認められるためならパクツイも--10代の歪んだ自己顕示欲とは

 皆さんは「パクツイ」をご存じだろうか。パクツイとは、簡単に言えば他人のツイートを盗用する行為のこと。Twitterには元々、発言主を明らかにした上でツイートを再投稿する「リツイート」という仕組みがある。ところがパクツイは、元の発言主を明らかにせず、自分が発言主であるかのようにツイートするところが異なるのだ。

 多くのリツイートがついているツイートを検索すると、リツイートではないまったく同じツイートがたくさん見つかることがある。これがパクツイだ。パクツイは、10代において非常に頻繁に見られる。

 単純なリツイートの場合、発言主はリツイートやリプライなどの反応が返ってきたり、フォロワーが増えるなどの満足感が味わえる。ところがパクツイをした場合、元の発言主が受け取れるはずだったリツイートやリプライ、フォロワー増などがすべて盗用した相手のものとなってしまうところが問題なのだ。

 大学1年男子A一郎にとって、Twitterでフォロワーが増えること、リツイートされることが一番の願いだ。最初はオリジナルのツイートでリツイートを狙っていたが、フォロワーが少ないこともありほとんどされなかった。そこで試しにリツイート数が多いツイートを見つけてパクツイしたところ、それまでと桁が違うくらいリツイートされ、フォロワーも増えた。仲間から「面白いじゃん」「ウケるwww」などとリプライをもらったことにも気をよくした。

 それ以来、リツイートが多いツイートを見つけてはパクツイしている。「1日100くらいパクツイすることもある。でも別に迷惑かけてないし、みんなが喜んでいる」とA一郎は言う。「一度、タレントにリツイートされてとても気分がよかった。もっと多くの人からリツイートされるようにがんばるつもり」。

リアルタイム検索でリツイートではない同じツイートが多数見つかる。これがパクツイだ

一般化するパクツイ

 2015年の大学入試センター試験の国語の問題に、Twitterにおけるつまらないリプライ、通称「クソリプ」と、他人のツイートを拝借する行為、通称「パクツイ」が取り上げられて話題となった。出典は、評論家・佐々木敦氏の「未知との遭遇」だ。

 パクツイを取り上げたのは、「明らかに意識的にパクッているのだけれども、受け取る側のリテラシーの低さゆえに、オリジナルとして流通してしまう、ということもしばしば起こっている。それが倒錯側の利益になっていたりするならば、やはり一定のリテラシーが担保されなければならないとも思います」という部分。

 2014年5月には、「めざましテレビ」でも「パクツイ」が特集された。番組でアンケートをとったところ、パクツイをしたことがある人は何と62%に上ったという。パクツイの常習者として番組に登場したTwitterで1万人超のフォロワーを持つ男子大学生は、1日平均300回、最大1日700回のパクリツイートを投稿するという。パクツイはもはや10代の若者達の間で一般化してきているのだ。

自己承認欲求と自己顕示欲の発露

 では、彼らはなぜパクツイをするのだろうか。もちろん、中には営利目的でパクツイしているアカウントもある。面白いツイートばかり集めてパクツイを繰り返すことで、元の発言主のアカウントよりもフォロワーが多く、リツイート数も多いものがほとんど。リツイートが増えることで、プロフィールなどに張られたアフィリエイトリンクや広告のクリックで収入を得るのが目的というわけだ。巷にあふれるbotアカウントの多くはこのような目的で運営されている。

 一方、10代の若者たちは違う。A一郎たちにとって、いくらフォロワーが増えてもリツイートされても収入にはつながらない。単に多くのフォロワーやリツイートを獲得するという、自己承認欲求や自己顕示欲を満たすために行動しているのだ。件のめざましテレビの大学生も、「フォロワーが増えリツイートされると優越感が得られる。徐々にマヒしていった」と語っている。

 パクツイされるのは文章だけではない。高校3年生のB也はアニメが好きで、自分も絵が描けるようになりたいと考えている。最初は自分で描いていたが、Pixivを見てもっとうまい人がたくさんいることを知り、自ら描くことを断念。代わりに、気に入った絵を拾ってきてはパクツイするようになった。

 「お気に入りに入れられたり、『ファンです』と言われるのが嬉しい。本当のイラストレーターになった気持ちになる」そうだ。「先日、パクツイをさらにパクツイされた。パクツイされるくらい良い絵を見つけてきたと鼻が高かった」。