VRのこれからを占います!
Oculus Riftの製品版とともにコントローラーのOculus Touchも公開され、いよいよもってVRの時代が私たちのすぐそばにまで近づいてきました。しかし、先に発売される上にOculusにない機能を持つライバルも出現し、Oculusの独擅場とはいかないようです。
VRというマーケットを一手に興したOculusの創始者たちは、今何を考え、これからどう動くのか、米GizmodoのSean Hollister記者に、彼らが答えてくれました。
* * *
Oculusはとてつもないプロダクトを持っています。別世界にいるような気にさせてくれるヘッドセット「Oculus Rift」です。後に発売されるコントローラー、Oculus Touchも使えば、バーチャルの物体を掴む事すらできるようになります。しかしライバルのHTC ViveはVRの世界で歩きまわる事もでき、しかもOculus Riftより一足早く今年発売されます。
私は両方試してみました。Xboxコントローラーで遊ぶだけでも楽しいものですが、Oculus Touchはかなりの驚きです。しかし、やはり歩きたくなってしまいます。両方のヘッドセットを買う余裕は無いので、結局今はHTC Viveに傾いているのが正直なところです。
Oculusはこれにどう対処するのでしょうか? 創始者の2人に、Oculus Riftの現在状況と、来年第1四半期に発売される時、どういった体験を期待できるかを聞いてみました。
Xbox Oneのゲームを遊べる事や、Oculus Storeの体験など様々な話をしましたが、最も興味深かったのは、例えHTC Viveを買ったとしても、少なくとも当面はVR世界で歩きまわる事はあまり無いだろうという事です。
負け惜しみかどうかは読者の皆さんの判断にお任せしますが、私が思うに彼らは的を射ているのではないでしょうか。
1年以上前、OculusはOculus Riftを「座って体験」するために設計したと発言したことでVRコミュニティから批判を受け続けています。更にHTC Viveが登場した事で、余計に釈明する立場になってしまいました。
インタビューにおいてOculusは、技術的にはもっとできる、と今までのスタンスから若干修正しているのがわかります。しかし、技術的に可能な事と、彼らが目指している事は違うものだというのが明らかになります。
ギズモード(以下ギズ):コードレスになるまではどれくらいかかりますか?
Palmer Luckey(Oculus創始者、以下PL):まだまだこれからです。
ギズ:立って歩けるようになるまではどれくらいですか?
Nate Mitchell(製品担当副社長、以下NM):Oculus Riftは立つか座って楽しむ為に設計しています。トラッキングシステムはまさにその為に設計したのです。立ってもいいんです。ゲーム開発者の中には立ってプレイするゲームを作っている方もいるでしょうし、座ってプレイする事を念頭に作っている方もいます。プレイヤーは自由に体験を選ぶことが出来るようになります。
PL:あなたが体験したOculus Touchのデモには、2台目のカメラが置いてあります。そこから分かるように、我々のシステムは複数のカメラを使う事ができるのです。しかし今我々が目を向けているのは、システムを買ったらさっさと箱を開けてすぐにでもプレイしたい人たちなのです。
NM:Oculus Riftを箱から出したら、机に置いてコンピューターとヘッドセットにつなげればセットアップは完了です。
Oculus Riftに同梱される物:ヘッドセット、カメラ、そしてXbox Oneゲームパッド。
ギズ:私のリビングにはコーヒーテーブルやソファなど、つまづく可能性のある家具がありますが、Oculus Riftに最適な部屋にするにはどうしたらいいのでしょう?
NM:私たちからすれば、目の前のテーブルにカメラを置いてソファに座れば、それはもう充分Oculus Riftに最適な部屋だと思います。
ギズ:もし歩きまわりたかったら?
PL:なら家具を動かす必要がありますね。
ギズ:では家具を動かしたとしましょう。その後、壁にぶつからないように境界線を設定する事はできるのでしょうか?
PL:境界線を設定するのはハードウェアではなくソフトウェアの役目ですが、体積をトラッキングできるなら、空間に境界線は設定できます。
ギズ:アーリーアダプターである私たちは、例えば「私のリビングがX立法フィートなのでVR空間でここ以上は行けないように」と設定できるようになるのでしょうか?
PL:そこまでの事はできませんが、正直、現在そこに重きはおいていません。我々は、「Oculus Riftで遊ぶには家に帰って部屋を片付けて境界を設定して…」と皆さんに考えて欲しくないのです。
そういう事をする方もいるでしょうし、実際Oculus Riftでそれを行う事も可能になります。しかし我々が注目しているのは、煩雑な手順を踏める、テクノロジーに精通している層ではないのです。
NM:そういった事をできる方は、ゲーム開発者の視点からはごく少数ですよね? ゲームを開発したとして、15フィート(約4.5m)× 15フィート以上の部屋が必須なゲームだったら、物凄く限られた人々に売る事になります。商業的に成功しなければ、それ以上ゲームを作る事もできなくなります。
私たちが目指しているのは、素晴らしい真のコンシューマ向けVRを、可能な限り多くの消費者に提供する事です。これはゲームに限った事ではなく、VRのエコシステムをキックスタートさせるのに大変重要な事だと思います。
PL:今まで、我々はそれを開発者の皆さんからのフィードバックで行ってきました。Xboxのゲームパッドを付属させるのは、Oculus Riftでゲームをプレイする為に、周辺機器を更に購入する必要はないと開発者に知ってもらいたいからです。
同時に、開発者の皆さんが限定的な数の人しかプレイできないゲームではなく、皆が遊べるゲームを作れるようにしたかったのです。例えVR用に部屋をまっさらにする事をいとわなくても、部屋が左右非対称で妙な形をしているかも知れないし、他の人より小さい部屋かも知れませんから。
勿論、少数に向けたゲームを作る開発者も、特にHTCのハードウェアで始めた方にはいるでしょうが、そういうゲーム開発は推奨していません。
ギズ:Oculus Touch用の素晴らしいコンテンツが登場する確証はありますか?
PL:返答が難しいですね。ローンチ時に凄いコンテンツが揃うかどうか?と訊かれれば、それは恐らくないでしょう。伝統的なゲームを何十年と作っているゲームパッドにしたって、優れたコンテンツが登場するまで何年もかかったのですから。
VRインプットを使ったゲームは全く新しいもので、ほぼ誰も経験がありません。これから先数ヶ月で急に良いゲームの作り方が見つかるとは思えないし、ゲームパッドで遊ぶVRゲームよりも時間がかかるかも知れません。
現在、我々はそのノウハウの確立の為にコンテンツへの投資を進めています。VRインプットを使う事に非常に興奮している開発者の方たちと話をしていますが、ローンチ時に優れたコンテンツが並ぶとは思いません。VRインプットを使った良作コンテンツの作り方を開発者が見つけるには時間が足りませんからね。
競合しているVRコントローラー技術:ValveのLighthouse
ギズ:ではこんな質問はどうでしょう。開発者がOculus Touchの為に開発を始めたとして、どの程度、競合する他のモーションコントローラーの為にも並行して開発できますか? 相互運用性や基準などは考えているのですか?
PL:ViveにしてもMorpheusにしても、最終的な製品版を公開していません。なので、彼らのVRコントローラーがどんな入力を行うのか分からないのです。現時点で製品版のVRインプットがどういう物になるかを発表しているのが我々だけなので、相互運用性や機能のクロスオーバーについては何とも言えません。
ギズ:そもそも、相互運用性は目標ですか?Oculus TouchやValveのLighthouse専用に開発する事なく、モーションコントローラー全てに対応できるようになるのでしょうか?
NM:最小公倍数のために妥協したいとは思いません。
PL:基準を作るというのはそういう事です。全ての人に対応できるようにすると、付けられる機能は最低限になるでしょう。
NM:私たちが提供したいのは絶対的に最高のVR体験です。それは必ずしも相互運用性とは相容れません。
PL:例を挙げましょう。ソニー自身がフェイクだと発言したPlaystation Move 2コントローラーをご覧になりましたか? あれにはアナログスティックがついていませんでした。では、ソニーが実際にアナログスティック無しで、トリガー1つとボタン2つだけのセットアップにしたとしましょう。そうすると、皆が容易に相互運用できる基準を作ったら、全てのモーションコントロールゲームは、その3つのボタン入力で構成される事になります。
NM:それがベストなセットアップだと私たちは思っていません。
PL:フィンガートラッキングもその他のアナログ入力もない―長期的に見れば、これは最良の選択ではないと思います。
ギズ:公平性のために言っておくと、Oculus Touchもこれが製品版ではないですよね? 確かにOculus Touchであるとはお聞きしましたが、同時にこれはHalf Moonプロトタイプだともお聞きしました。
PL:Crystal Coveを公開した後、大きな変更の無いままそれはDK2になりました。Crescent Bayに関しても同様です。見た目のデザインやエルゴノミクス的な変更はありましたが、機能的には同じです。ディスプレイも近いし、リフレッシュレートも同じ。多くのハードウェアも同じですし、トラッキングシステムにしてもそうです。
最終的に製品版になった、Oculus Crescent Bayプロトタイプ。
ギズ:でも、ディスプレイパネルが1枚から2枚になりましたよね。
PL:我々が公開しているプロトタイプは、製品版のOculus Touchの象徴です。これから根本的な変更は一切ありません。
NM:いえ、改良のためにはいくつか根本的な変更もあるかも知れません。他にもOculus Touchのためにはいくつか用意がありますが…
PL:現在のプロトタイプで出来る事は、最低限製品版でも出来るという事です。
ギズ:Oculus Riftのゲームと、Oculus Riftで動作するVRなパソコンゲームの違いを教えてください。ただのディスプレイとコントローラーなので、何でも動かせるオープンプラットフォームだと以前おっしゃっていましたが。
PL:今ご自分で答えを出していましたよ。
ギズ:(笑)確かにそうですね。でも、Oculus側の事を教えてください。Oculus Storeにはどんなコンテンツを用意したいですか?
NM:私は同じような区別はしないですね。Oculus Riftで動作するゲームは全てOculus Riftのゲームだと考えていいと思います。iPhoneで動作するゲームは全てiPhoneゲームだし、Androidでも同様です。どこから入手したかは問題ではないと思いますよ。
PL:Oculus Storeで買ったゲームではないからといって…
NM:…Oculus Riftのゲームではない、という事はないです。それはナンセンスです。
PL:開発者は自由な方法で配信できます。我々のゴールはOculus Storeに人を呼びこむ事ではなく、開発者に発表する場を提供する事です。我々のストアを使ってもらえるなら、光栄です。
NM:同時に、Oculus Storeでコンテンツを入手すれば、素晴らしい体験ができるとユーザーに知ってもらうためでもあります。
ギズ:どのくらい「素晴らしい体験」ならストアに登録できるのでしょう?
PL:ほぼOculus Shareと同じで、ちゃんと動作する必要があります。ストアにある全てのゲームがユーザー全員にとって心地いいゲームである必要はないと思っていますが、もし不安を煽るようなゲームであるなら、それを事前に知らせるツールを提供したいと考えています。
NM:推奨動作環境で問題なく動作すれば大丈夫です。そこが一番重要なので。
PL:推奨スペックがかなり高いので、そこまで厳しい条件ではないと思います。
NM:私たちの目標は、ユーザーが推奨スペックのハードを買い、Oculus Riftのローンチ後にOculus Storeからダウンロードしたゲームをプレイして、何の問題もなく、処理落ちもせずに90fpsでプレイできる事です。
Xbox OneのゲームをOculus Riftにストリーミングできます。仮想テレビの中にですが。
ギズ:Xboxのゲームが、VR空間内の2D環境で動作しているのを公開しましたね。これはXboxゲーム限定ですか? それとも全てのパソコンゲームで行えるのでしょうか?
NM:現時点ではXbox限定です。
PL:一応明言しておきますと、ライセンスの問題ではありません。単純な事のようにおっしゃいますが、全てのパソコンゲームであのようにスムーズに行えるようにするのはとんでもない作業です。
NM:Xboxだから簡単だったというのはあります。Windowsに多くのストリーミング技術を搭載していますし、Windows 10はXboxからストリーミングを受け取る事ができるので。
PL:言ってみればVRシネマのようなものです。ビデオストリームをスクリーンに投影するだけですから。
ギズ:それでも、Oculus Riftに仮想2Dモニターを作り出すのは技術的な問題があると?
PL:レイテンシを低く保つのはゲーム毎に色々と問題があります。結構コツがあるんです。どんなパソコンゲームでも、Virtual Desktopを介せば動作させることはできます。Virtual Desktopを通してゲームを試した事はありますか?
ギズ:あります。
PL:機能としては可能ですが、全てで完璧に動作させるのは困難です。
NM:ローンチまでにそれを可能にするという事はまずないですね。
PL:Virtual Desktopは既に実在します。既にそれを行えるソフトがあるのに、我々の方からそれをコアな機能の一部にしようとするのは、特に一部のゲームで問題があるとわかっている以上、消費者のためにプラスにならないと思います。
ギズ:ローンチ時に使えるコアな機能とはなんでしょう? Xboxゲームパッド、Oculus Store、フレンドリスト、Oculus Storeのゲーム…。
NM:今お話できるのはそこまでです。
ギズ:Oculus Cinemaやマルチメディアアプリは?
NM:それらについてはこの先数ヶ月、特にOculus Connect 2でお話できるようになります。E3ではゲームが全てです。
Sean Hollister - Gizmodo US[原文]
(scheme_a)