Yves Hanoulle氏が,雇用に関する本を書くコミュニティプロジェクトをスタートさせた。InfoQではそのプロジェクトや,雇用契約者(hiring contractor)と“固定型”従業員との違い,雇用に関する現在の動向について,氏にインタビューした。さらにプロジェクトのメンバたちにもインタビューして,参加した理由や効果的な雇用について聞くことにした。
InfoQ: コミュニティプロジェクトを始めた理由は何ですか?
Hanoulle: 私はコラボレーションエージェントとして,力を合わせて仕事のできるチームを作るように心掛けています。そして,チームに大きな影響を与えるもののひとつが,メンバの採用なのです。ですから必然的に,クライアント支援を人員選択から始めました。私はこの数年間,質問やテクニックのちょっとしたコレクションを集めてきました。そして数ヶ月前,Jimmy Janlénの可視化に関する本からヒントを得たのです。彼は本を執筆する間,アジャイルコミュニティからのフィードバックを求めていました。彼の本に興味を持ってから数週間後,たくさんのエネルギーを得た私は,今度は自分自身でコミュニティブックを書いてみようと思い立ち,その方法を考え始めました。それから後は,ご存知のとおりです ...
InfoQ: どのような読者を想定しているのでしょう?
Hanoulle: チームのすべての人たちと言いたいところですが,それは自信過剰でしょうね。すべての人に適した本はありませんし,チームで働くほとんどの人とも言えません。人員選択の経験もそれ程長くはありませんから。コミュニティ全体を経験でグループ分けすれば,すべての人(私も含めて,といよりも私こそ)が,多くを学べるのではないかと思います。
InfoQ: 雇用契約者と“固定型”従業員との根本的な違いはどの部分にあると思いますか,ご意見を聞かせてください。
Hanoulle: 法律的な観点からはたくさんの違いがありますが,人選という視点で見るならば,それほど多くはありません。満足ができなければ,契約を更新しなくても何ら問題になることはありませんが,雇用契約者には3~6ヶ月という期間もあります。契約社員は,正社員と同じようにチームに馴染めなくてはなりません。企業の雇用契約者に対する配慮が不足していることが問題のひとつだと,私は思っています。不適切な契約社員はチームの雰囲気を簡単に壊してしまいます。これは大きなリスクです。このような違いを明確にすることが,この本の意図です。これまでのところは,何も見つけだせていませんが。
自分の会社を立ち上げたのが1998年なので,見方に偏りがあるかも知れませんが,私は常々,雇用者のように顧客に対応しています。(あるいは,年配の雇用主に顧客のように対処している,と言った方がよいでしょうか?)
InfoQ: 雇用に関する現在の傾向について,いくつか挙げて頂けますか?
Hanoulle: さまざまな業務に対する雇用に見られる傾向のひとつとしては,実際に作業している様子を見てみたい,その方法を知りたい,というものがあります。理由はたくさんありますが,開発者というのは概してコミュニケーションが得意ではありません。ですから,開発者を会話術の優劣で選ぼうとすると,優秀な人材を数多く見逃すことになりかねません。
それとは逆に,インタビューで非常によかった人が,実は自分の売り込みが非常に上手だったのであって,雇用の目的だったタスクを実行できない,ということもあります。私たちの本では,さまざまな役割のための練習の例も提供しようと思っています。
InfoQ: このコミュニティプロジェクトの現在の状況について,最新情報を教えて頂けますか?
Hanoulle: 1ヶ月ほどの間に,18名がプロジェクトに参加しました。すでに50ページを書き終えています。ほぼ完了した章もありますが,他は今のところ,いくつかのアイデアがあるだけのスタブに過ぎません。
私個人としては,もっと多くの人たちと一緒に,この本を書きたいと思っています。 企業は,創業メンバを越えて成長を始めた瞬間から,人を雇うことを考える必要があります。それと同時に,企業としての文化を育み,伸ばさなくてはなりません。
この本を通じて,あらゆる方法でそれを支援したいのです。参加する人数が増えれば,より多くの方法に言及することができます。コミュニティプロジェクトに興味をお持ちならば,ぜひ連絡をください。
InfoQはコミュニティプロジェクトの初期メンバ数人に,このプロジェクトに参加した理由や,効果的な雇用を行うために企業が行うべき最も重要なことについて話を聞いた。
InfoQ: 雇用について本を書くコミュニティプロジェクトに参加しようと考えた理由は何ですか?
Jurgen de Smet: 理由は知らないのですが,Yvesに頼まれたのです。すぐに参加しようと思いました。大半の企業が行っている採用面談の方法が嫌いだから,もっと強い言葉で言うなら,インチキだからです!ですから私は,世界中の人たちにもっと違うやり方をしてほしい,要するに“売り込む”のではなく,実行(DO)してほしいのです。
Anna Royzman: テストリーダとマネージャを長く続けてきて,優れた社員を採用することが私の責任でした。数年前にアジャイルチームに加わって,採用の方向性が変わりました。クロスファンクショナルなチームにも合いそうなテスタを探すようになったのです。この分野ではポジティブな経験を何年も積んできましたので,それをコミュニティで共有したいと思っています。共同での作業も楽しみたいですね!
Mohammed Nafees Sharif Butt: 私は過去8年間,たくさんの人と面談をした経験があります。どんなに小さなことでも構わないので,私に可能な貢献方法でコミュニティに加わりたかったのです。
Bart Coelus: 私はマネジメント強化から自己組織化に至るまで,チームワークを強く信じています。これまで15年以上,プロジェクトのために人を雇ってきましたが,採用プロセスが単に時代遅れであったり,あるいはアジャイルやリーン管理の考え方にまったく合っていないという理由から,間違った人たちが間違ったプロジェクトにアサインされているのを何度となく見てきて,不満を感じてきたことは事実です。
InfoQ: 企業が効果的な採用を行う上で,最も重要なことは何だと思いますか?ご意見を聞かせてください。
Chuck Durfee: スキルも重要ですが,人間的な側面が最も重要だと私は思います。ほとんどの採用状況では,人生の3分の1をその人と過ごすのですからね。一緒に居られると同時に,意欲をかき立てるような人を選ぶべきです。お互いの成長を助けられれば理想的ですね。
Anna Royzman: 効果的な採用には2つの部分があります – 優秀な応募者を集めることと,彼らに留まってもらうことです。優秀な応募者を集めるには,希望者を募る方法を変えなくてはなりません。私の分野(テストとQA)で言えば,キーワードによる履歴書の検索などは,採用方法としては最悪です。私が勧めるのは,対象とする人たちのネットワークリソースを使うことです。今日の人的ネットワークの多くは,ソーシャルメディアや専門的なイベントなどのカンファレンスで行われていますから,チームにフィットできる,情熱を持ったプロフェッショナルに出会えるのは,そういった場所なのです。
効果的な採用の2つめの部分は,優秀な応募者に留まってもらうことです。 このためには,プロフェッショナルが成長し,自らを革新することの可能な,建設的で自分を伸ばすことのできる環境を作り上げなくてはなりません。お金の問題ではなく,人は仕事の達成感を求めます。それを実現できるのがよい会社なのです。
Mohammed Nafees Sharif Butt: 人事部に仕事を任せるのではなく,チーム自身が仲間(あるいはマネージャも同様に)を採用しなくてはなりません。これは単に,既存メンバによる歓迎意識や協同的なアプローチ,当事者意識,優れたメンタリングなどのためにだけではなく,優秀な人材が人事部の官僚意識にそぐわない場合に起こりがちな,ネガティブな効果を抑制する上でも有効です。
採用が主として(あるいは完全に)人事部によって行われているのであれば,人事担当者がどのように採用されているのかをまず精査する必要があります。従来型のテスタの採用方法がアジャイルチームに必ずしもそぐわないのと同じように,従来的な手法の訓練を受けた人事担当者では,従来の雇用方法を捨てることはできないでしょうし,現代的なアプローチを用いた採用もできそうにありません。
第3に,給料の高いほどよい人材が集まるという時代遅れの考えとは対極にある,優れた作業環境の特徴として,作業の質やモチベーション,能力向上,ワークライフバランス,リーダ型マネージャといったものがあります。これらすべてを重視するということはできませんが,制限するのは一度にひとつとする必要があります。“そうですね,企業文化は素晴らしいですし,環境も優れていますが,給与面では他に劣ります”,“給与はよいのですが,企業文化を求めるのなら,他へ行ってください”,という企業を見てきました。今の現代では,知識労働者は経済の原動力です。優れた企業文化とよいインセンティブを両立させてください。
Bart Coelus: 適切な基準を決めるために時間を投資することですね。応募者について詳しく知ると同時に,将来的に同僚になる人たちも雇用プロセスに関与させるのです。優れたチームに優秀な人材を採用するために,アジャイルのテクニックを全面的に使いましょう。
その次には,企業と雇用者の関係を改善して,‘契約’以上のものにすることが必要だと思います。職を失うことなく,どこか他の所で6ヶ月の間仕事をするようなこともできて然るべきです。これができれば雇用者と会社,双方にとってWin-Winだと強く思います。