名古屋市で2010年、指定暴力団山口組系の組員らがみかじめ料の支払いを拒むキャバクラに放火した事件で、死亡した従業員(当時27)の両親が山口組の篠田建市(通称・司忍)組長(73)ら計5人を相手取り、約1億6千万円の損害賠償を求めた訴訟が14日、名古屋地裁で和解したことがわかった。山口組の組長らが7月末までに連帯して1億円を支払うことで決着した。
08年に改正された暴力団対策法は、組員が資金獲得のために市民を脅したり、負傷させたりした場合、組トップの責任を問えるとしている。全国最大勢力の山口組の最高幹部らが、多額の和解金を支払うのは珍しく、今回の和解は末端の組員による犯行の責任を組織として事実上認めたことになる。
事件は10年9月3日未明に発生。実行役2人が、名古屋市中村区椿町のキャバクラ「インフィニティ」に押し入ってガソリンに火をつけ、従業員の佐野方紀さん=愛知県知立市=を死亡させたというもの。2人は翌年、殺人や現住建造物等放火容疑で逮捕され、組幹部(50)は無期懲役、組員(38)は懲役30年の判決を受け、すでに確定している。
佐野さんの両親が13年5月、放火殺人の実行役2人のほか、使用者責任があるとして上部組織に当たる山口組の篠田組長とナンバー2の高山清司若頭(67)ら幹部を提訴。慰謝料約8千万円や死亡逸失利益約5千万円など計約1億6千万円の支払いを求めていた。