中国国営の中国新聞社は13日、アニメ監督の宮崎駿さんが東京都内で同日に行った記者会見を伝えた。中国当局にとって「おおむね歓迎すべき」主張と思われるが、一部のニュアンスは「微妙」に変えた。
記事は、宮崎さんが普天間基地の移転に反対して、「辺野古基金」の共同代表に就任したことを紹介。宮崎さんの発言として「多くの沖縄県民は、基地をやめてほしいと願っている」と伝えた。
宮崎さんは、「軍事力で中国の膨張を止めることは不可能。もっと別の方法を(後略)」とも発言した。「膨張」との表現から、「中国の現状維持変更が問題を起こしている」との認識を示したと理解できる。
中国新聞社は「用軍事力量控制中国是不可能的,必須想其他方法」と伝えた。日本語に訳せば「軍事力を用いて中国を抑制するのは不可能だ。別の方法を考えねばならない」だ。「中国の膨張」の部分が読みとれない形にした。
**********
◆解説◆
中国の為政者は、自らの思惑を超えた大衆運動を強く警戒している。文化大革命時の「極めて苦い経験」が背景にあるとされる。胡錦濤政権時には過激な反日運動が発生したが、「政権が望んだものではなく、政権に揺さぶりを掛けるため、反対派の江沢民元国家主席が仕組んだ」との指摘がある。
反日運動は過激化しやすいため、当局にとって「日本人の中にも、中国の主張を支持する勢力がある」との報道は、むしろ都合がよい。中国にも「宮崎作品」のファンは多く、宮崎さんによる発言は極めて好都合だ。
中国当局は安倍政権の外交・軍事政策に強く反発しており、「宮崎氏のような著名人物も安倍首相の方針には反対」と強調することは、国民に対して「自らの主張は正しい」とのイメージを高める効果もある。
ただし、「中国が膨張していることを前提に発言した」ことを伝えるのは都合が悪いとの判断が、ニュアンス変更の背景にあった可能性がある。(編集担当:如月隼人)(写真は中国新聞社の上記記事掲載頁キャプチャー)