文・取材・撮影:ライター ヴィクター・フランケンシュタイン氏
●注目の『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』をさっそくプレイ!
2015年7月11日~12日、京都・みやこめっせにて開催中の“BitSummit 2015”。自主的に製作された“インディーゲーム”の展示会としては、日本最大級となる。今回が3回目となる“BitSummit 2015”は、世界中から実力あるインディーゲームの開発者が集っただけではなく、ソニー・コンピューター・エンタテインメント(以下SCE)やマイクロソフト、さらにはユニティなどの企業ブースも濃密なブースを展開するなど、豪華な催しとなった。とくにSCEブースではプレイステーション4版『The Tomorrow Children(トゥモローチルドレン)』の日本初プレイアブル出展や、世界初プレイアブルタイトルまであったほどで、初日から多くの来場者が詰め掛ける盛況ぶりが見られた。
●プレイアブル体験でわかった“新しいオンライン体験”
■『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』というゲーム
“おもしろいゲーム”を世に送るために、SCEとキュー・ゲームスのタッグで開発が進められている『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』は、PS4用の独特なプレイ感のオンライン専用タイトルだ。
先日のE3会場でのSCEの発表も記憶に新しい。吉P氏は、いまの熱心なゲームファンをもっともワクワクさせてくれる人物のひとりと言っても過言ではないだろう。一方のディラン・カスバート氏といえば、キュー・ゲームス代表であり、かつて『スターフォックス』のプログラムを手がけた天才的なゲームクリエイターでもある。このふたりが満足気な表情を浮かべる仕上がりになりつつある『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』とは、いったいどんなゲームなのか。
このPVを見ているだけで、どこかロシアや共産主義的な世界観にゾクゾクさせられる。
Q.何をするゲーム?
プレイヤーとして、あなたはひとりの少女となる。文明が滅んだ何もない世界に存在する小さな町を拠点に、地層などから資源を採掘しながら、町を少しづつ拡大・発展させていく。
壁や地面を“同志のピッケル”や“同志のシャベル”を装備して採掘すると、“メタル”などの鉱石資源が入手可能。また、木などをチェーンソーで伐採することで、“木材”を入手できた。この入手した資源を町まで持ち帰り、指定の資材置き場に分類して保管することで、町でさまざまな施設を建設・修繕可能に。
また、採掘の最中には、“マトリョーシカ人民”という、まさにロシアの民芸品マトリョーシカ状の物体を発見することも。これを町の特別な施設に持ち帰ることで、中から人民を救出することができた(コールドスリープのようなものだろうか)。救出した人民の数が増えるほどに、町で制作できる施設のバリエーションが増加。さらに町を活気あるものへと発展させることができるようになっていた(人民を救出する施設には、“マトリョーシカに眠る同志の魂、国の希望”などと記載もあり、非常にロシアンなテイストに)。
朝から晩まで。この“労働”行為をくり返し、町を発展させていくのがプレイヤーの目的。目の前にはオープンワールドでどこまでも泥のような地面が続いている。この空き地のような場所に、どこまで大きな町が作れるのか……と想像は膨らむばかりだ。
Q.オンライン要素はどんな感じのもの?
オンラインゲームというと、“共闘”が遊びの中心となり、他プレイヤーとのコミュニケーションがある程度は必要となる。その楽しさはたいへん大きなものだが……その一方で、装備や能力の格差が生まれ、いざこざも絶えない印象だ。そう、さながら資本主義社会のように。こうしたいわゆる“ギスギスオンライン”と呼ばれるものは、『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』には存在しない。
実際に今回そのオンラインプレイを体験したが、自分の“労働”の合間に、チラチラと他プレイヤーのキャラクターが資材を運んでいったりするのだが、会話などは一切ない。姿もすぐに消えてしまう(運んでいった資材も消える)。
ちなみに自分が行った行為は、町の役場のような施設に報告することで、貢献度に応じて配給券や記念メダルがもらえる。配給券があれば、よりよい道具や服などと交換することができる。まさに共産主義的な生活を体験できるだろう。
Q.どういう世界の物語?
『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』の共産主義的な独特なビジュアルに示されるように、ピッケルを手に資源を採掘するというプレイヤーの行為は、強烈な“労働”と“全体主義”的なイメージを想起させる。
また、ビジュアルといえばプレイステーション4の表現力、とくにシェーダーの性能を生かした、美しい、そしてなにやらおもちゃをひっくり返したかのような不可思議な風景には、クラクラするほどの魅力を感じずにはいられない。
Q.PVに、怪獣がいるんだけど!
また、本作の大きなインパクトのひとつに、“イズベルグ”なる怪物の存在がある。
実際に体験してみると、怪獣と戦う別のプレイヤーも登場し、ふだんは関わらないにも関わらず、この時ばかりは、強烈に全員で町を守るために共闘しているという感覚を味わった。怪獣の描写や造形もなんとも言えず魅力的で、見事撃退すると、斃れた死骸がそのまま鈍く輝く鉱石の山になり、その場の地形として残るのだが……よくあるゲームだと、倒した敵はスッと消えたりしがちなだけに、この死骸が残る感覚は、とても灌漑深いものだった。
怪獣“イスベルグ”には、クモ型の移動速度が早めのものなども存在しており、施設を破壊されてしまったこともあった。破壊された施設は“木材”を使って修繕できた。ホッ。
■『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』が提案する
日本初のプレイアブルお披露目となった、今回の会場で体験できた範囲だけでも、『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』の魅力の片鱗を感じることができたように思う。ひとりプレイだけれど、全体に貢献するというオンライン要素があるという、とても新しいオンラインゲームの可能性を感じさせる作品だと思えた。また、共産主義的な世界観も、そうしたゲームのシステムとも通じる独自の表現となっており、まさにゲームというメディアならではの体験と表現が一体となった作品だといえるのではないだろうか。
■発売は秋……その前に、何か展開がある可能性も?
配信は秋を予定しているとのこと。じつは、本作はすでにアルファテストを行っていた。となると、βテストも開催される? そのあたりをディラン氏に直撃したところ、
■ディラン氏に直撃インタビュー!
「忙しいオンラインゲームに一石を投じる作品として」
たとえば、忙しいゲームでは拠点から拠点へはワープしたりするアイテムがあります。でもこのゲームでは、遠くの採掘場で働いて資源を得たら、帰りはたいていバス(電車?)のような乗り物に乗って、町まで戻ります。この乗り物も、実際にオープンワールドとして町の中を運行しているので、乗り損ねたらつぎまで待たなくてはなりません。この“待つ”という遊びがオンラインゲーム野中から生まれたということに、とてもワクワクしています。ちなみに、労働を役場に報告に行くのですが、このときも、役場に入るのには、ほかのプレイヤーたちといっしょに行列に並んで“待た”なくてはならない、なんて遊びも入れてあります。
「世界観設定秘話 泥のような地面と怪獣の意味」
「プレイヤーに感じてほしいのは、“自由”」
……あ、共産主義的で待たされるゲーム、などと聞くと『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』は、何か堅苦しいゲームのように感じてしまうかもしれませんね。でも、ぜんぜんそんなことはありません。というのも、オープンワールドなので、あなたは何をするのも“自由”です。まったく貢献しないで、好きなところにジェットパックで飛んで行ってもいい。実際わたしもテストプレイでは、まったく労働をせずに、遠くの山をひたすらピッケルで切り崩して道を作る、という遊びに熱中しています(笑)。
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