みなさん、職務質問をされたことはありますか? 私事で恐縮ですが数度の経験がある筆者、その話を周りにしたところ、同意してくれた人はいたものの、職務質問されたことなんて一度もないという人も多数。この違いは何? 職質されやすいタイプでもあるのでしょうか。
痛くもない腹を探られるのは気分がいいものではありませんからね、そこでアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に、まずは職務質問に遭いやすい外見から聞いてみました。
「服装では季節感のなさがポイントになるでしょう。例えば真夏の炎天下に長そでを着こんでいる、黒っぽい服に身を包んでいるというケースです。これは、覚せい剤等の薬物の注射痕を隠すため、または指名手配中であるので特徴的な刺青(いれずみ)を隠すためにそうした服装をしていると疑われることにつながりますね。次に仕草、うつむきがちであったり、けげんそうな表情、警察と目が合うと変に目をそらすとか、方向転換したりも疑われることになります」
真夏に黒い長そでぐらいなら、オシャレでやっている人もいるでしょうし、気持ちが落ち込んでいればうつむきがちで歩きますよね…。他に外見上の特徴はありますか?
「秋葉原の連続通り魔事件以降は“オタク系”を思わせる格好も要チェック対象のようです。また、中東系を思わせる目鼻立ちのハッキリした人も職務質問の可能性が上がるでしょうね。薬物売買には中東系の人が絡んでいることが多く、特に繁華街などでは警察は目を光らせています。また、以前はスーツ姿はちゃんとした身なりと認識され、職務質問に遭いにくいというのが定説だったのですが、それを逆手にとり、窃盗犯がスーツ姿で現場の下見に行くことが増えてきました。そのため、ピシッとスーツで決めていても、職質に遭いにくいとは言えなくなっています」
う~ん、筆者にはどれも当てはまる要素がないのですが…。そもそも、職務質問って何を根拠にされているものなのでしょうか?
「それは警察官職務執行法(警職法)の2条にあります。平たくいうと『何らかの罪を犯した、あるいは犯そうとしている。または既に起きたか、これから起きる犯罪に対して何か知っていると思われる人』は停止させて質問ができる、というものです」
「思われる」って要するに現場のお巡りさんの勘でしかないですね。これはもうどうしようもない話なのか…。では職務質問に遭った場合、どのように対応するのがよいのでしょうか。それは素直に従うのがよいのでしょうけれど。
「よく『職務質問は任意だから、拒否してもいい』と言われたりもしているようですね。しかし、先ほどの条文の適用も任意で行うという原則はあるものの、『任意とはいえど、場合によってはある程度の有形力を行使することは適法』という趣旨の判例も出ています。最終的にはケースバイケースですが、拒否するほどに警察側に有形力を行使する理由を与えることになります。後ろ暗いところがないのであればなおのこと、職務質問に素直に協力しないのはあまり意味がない抵抗に思われます」
警察手帳を見せてくれ、というのはどうなのでしょうか?
「それは要求していいと思いますよ。国家公安委員会規則で、警察は警察手帳の提示義務がありますから。職務質問の際は提示要求があれば応じなくてはならない。というような警察組織内でのルールはあります。ただし、これは法律ではなくてあくまで内部の決まりでしかないので、仮に見せることを渋られることがあっても『法律違反だ!』と騒ぐのはちょっと話が違うんですね。もっとも、そういう事案があれば警察内で処分なり注意なりは与えられるでしょうけれど」
ここまでお話を聞いても、どこか悶々としたものが残ってしまうのですが…。そう正直に話したところ、岩沙先生から最後にこのような言葉が。
「『なんら罪を犯してもいないのに5分なりでも時間もとられ、なにより無実なのに警察に疑われた自分は被害者』という目線に立ってしまうと、職務質問には悪いイメージしか持てないでしょう。しかし、職務質問がなければ犯罪者が常に野放しになっているわけですから、そこは素直に協力するのが賢明な判断なのではないでしょうか」
善良な我々は、職務質問の価値ある「ハズレ」ってことでしょうかね。それが治安維持に役立っていると思えば納得できそう、です。
※当記事は2015年07月31日に掲載されたものであり、掲載内容はその時点の情報です。時間の経過と共に情報が変化していることもあります。