クレーンを動かして目当ての景品を狙うクレーンゲーム。「あの人形がほしい」と彼女にねだられて、クレーンゲームに何度もチャレンジしたという経験がある人もいるだろう。そんなクレーンゲームについて「景品が100%取れない置き方になっている」という投稿が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
投稿者によると、投稿者が通うゲームセンターのクレーンゲームでは、景品をつかむ「アーム」の力が弱いため、景品に触ることしかできず、つかんだり押したりすることがまったくできないそうだ。投稿者は「たくさんお金を払い、少しずつ店員に動かしてもらいながら取ると言う構図」があるとして、「店員の力を借りなければ取れません」と憤っている。
さらに、「取れないなら詐欺ではないのか」とまで考えているそうだが、クレーンゲームの設定が、景品を全くゲットできない、もしくは非常に困難という場合、詐欺などにはあたらないのだろうか。消費者問題に詳しい大村真司弁護士に聞いた。
●詐欺罪にはあたらない「少なくとも、詐欺罪には該当しないと思います」
大村弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。
「詐欺罪は、欺罔行為(相手を騙す行為)があり、それを信用した人が、事実だと信じたことを理由に金品等を交付した時に成立します。
少し前に、祭りの露店のくじ引きで、当たりくじがなかったことを理由に詐欺罪で逮捕されたというニュースがありました。
くじ引きでは、確率が低いとはいえ、当たりくじが入っているのが前提です。はずれしかなければまさに詐欺罪に該当することになります」
景品をとれないクレーンゲームは、同様に考えることができないのか。
「クレーンゲームの場合は、別の考慮が必要です。
というのも、そもそも景品を取ることが『絶対無理』と本当に言い切れるのか、かなり疑問です。
また、一見して難しいことは、配置などで分かる場合が多く、『騙す』とはいえない場合が多いでしょう。一見して難しそうなら、消費者はゲームに挑戦しないという選択も取れるわけです。
もっとも、『アームの力が極端に弱い』という点については、ピクリとも動かせないようなものであれば、1回目、またはアームの力を確認できるまでは、人を欺く行為(欺罔行為)に該当する余地が絶対にないとはいえません。
しかし、何度も繰り返す場合には、本人はアームの力が弱いことをわかった上でお金をつぎ込んでいるわけですから、やはり騙されているとはいえないでしょう。
阿漕(アコギ)だという批判はあるとは思いますが、商品価値的に、ある程度の金額をかけてもらわないと元が取れないはずですから、やむを得ない部分もあるでしょう。
少なくとも詐欺罪には該当しないと思います」
大村弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。日弁連消費者問題対策委員会委員、広島弁護士会 非弁・業務広告調査委員会委員長、消費者委員会委員、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員
事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com