もうコンデジはいらない!?
パナソニックから登場したスマートフォン+コンデジの合作ともいえる新スマートフォン「CM1」。その画質や使い勝手はどうなのか、GizmodoのMichael Hession記者が作例と一緒にレビューしてくれました。
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ほとんどの人はスマートフォンのカメラの画質に満足していると思います。でも、フォトグラファーや写真を趣味にする人など、そうでない人もいるんです。iPhone 6のカメラでさえ、彼らを満足させることはできません。でも、パナソニックの新スマートフォン「CM1」なら、満足させられる可能性があります。
1,000ドル(約12万3000円)する、4.7インチ・フルHD解像度ディスプレイと2.3GHzのクアッドコアプロセッサ、それに素晴らしいカメラを搭載したスマートフォン。
あるいは、1インチセンサーと焦点距離28mm、f値2.8のレンズを搭載したミッドレンジのスマートフォン。
どちらにしろ、CM1は高性能なカメラとスマートフォンの融合体です。以前にはサムスンからGalaxy Cameraなんて似たような機種もありましたが、1/2.3センサーを搭載し通話も事実上できなかったGalaxy Cameraとは比べ物になりません。
CM1のデザインは悪くないです。また高性能なカメラを搭載していることを考えれば、非常に薄く仕上がっています。ただ、厚さを考えるとちょっと普段使いはしづらいかも? ポケットに入れた時もスマートフォンというよりもカメラを持ち運んでいるって感じです。この感覚はカメラ撮影時にレンズがせり出すとさらに強くなります。もちろんポケットの中でレンズが動作したりはしないんですが…。
CM1とiPhone 6の比較。やっぱり結構厚さは違います。
CM1の操作はシャッタースイッチなどの本体のスイッチで行なえます。またレンズ周りのリングでも操作できるんですが、この操作感はいい感じ。ただし、レンズリングなどの素材の質感はひどくチープで、まるで紙やすりを触っているようでした。
こういう合体系のデバイスで気になるのは、どんな妥協があったのか。しかし画質において、CM1にそのような妥協はありませんでした。CM1に搭載されている1インチセンサーは、ソニーのRX100などプレミアムコンパクトデジタルカメラに搭載されているものと同サイズ。iPhone 6の1/3インチセンサーと比べると、より精密でより正確な色、そして暗い現場でもより低ノイズな写真を取ることができます。
ローライト環境での撮影:CM1はISO 1600で撮影。
撮影写真をクロップ。確かにCM1の画はより精細で、RAW撮影時にはその性能が際立っています。
また、CM1の大きなセンサーはより背景をコントロールすることができる…つまり、ボケを活かした写真を撮ることができます。
しかし、CM1がRX100に肩を並べるかといえばそうではありません。その理由はレンズ。撮影した写真にはケラレが見受けられたり、ディテールでもRX 100 M4に比べると少し劣るものでした。
下の写真はiPhone 6、CM1、RX100 M4の拡大画像。画像上にある煉瓦の建物を見るとわかりますが、やっぱりCM1はRX100 M4には及びません。
写真はJPGでの保存も可能ですが、RAW画像で保存すれば画像編集にも適したずっと高画質な画像が保存できます。生成される2,000万画素の静止画のファイルサイズは大きく、16GBの内蔵ストレージは手狭です。そんな時は外部ストレージを利用しましょう。
CM1で最も残念なポイントといえば、RAWとJPGを同時保存しようとすると5秒ぐらいの長い保存時間が必要なことです。これは正直実用的じゃない…。本気で撮るときはRAW、SNSサービス用にはJPGと切り替える必要がありそうです。
カメラのインターフェイスは正直ごちゃごちゃしています。ほとんどの設定は簡単にアクセスできますが、UIのデザインが酷い。きっとカメラのUIに慣れていない人は混乱してしまうでしょう。サードパーティ製のカメラアプリを使うこともできますが、それらはCM1の機能にすべて対応しているわけではありません。パナソニックの純正アプリなら撮影モード、フォーカスの設定などが変更可能です。
Instagramなどのアプリからも写真は取れますが、結局は純正のアプリを使うことになるんじゃないでしょうか。
CM1の動画撮影機能は貧弱です。iPhone 6よりもダメなんじゃないかな? フォーカスもよくありません。また搭載するAndroidは出荷時はKit Katなものの、最新のLollipopの配信が開始されています。
正直に告白すると、私はiPhoneユーザーでAndroidスマートフォンにはあまり馴染みがありません。でもCM1の操作感は良かったし、他のスマートフォンのエキスパートにもCM1の動作の軽快さはかなり好評でした。さらに、UIやスキンがゴテゴテしてなく素のAndroidに近いのも好感触。これはパナソニックの判断が正しかったってことでしょう。
なら文句はないか、といわれるとそうでもありません。例えば、バッテリーの持ち時間がかなり短い。1日使うと残りバッテリー残量が25%くらいになってしまいます。新品でこれなんですから、数ヶ月使った後にどうなるか…ちょっと考えたくありません。
大体において素晴らしいカメラを持ち運べ、いつでも画像を編集しSNSなどに投稿することができること。
ハードウェアは最新とはいえず、時代遅れ。1000ドルのスマートフォンと考えると、うーん…。
このスマートフォンのアイディアは素晴らしいと思います。しかし、心からお勧めできる1,000ドルのスマートフォンかというと、どうですかね。バッテリーの持ちやカメラのインターフェイス、ハードウェアのスペックなど、疑問に思うポイントもいくつかあります。結論として、カメラなど見るべき点はあるものの使いにくいスマートフォン、と言わざるを得ません。
なんせ、もっと高性能なSIMフリーiPhone 6の値段が850ドル(約10万5000円)ですからね。キャリアと契約すれば、さらにずっと安く手に入れることも可能です。
最近のカメラの実用的な寿命は3年から5年。しかし、スマートフォンは2年も経てば時代遅れです。つまり、スマートフォンに高性能なカメラを搭載しても、その陳腐化はカメラよりもずっと早い…CM1はそのジレンマがあるからこそ、実用的だと断言することができないのです。
Michael Hession - Gizmodo US[原文]
(塚本直樹)