ドイツで開かれている世界遺産委員会で、日本が推薦した「明治日本の産業革命遺産」の審査が持ち越されたのを受け、政府内には戸惑いが広がっている。6月の日韓外相会談で尹炳世韓国外相が登録に協力を約束していただけに、韓国側の強硬な態度は予想外だったようだ。

 外務省幹部は4日、「外相同士が協力で一致したのだから、まだその努力を続けている」と言葉少なに語った。

 審査持ち越しは、戦時中の強制労働の歴史をめぐる日韓の調整が難航していることが原因とみられる。政府関係者によると、世界遺産委での韓国代表が行う発言内容などに関し、なお両国に隔たりがあるという。話し合いが付かない場合、委員国による投票に持ち込まれ、韓国は反対に回る可能性が高い。

 政府は、安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領による初の首脳会談を今年秋に行うことを目指している。世界遺産委での調整が決裂すれば、首脳会談開催に向けた動きに水を差すのは避けられない。政府関係者は「韓国の裏切りだと日本人には映るだろう。日韓関係への影響は計り知れない」と懸念している。