カウントダウン中なんですが、一気にカウントゼロを目指す人たちがいます。
エドワード・スノーデン氏が明らかにして全米を震撼させた、米国家安全保障局(NSA)による個人情報データ収集。5月にはとある裁判所がこの活動は違法だと判断を出し、そのおかげか、6月の頭にはデータ収集の根拠だとされていた愛国者法が失効し、新しい「自由法(Freedom Act)」が成立しました。「新しい法律ができた!はい従いましょう!」とならないのがアメリカなわけで、まだまだ議論が続いています。ということで、現在の状況を簡単にまとめてみました。
目玉は、大量データ収集の流れが変更されたこと。これまではNSAが直接、電話の通話記録を集めていたのですが、自由法ではそれが禁止されました。今後、NSAが通話記録を手に入れるためには、その理由をはっきりさせて電話会社にお願いする必要があります。結局、情報収集が終わったわけではないのですが、ともあれ、NSAが直接データをのぞくことはなくなって、ハードルがひとつ増えたということですね。
今、問題になっているのは、自由法が設定した180日間の猶予期間。情報収集のやり方を変更するには、移行のための期間が必要だろうということで設けられているものです。つまり、この180日間は、NSAが今までどおり直接情報収集をしていい、ということになっているのです。
この移行に180日もいらないんじゃないか、と声をあげたのは権利擁護団体のフリーダム・ワークス。アメリカ外国情報活動監視裁判所(FISC)に対して、たとえ限られた期間であっても情報収集をもう1度始めることは、法的根拠がないと訴えました。
この申し立てに対するFISCの判断は、「半年は仕方ないでしょう」というそっけないものでした。いわく、「議会は新しい自由法の中で情報収集をすぐに終わらせることができた。にも関わらず、長い議論の果てに180日間の移行期間を設けると決めた」とのことで、議会の決定を支持しているようです。それだけでなく、5月に控訴裁判所が「情報収集プログラムは違法だ」とした判断もまちがっていると切り捨てました。ちなみにオバマ政権も、180日間の移行期間を認めるFISCの判断に賛同している、と司法省が声明を発表しています。
こんな判断が出されて、アメリカの権利擁護団体がだまっているわけがありません。上訴を計画しているアメリカ自由人権協会(ACLU)は、「憲法にも法律にも、政府が多くの罪のない人々を監視する権限はありません。NSAによる監視が禁止され、これまで集められた情報が消されるよう、裁判所に求めるつもりです」と言っています。違法判断を出した控訴裁判所が、この180日間の猶予期間についてはどういう見解なのかはまだわかっていません。
これまでもNSAの情報収集については裁判所によって判断が異なっているのですが、今回もFISC対控訴裁判所で意見が対立するかもしれません。しかし、そうこうしている間に180日が経ってしまいそう。ともあれ、こんな世間の動きはどこ吹く風で、NSAが裏工作していそうだなあ…という気がしないでもありません。
source: New York Times
(conejo)