今月から中央省庁で「ゆう活」が始まっているが、7月4日放送の「週刊ニュース深読み」(NHK総合)では、朝型勤務と残業の問題を取り上げていた。朝型勤務で残業は減ると思うかどうかNHKネットクラブの会員に聞いたところ、「減る」という答えはわずか15%。「変わらない」が44%で、「増える」と答えた人が20%だった。
寄せられた意見の中には、朝型勤務をやってみたものの残業をやめられず「体調不良になってしまった」という声も。千葉商科大専任講師の常見陽平氏は、残業を減らすには、仕事の絶対量を減らすことなどが必要だと指摘。しかし仕事が大好きだと思いこんでいる「ポジティブ社畜」もおり、中々難しい問題なのだという。
常見氏「笑いながら倒れた」経験を告白「ポジティブ社畜」について、常見氏は「会社に飼い馴らされているにもかかわらず、非常にポジティブで頑張っている自分に酔っている人たち」のことだと説明する。
そんな人たちが現れた背景には、雇用が不安定な中で会社にしがみつきたい気持ちが従業員にあることや、人材マネジメントに心理学が取り入れられて「労働ポエム」などモチベーションを上げる方法を会社が研究していることがあげられるという。
またSNSの普及で、「ポジティブ社畜」は残業自慢などの頑張っている自分をアピールしており、いわゆる「意識高い系」との共通点もあるようだ。
竹田解説委員も、このような現象に警鐘を鳴らす。自分がやらされている、やらざるを得ないと理解した上で頑張るならまだいいが、自分から積極的に頑張ろうと思い込んで仕事をしているうちに、無理をして倒れてしまうこともある。
常見氏も、同じような原因で倒れてしまったことがあると自身の経験を話した。
「残業が好きな人を褒めるマネージャー」は害悪「笑いながら倒れたんです。ポジティブに頑張っていると思っていても、長時間労働を続けていると疲労が蓄積されていました」
この番組の視聴者からは、ツイッターに、同僚や自分自身が「ポジティブ社畜」になっていたというエピソードがあがっている。
「いたいた、ポジティブ社畜な女上司!休みはいりません!とか言ってた!」
「会社に遅くまで残るのわりと好きだから、わたし、きっと、ポジティブ社畜というやつだ」
仕事が好きなら別にいいのでは、という人もいるが、「ポジティブ社畜」は他人にその価値観を押し付けることが多いことが問題、と指摘する人もいた。
番組でもワーク・ライフバランスコンサルタントの大塚万紀子氏が、組織の中に残業が好きな人がいて、その人を褒めるマネジャーがいる場合には「残業は減りません」と話していた。
ゆう活なのに午後6時や7時以降にオフィスにいる人は、定時に仕事が終わらなかったということになる。そこで「仕事のやり方を見直そうね」と声を掛けたり、残業の理由を尋ねたりすることで、「最初の改善のきっかけ」になるという。
しかし経営者やマネジャーの多くは、仕事を頑張って出世してきた人たち。現場に任せておくと、どうしてもハードワークをする人を評価しがちだ。竹田解説委員は、仕事を終えてから次の仕事まで11時間空けないとならないヨーロッパのインターバル規制を紹介。労働時間の上限規制が必要だと訴えていたが、これもひとつの方策だろう。
あわせてよみたい:霞が関「ゆう活」の完全実施が早くも危機に?