毎日新聞 8月2日(日)10時30分配信
携帯電話料金は高い!とお嘆きの人は多いだろう。スマートフォンユーザーなら、
基本料金(音声かけ放題、2年縛り)+データ通信料金で、少なくとも月7000円はかかる。
では、日本の携帯電話料金は国際的に見て高いのか、安いのか。
野村総研上席コンサルタントで情報通信政策に詳しい北俊一さんがリポートする。
◇ガラケーは最高ロンドン6000円の4分の1
7月29日、総務省が2014年度の「電気通信サービス内外価格差調査」を公表した。毎年、携帯電話、
固定ブロードバンド、固定電話などの電気通信サービスごとに、世界主要7都市(東京、ニューヨーク、
ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ストックホルム、ソウル)の料金を比べ、公表している。
調査対象は、各都市で最も市場シェアの高い携帯電話会社の料金だ。ちなみに、為替だけでなく、
各国の物価水準を考慮した「購買力平価」で換算、算出している。
まずフィーチャーフォン(ガラケー)の調査結果を見てみよう。13年度の日本の音声通信利用状況から導出した
「1カ月73分」の通話料金を比べると、東京は1622円で、ストックホルムの1214円に次いで2番目に安い。
最も高いロンドンは6093円だ。12、13年度も同じ順位であり、日本は音声通話中心のフィーチャーフォンユーザーにとって、
お得な国と言える。
一方、スマートフォンについては音声通話1カ月36分、メール1カ月129通に加え、データ利用量1カ月2ギガバイト(GB)、
5GB、7GBの3ケースで比較した。東京の順位はそれぞれ4位、5位、5位となった。例えば2GBでは、
東京の7022円に対し、最安のストックホルムで4424円、最高のニューヨークでは1万601円だ。
スマホユーザーにとって、日本は取り立てて高くもなければ安くもない、という結果になった。
結果の受け止め方は人によって大きく異なるだろう。内外価格調査は、正味の電気通信サービス料金だけで、
対象端末の割賦代金や、「月々サポート」などの割引、MNP(Mobile Number Portability)に伴う各種キャッシュバック、
キャンペーンによる割引が加味されていないからだ。
また、「dマーケット」「スマートパス」などのアプリや、端末補償サービスなどのオプション料金も加味されていない。
さらに、最近では家族でデータをシェアするプラン、タブレットなどの複数回線契約、固定ブロードバンドとの
セット割も普及しつつある。多かれ少なかれ、各国、各キャリアも似たような状況にあり、もはやユーザーにとって、
携帯電話1契約あたりの正味の通信料金を国際比較することの意義は、薄れているのではないだろうか。
◇望まれるシンプルな料金体系
実際、NTTドコモは7月29日、15年度第1四半期決算発表で、重要な経営指標の一つである
ARPU(Average Revenue per Unit=1契約あたりの月間平均収入)の定義を刷新すると発表した。
固定ブロードバンドサービスである「ドコモ光」の提供開始に伴い、データARPUの内訳を
「パケットARPU+ドコモ光ARPU」とし、「ドコモ光」のサービス収入を加えることとした。また、
1人複数回線契約が拡大していることに対応し、ARPU算出時の分母を、従来の「契約数」から
「利用者数」に変えた。ARPUの“U”は今後、UnitからUserに変わる。
技術やサービスの革新に加え、事業者間競争の激しい通信市場では、新料金プランやセット割引、
キャンペーンなどがめまぐるしく変化し、今後も止まることはないだろう。このままでは、
変化についていけないユーザーがますます増え、料金に対する不満やトラブルが増加していくだろう。
しかし、逆にユーザーの理解が進めば、通信料金を漫然と「高い」と感じるユーザーは減るはずだ。
今後通信事業者の間で、よりシンプルで分かりやすい料金プランへの移行競争が巻き起こることを期待したい。
そのためには消費者が、MVNO(仮想移動体通信事業者)を含めて誠実で、
分かりやすい料金体系の通信事業者を選ぶことが求められている。