「その汚い手でオレをさわるな」という帯の着いた単行本第1巻を見た時、「どんなハードボイルドなストーリーなんだろう」と期待して購入した『潔癖男子!青山くん』(作:坂本拓/集英社)の第2巻が先日発売された。実はこの作品、サッカーを題材にした熱い青春ストーリー......かと思いきや、スーパー潔癖症のイケメン男子、青山くんをめぐるドタバタコメディだったのだ! U―16日本代表にまで選ばれた実力の持ち主の青山くんは、地味で冴えない富士美高校サッカー部に在籍している。サッカーを始めたキッカケは「手を使わなくていいから」という単純な動機で、富士美高校に入学したのは、トイレにウォシュレットが付いているからという、さらにどうでもいい理由! しかしサッカーの実力は相当なもので、過去無敗、どんな弱小チームをも勝利に導く青山くんなのだった。
スポーツドリンクの回し飲みはしない、試合勝利後の抱き合いやシャツ交換もしない、接触プレーは本能で回避する、ヘディングはしない、雨のピッチは走らないという、サッカーでも絶対的に潔癖症な青山くん。そんな青山くんだけれど、エプロンとゴム手袋をはめて部室をキレイにしたり、愛用便器「セバスチャン(命名)」を磨き上げるスキルは非常に高い。そこへ、青山くんを陰ながら応戦するシャイなヒロイン後藤もかちゃん登場。青山くんのためにサッカー部の部室をピカピカに磨き上げる妖精さんかと思いきや、釘バットで青山くんに近付く者を排除(未遂)するのも躊躇しないストーカー系女子だった。普段は内気で、まともにしゃべれない後藤ちゃんだが、着ているTシャツには「青山命」の文字が(笑)。
部活のメンバーは個性派揃いというか、変人の集まりで、部員たちは青山くんのタオルの臭いを嗅いでみたり、青山くんを隠し撮りしたり、ファンクラブの団長になったり?! その中でも、青山くんと張り合い、歩み寄り、面倒を見るのが、サッカー部のエース・財前かおる。いつもことごとく空回りなのが面白い。カッコイイはずのシチュエーションでも、青山くんの突っ込みにかかれば、財前くんはピエロのよう。本当はエースで大財閥のおぼっちゃまなのにねぇ......。サッカー強豪の他校やJリーグのユースチームに誘われても、富士美高校に居続ける青山くん。その理由は、「ユニホームが白いから」と、青山くんの潔癖ぶりは徹底している。試合中に汚れてしまうと突然動きが鈍くなる青山くんだったが、潔癖ゆえに負けることも大嫌いなため、試合終了5分前になるとスイッチが入る。泥にまみれようと、接触プレーをされようと、必ず得点して勝利するのだ。「自分、負けるの嫌いなんで」と無表情で言い放つ青山くんはかっこいい。でもやっぱりハイタッチはしないのだった。
「イケメンどうくさい」というのがキャッチコピーの『潔癖男子!青山くん』だが、舞台はサッカー部、ときどき校外、という学園コメディだ。ヤンキーに目をつけられちゃった青山くんを守ろうとする後藤ちゃんもかわいいし、そんな後藤ちゃんを見守る部活メンバーも面白い。そして今日も青山くんは、潔癖にサッカーをしてるのだ。愛器セバスチャンも大事にしながら、ね。
(文/桜木尚矢)