●プラチナゲームズはインディーデベロッパーの先駆け的存在
2015年7月11日、12日の2日間、京都・みやこめっせにて開催された、インディーゲームの祭典“BitSummit 2015”。ここでは、プラチナゲームズの稲葉敦志氏による講演の模様をお届けする。
登壇した稲葉氏がプロデューサーを務めるプラチナゲームズは、現在では約180名が所属する大手デベロッパーだ。しかし、設立当初からいわゆる他社の資本が入っていない独立したスタジオで、そうした点でいわゆるインディーのデベロッパーとして、今回の“BitSummit 2015”の講演に呼ばれたのだろう、と語った。
ご存知の通り、かつてはカプコンに所属していた稲葉氏。大手パブリッシャー、そしてインディーデベロッパーのそれぞれでプロデューサーを経験しており、今後はその培った経験をつぎの世代へときちんと伝えていかなければいけないと感じているそうだ。とくにインディーデベロッパーは、ひとりでたくさんの仕事をするケースが多く、稲葉氏の持つ経験が役に立つはずで、それは回り回ってゲーム業界の役に立つことだという認識を持っているとのこと。そうした業界全体を見据えた活動が、稲葉氏にとって、今後5年、10年くらいでの大きな役割かつ責任だという。
「もちろん引退はしませんよ」と笑う稲葉氏。「自分の持っているプロデューサーの椅子を渡すつもりはない」とも語るが、そもそもゲーム業界におけるプロデューサーやディレクターの椅子の数は、限られているのだそうだ。しかし、インディーの世界では、時にはユーザーの力を借りて、その椅子の数を増やすことができるのではないか、とインディーゲームの可能性を示唆し、そうしたことに、これまでの自身の経験を活かしたいのだという。
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●政治力があるパブリッシャー、リスクがあるデベロッパー
ここからは着席し、司会のBen Judd氏からのQ&Aスタイルで進行した。
司会のBen氏から、「日本のインディーメーカーはまだ数が少ないと思うが、なぜか?」と問われた稲葉氏は、その原因のひとつは日本の教育ではないかと語る。日本ではまだ、独立したり、新たに起業することへのマイナスイメージがあり、出る杭は打たれるようなこともいまだにあるのが原因と分析した。ただ、「そうした海外との土壌の差も、ここ5~10年で大きく変わってきたので、今後はもっと日本のインディーシーンは元気になるのではないか」と見ている。「独立する際にどういった点に苦労したか?」という質問には、デベロッパーなので、規模が大きくなればなるほど、会社を維持するリスクが高くなり、さらに、よほどのことがないと独自のIP(知的財産)を持つことはほとんどないという。この“苦しみ”は、デベロッパーになってみないとわからないとのこと。
稲葉氏は社内で、神谷英樹氏らと「あのジャンルのゲームには、まだこんな可能性がある」とか、「昔はこんなジャンルが流行ったけど、いまはないよね」と言った話を毎日のようにするのだそうだ。そういったアイデアをもとに、プラチナゲームズから新たなゲームを出したいと語ってくれた。
すでに、実績も十分のプラチナゲームズだが、ぜひ来年の“BitSummit”に出展してほしい……と、想像を早くも巡らせてしまった。その時が訪れたら、いったいどんなスゴイゲームを持ってきてくれるのだろうか? 想像するだけでワクワクしてしまう。
番外編/稲葉敦志氏が“BitSummit 2015”で気になったゲーム