この文書は,大学院での経済学教育に関心がある読者(大学院生である,大学院入学を考えている,大学院生であった,単に好奇心がある,等)を対象に,どのようにして大学院での経済学のカリキュラムが組まれ,教育がおこなわれているか,を説明したものです。
大学院でのカリキュラムは,それぞれの大学院が特色を出して編成していますが,ある程度は国際的に標準的だと考えられ
る部分をもっています。文書化された国際標準はありませんが,この文書では,私が標準的と考えるものを説明しています。
大学院での学習は決して平坦なものではありません。志なかばで中断を余儀なくされる学生もいます。ここでは,できるだ
け多くの学生が大学院での学習を成功させるように,正念場となるポイントを示しています。
経済学に必要な統計学
数学とならんで,統計学の履修も要求されます。学部では,2種類の統計学の入門コースが提供されているのが普通です。
1科目のコース(数学の履修を前提しない)。主として,研究の手法として統計学が必要な学生を対象としています。
確率・統計の2科目のシーケンス(微積分・線形代数の履修を前提とする)。1科目のコースよりも,より数学的な議論を取り入れ,広い内容をカバーしま
す。上級の統計学の科目を履修するための前提となります。
学部の「計量経済学」の科目を履修するには,どちらかの入門コースの履修が前提となります。
経済学で要求される統計学の要求水準をまとめると,以下のようになります。
学部
最低 統計学の1科目の履修
推奨 統計学の1科目と計量経済学の1科目の履修
大学院(入学するまで)
最低 統計学の1科目の履修
推奨 確率・統計の各1科目と計量経済学の1科目の履修
経済学に必要な語学
戦後に米国が経済学の主流になったことから,必要言語(working
language)は英語となりました。日本経済を研究する場合には,日本語の知識も必要です。
学部で学ぶ経済学
学部で経済学を専攻することは,大学院で経済学を学ぶための必要条件とはされていません。しかし,学部で経済学を専攻するときの必要条件となる。入門2
科目・中級2科目の経済学科目を履修しておくことが推奨されます。