JR東海道新幹線「のぞみ」で起きた車内火災で、死亡した男が乗客に「逃げなさい」と告げた直後、自らに火を付けていたことが30日、神奈川県警への取材で分かった。また、煙を吸い心肺停止だった女性が同日午後、搬送先の病院で死亡が確認され、死者は2人となった。県警捜査1課は男について、殺人や現住建造物等放火の疑いで捜査。1号車の実況見分を行うなどして詳しい経緯を調べている。
国土交通省は新幹線で初の「列車火災事故」と認定。運輸安全委員会は同日、調査を開始した。
県警捜査1課によると、死亡したのは、東京都杉並区西荻北、職業不詳林崎春生容疑者(71)と、横浜市青葉区荏田町の整体師桑原佳子さん(52)と確認された。
林崎容疑者は先頭1号車の1列目に座っていた60代女性に「拾ったからあげる」と千円札数枚を差し出したが、断られるとうろうろし始めた。間もなく小型のポリタンクを持ち込み頭から油をかぶった。
林崎容疑者は「やめなさい」と諭す女性に対し、「あなたも逃げなさい」と発言。女性がその場を離れ振り返ると、同容疑者から火の手が上がったという。女性は無事だった。別の乗客が、ライターで火を付ける同容疑者の様子を目撃していた。
一方、桑原さんは2号車寄りのデッキに倒れていた。逃げる途中で一酸化炭素中毒に陥ったとみられる。
火災は同日午前11時半ごろ、東京発新大阪行き「のぞみ225号」で新横浜―小田原間を走行中に発生。白煙が車内に充満し、1〜3号車の乗客は後方車両に避難したが、死亡した2人以外に26人が重軽傷を負った。
のぞみ号は発生から約3時間後、緊急停止していた小田原市上町から非常運転を行い、小田原駅に到着。乗客約800人を降車させた。
JR東海によると、東京―新大阪間などで上下線43本が運休、最大4時間半の遅れが生じ約9万4000人に影響が出た。