機構は先進国が発足させたものだ」と指摘。AIIBは初めて新興国が提唱した国際金融機構であり、中国は援助を受けていた国であるからこそ、援助を受ける国の「本当の求め」を察知することができると主張。
その上で、「問題は、中国はAIIBのような国際金融機構を運営する経験が不足しており、だからこそ、中国は日本の協力を必要としている。中国は日本に対して何度も、AIIB参加を希望している」と論じた。
日本の不参加については、経済的な理由ではなく、安倍政権がアジア諸国との関係構築で、中国に主導権を取られたくないと考えているからと主張。日中両国の主導権争いは「アジアの発展できない国に手厚い“漁夫の利”をもたらす」との見方を示した。
記事は最後の部分で「遺憾なのは第二次世界大戦が集結して70年もたつのに、中日両国は独仏のように、共に歩んで共に地域の経済的反映を構築できないことだ」と主張した。
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◆解説◆
6月29日に北京市内で行われたAIIBの設立協定署名式では、創立メンバー57カ国のうちフィリピン、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイの7カ国が署名を見送る「幸先の悪い異例のスタート」となった。中国当局は相当に危機感を高めている可能性がある。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)