4月から放送された“春アニメ”が軒並み最終回を迎えた。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴する“オタレント”の小新井涼さんが、今回も“春アニメ”を全話見て特徴を分析した。
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年度始めということで新作の放送本数も多かった今期ですが、内容ももちろんですが、今回特に印象的だったのは各作品の“オープニング(OP)”だったように思います。
アニメには欠かせない要素なので、今回に限られた話ではないようにも思えますが、“OP飛ばしました”などのコメントを目にすることも少なくない今だからこそ、改めてオープニングの魅力を思い出させてくれるような、さまざまな仕掛けが満載のクールだったのです。
それでは今期の春アニメを振り返りつつみてみましょう。キャラやカットの追加などのさりげない“マイナーチェンジ”というのは割とおなじみの仕掛けではありますが、今期はその頻度や変化の仕方がとても多岐にわたっていたように感じました。
「食戟のソーマ」では“毎回変わる”と銘打って、ホワイトカレーやイカ墨カレーなどのバラエティー豊かなカレーのカットが毎週登場し、本編前からすでにおなかがすいてしまうという二重の意味で憎い演出がされていたり、「俺物語!!」では、ケーキに乗っているキャラが本編での距離感や関係性に合わせて徐々に変化するという繊細なこだわりに、そのカットを見るだけでときめいたり切なくなったりさせられました。
「ハロー!!きんいろモザイク」では、通常のオープニングの他に、冒頭がアリス、忍、カレン、綾、陽子のソロバージョンに変わり、さらに歌詞までキャラに合わせてアレンジされているという粋なスペシャルオープニングが用意されていましたし、歌い出しの変化といえば、もはやお家芸になってきた「てさプル」に関しても、新たにみならい女神たちが加わり、もはや原形をとどめなくなった「タイトルロゴがドーン!」が毎週見逃せない楽しみな要素になっていました。
映像に見入ってスタッフクレジットを見逃してしまったり、特徴的なクレジットを注視しすぎて映像がみられずに結局複数回視聴してしまう……、なんていうオープニングもありました。
「それぞれの登校風景」を描いた「ニセコイ:」のオープニングは登校中のちょっとした事故を中心にした起承転結のストーリー仕立てになっていて、気になるその展開をじっくり楽しんでいるとクレジットが全く見られなかったり、一方でクレジットの描かれ方が特徴的だった「パンチライン」ではクレジットがまるで絵の一部のように映像に組み込まれているので、文字を読み取ることに集中してしまうあまり、今度は映像が見られなくて、結局どちらのオープニングも複数回視聴してしまいました。
今期は飛ばすどころか毎週チェックしたくなるマイナーチェンジのような「オープニング自体が楽しみになる」工夫や、複数回視聴できるくらい「何度でも見たくなる」魅力的なオープニングが多く、当たり前のように思っていた「オープニングも本編」という言葉を改めて実感させられるような、オープニングの新しい楽しみ方や魅力に驚かされたクールだったと言えるのではないでしょうか。
ちなみに厳密には春アニメではないのですが、そんな今期のオープニングの中で一番の驚きを味わったのは「ジョジョの奇妙な冒険SC」の第47話でいきなり発動した「ザ・ワールド!」の瞬間でした。あれはすごかったですね〜。
さて、それでは今回も、独断と偏見による今期アニメの個人的ベスト3を紹介して終わりたいと思います。
1位「グリザイアの楽園」
アダルトゲーム原作だから…と見逃していたとしたらもったいない! 放送には難しいエピソードをあそこまで熱く、美しく描かれていたことに感動する作品でした。
2位「響け!ユーフォニアム」
女の子が可愛いのはもちろん、あの時期特有の学校社会の複雑さが繊細に描かれています。深い人間ドラマにハッとさせられる作品でした。
3位「血界戦線」
「ヘルサレムズロット」という異様な世界で繰り広げられる日常というギャップが面白く、長期の海外ドラマを1クールだけ切り取ったようなおしゃれな作品でした。
◇プロフィル
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。