Logicool Gの新型ステアリングコントローラ「G29」ファーストインプレッション。「G27」から何が変わった?

 2015年6月25日,Logitech International(以下,Logitech)と,その日本法人であるロジクールのゲーマー向け周辺機器ブランドであるLogitech G(日本ではLogicool G)から,新しいステアリングコントローラ「

G29 Driving Force Racing Wheel

」(国内製品名:G29 ドライビングフォース,以下 G29)と,6速シフトレバーを追加するオプション「

Driving Force Shifter

」(国内製品名:ドライビングフォース シフター,以下6速シフター)が発売になった。

 世界規模でLogitech/ロジクールがブランドロゴを刷新した7月8日(

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)よりも早く,新しいLogicool Gロゴとともに日本市場でだけ,どういう訳か先行販売が始まった本製品。筆者も世界市場における発売に先立って入手できたので,まずはファーストインプレッションとして,新製品の使用感をお届けしてみたい。

G27から変わっていないように見えて,いろいろ変わっているG29

 基本的な話をしておくと,G29は,国内でPS3用として販売されていたステアリングコントローラ「

G27 Racing Wheel

」(以下 G27)の後継となる,2ピース仕様の製品だ。当時のロジクールは,海外市場では正式にサポートされ,ドライバも提供されていたPCを,G27の正式対応プラットフォームに入れないという,残念なスタンスをとっていたが,Logitech G/Logicool Gを本格展開している現在は,もちろんPCも最初からG29のサポート対象となっている。PCとPlayStation 4(以下,PS4),PlayStation 3(以下,PS3)が,正式なサポート対象だ。

 ただし,世界市場におけるG29の発売が7月9日以降になる関係から,原稿執筆時点でPC用のドライバは用意されていないため,今回はPS4およびPS3における使用感を語ることになる。この点はご了承を。

 さて,そのステアリング部だが,「ステアリングコントローラ本体ユニット」として見た場合,デザインや取り付け用クランプの仕様などはG27とほとんど同じ。ステアリングホイールが280mm径で,本革で巻かれているという点もG27から変わっていない。

 ただ,細かく見てみると,G29では,以下の3点がG27とは異なっている。

  1. ステアリングの下辺が直線の,いわゆるDシェイプとなっており,ペダル操作のとき足の邪魔になりにくくなった
  2. PS4純正ゲームパッド「DUALSHOCK 4」およびPS3純正ゲームパッド「DUALSHOCK 3」のボタンがすべて搭載された(※PS4のタッチパッドは用意されない)
  3. グランツーリスモ5」公式ライセンス取得済み製品として発売された1ピース型ステアリングコントローラ「Driving Force GT」にあった[+]/[−]ボタンと「Realtime Adjustment Dial」(リアルタイムアジャストメントダイヤル,以下カタカナ表記)が搭載された

 このなかでも重要だと感じられたのは2.と3.で,感覚としては,PS3時代にあった2つのステアリングコントローラを1つに統合したのがG29,といったところだ。

 G27の場合,3ピース構造だったこともあって,DUALSHOCK 3相当のボタンはステアリングユニット部とシフター部に散っていたのが,G29では,ステアリングから大きく手を離すことなくすべてのボタンを操作できるようになっている。

 また個人的には,[+]/[−]ボタンとリアルタイムアジャストメントダイヤルが,PS3版「グランツーリスモ6」で利用できたのがありがたかった。

 グランツーリスモ6の場合,走行中にリアルタイムアジャストメントダイヤル中央のエンターボタンを押すと,プレイ画面上にトラクションコントロール(TCS)とアンチロックブレーキシステム(ABS),前後のブレーキバランスなどといった選択メニューを表示できる。その状態から[+]/[−]ボタンで項目を選択し,リアルタイムアジャストメントダイヤルを左右にクルクル回すことで項目の数値を変えられるのだ。TCSが効き過ぎたり,前後のブレーキバランスが悪いと感じたりしたとき,ステアリングから手を離したり,視線を外したりすることなく,微調整を行えるわけである。

 なお,Logitech/ロジクールによると,ステアリング内部のメカニカルな部分では,遊びのない,いわゆるノーバックラッシュ仕様のヘリカルギア(※ヘリカルギヤ,はすば歯車ともいう。歯を傾斜させることで“噛み合い率”を高めたタイプのギア)を採用することで振動や騒音を軽減できているとのことだ。ただ,ファーストインプレッションの時点における印象だと,ガタツキの軽減は感じられたものの,動作音の低減は聞き分けられなかった。

 一方,振動や反力を表現するフォースフィードバック(以下,FFB)の精度向上には驚かされた。

 G29でも,G27と変わらず,2基のモーターによるFFBが実現されているのだが,グランツリースモ6の同一コース&同一マシンでG29とG27を使い比べてみると,G27では「ガツン」「グイグイ」と,機械的で突然の力がかかるような振動や反力が伝わってくるのに対し,

G29では細かい振動や微妙な反力が伝わってきて,マシン挙動の変化を掴みやすい

のだ。

 モーターの出力が上がったためか,FFBの挙動を制御するプロセッサの性能が上がったためか,ノーバック仕様のヘリカルギアを採用したことでダイレクト感が向上したためか,それらの複合的な要因によるものかは分からないが,いずれにせよ,大変好ましい。

 ペダル部の仕様は,ペダルカバーを左右5mmずつ水平移動させられる点も含め,G27とまったく同じ。違うのは,各ペダル裏にある,シリンダーをモチーフにしたプラパーツが赤から黒になっていることくらいだ。

 ペダルのうち,アクセルとクラッチはG27と同じテンションで,柔らかく楽に踏み込める。ただ,ブレーキだけは踏み込みのストロークが変更されており,踏み始めから1cm程度まではG27と同じテンションで軽く踏み込めるものの,それ以上は強いテンションがかかって,踏み込むのにかなり強い力が必要になった。要するに,感圧式ブレーキペダルが再現されているわけである。

 G27だと全般に柔らかかったため,ブレーキがロックするかしないかのところを慎重に探りながらのブレーキ操作が必要だったのに対し,G29だと,ブレーキのストローク幅自体は狭くなりながらも,強めのブレーキが必要なところではしっかり踏む必要があるなど,実車のようなフィーリングが味わえる。この変更がもたらす「ブレーキコントロールの楽しさ」は,明らかにG27より一段上だ。

 最後に,G27では同梱されていたのに,G29で別売りとなった点で評価が分かれそうな6速シフターだが,G27で用意されていたボタン類がすべて省略され,シフトレバーのみになったことで,全体のシルエットはとてもすっきりした。公称サイズもG27付属のものが140(W)×260(D)×210(H)mmなのに対し,今回の別売り6速シフターは同146.4(W)×176.4(D)×206.5(H)mmと,奥行きが明らかにコンパクト化している。

 一方,レバーの構造自体はG27から大きな変更がないようだ。カコンカコンと気持ちいいシフトフィーリングが得られる点は,少なくともファーストインプレッションの時点では変わっていないように感じられた。

 最後に価格と,重要なポイントにも触れておきたい。

 まず価格だが,G27の直販価格は3万8880円(税込)で,実勢価格は3万6000〜3万9000円程度(※2015年7月9日現在)。それに対してG29はステアリングとペダルだけで直販価格が

5万7240円(税込)

,別売りの6速シフターが同

7560円(税込)

なので,揃えると合計

6万4800円(税込)

だ。2倍というと語弊があるが,かなり2倍に近い価格設定であり,正直,調べてみて筆者は相当に驚いた。

 確かに操作性や機能性は向上しているが,この価格に臆する人はけっこういそうな感じである。

 そして重要なポイントだが,何かというと,PS3への対応周りだ。ここまであえて書いてこなかったのだが,G29をPS3と接続した場合,クラッチペダルは機能せず,また,別売りの6速シフターは動作しない。マニュアルにも書いてあるので,テストのミスではなく,こういう仕様である。「新世代のステアリングコントローラなのだから,PCとPS4で使えれば十分」という意見はあるかもしれないが,価格が大幅に上がっているにもかかわらず,PS3への対応がおざなりになっているのは,マイナス要素として指摘しておく必要があるだろう。

 というわけで,今回は取り急ぎの紹介と,ざっと使ってみての感想のみとなったが,PC版対応のドライバを入手した時点で,PlayStationプラットフォームだけでなく,PCでも使ってみたレビューをお届けしたいと思う。お楽しみに。

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