「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録され、注目の渦中にある軍艦島。韓国政府が世界遺産登録に反対したことからもわかるように、韓国にとって軍艦島は、第二次世界大戦時に「朝鮮人労働者が強制徴用を強いられた場所」として認識されている。いわば、“日韓の遺恨”の象徴といえる場所だ。タイミングがあまりにハマりすぎているが、現在韓国では、そんな軍艦島をテーマにした映画の企画が進行中だという。
“軍艦島映画”のメガホンを取るのは、リュ・スンワン監督。彼は、『JSA』のパク・チャヌク監督の演出部で働き、2000年に発表したインディーズ映画『ダイ・バッド 死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか』が評価され、のし上がってきた監督。その後、自身の弟で俳優のリュ・スンボムを主演に迎えた『ARAHANアラハン』(04年)、『クライング・フィスト』(05年)、『相棒シティ・オブ・バイオレンス』(06年)、『生き残るための3つの取引』(10年)などで実力を発揮。その手腕を見込まれて挑んだ初の大作『ベルリンファイル』(13年)は、日本でも記憶に新しい人も多いのでは。いまや韓国を代表する監督の一人といってもいい人物で、ちょうど8月5日から韓国で新作『ベテラン(原題)』公開されることでも話題になっている。そんなリュ監督自らが、軍艦島映画を企画したという。
リュ監督は『ベテラン』の準備段階前から、強制徴用を取り扱った小説の作家に会うなどしながら軍艦島映画の脚本を執筆してきたそうだ。そもそも彼は、長らく第二次大戦当時の日本と韓国をテーマにした作品を作ることを計画していた。実際に『ベルリンファイル』の後、1940年代の強制徴用をテーマにしたテレビドラマ『黎明の瞳』(1991年に放送)を映画化するために、同ドラマの脚本家を訪ねたりもしていたという。
軍艦島映画のキャストや詳しい公開日はまだ明らかになっていないが、さまざまな韓国メディアの報道を総合すると、あらすじは「第二次世界大戦中、韓国の重要人物が強制徴用で軍艦島に連行された。彼らを救出するためにアメリカの特務機関、諜報機関である“OSS”と韓国が手を組んで、日本軍と闘う……」というもの。これを聞く限り、日本を悪者扱いする映画になることだけは間違いないのかもしれない。
軍艦島の世界遺産登録を受けて、軍艦島映画の企画は今後、本格始動していく予定だ。日本では劇場公開されそうもないが、日本人が抱く軍艦島像とは、まったく異なる姿が描き出されることになりそうだ。