自衛隊は今、変革期を迎えている。防衛省は軍拡を推し進める中国の脅威などを念頭に「統合機動防衛力」の構築を掲げた(2013年防衛大綱ほか)。陸・海・空の各自衛隊が連動して事態に対処する態勢の構築を目指す。そのコンセプトは、自衛隊の最新兵器にも貫かれている。
「統合機動防衛力」構想の実現には、全国7か所の師団・旅団で予定される「即応機動連隊」新設などの部隊改編とともに、その装備が鍵となる。軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏が語る。
「最新装備の数々からも、自衛隊の防衛構想を知ることができます。例えば、海上自衛隊の最新護衛艦『いずも』には哨戒ヘリコプターなど最大14機が搭載できる。ローテーションにより24時間体制で哨戒活動が可能となり、他国の潜水艦が領海侵入しても切れ目なく追尾することができます。おのずと、日本のシーレーン(海上輸送路)防衛能力を高めることになります」
全長248mで海自最大の護衛艦である「いずも」はいわゆる“ヘリ空母”とされるが、航空機の滑走路にもなる「全通甲板」を備えており、見た目は通常の空母と変わらない。これに輸送機オスプレイを搭載すれば、島嶼防衛における洋上の拠点として役割を果たすことになる。
そもそも航続距離の長いオスプレイは、任務を完遂して帰還する「戦闘行動半径」も従来のヘリより広い。沖縄から尖閣諸島までなら一回の給油で飛ぶことが十分可能だ。これを「いずも」で運用すれば、実質的な移動制限は撤廃される。「いずも」型は2隻目が現在建造中で、さらに、同じく全通甲板を持つ“ヘリ空母”「ひゅうが」型2隻が就役済み。日本の領海を守る体制が固まりつつある。
防衛省はさらに、尖閣諸島など離島が侵略されたケースを想定。「離島奪還」を主任務とする日本版海兵隊「水陸機動団」の新設を予定している。その中核装備が、アメリカから52両購入する水陸両用車「AAV7」である。
今年2月の日米共同訓練「アイアン・フィスト」では、離島防衛のエキスパートである陸上自衛隊西部方面普通科連隊(西普連)が初めて「AAV7」を用いた訓練を行った。最大で25人の兵士を運ぶことができ、“奪還作戦”では沖合に停泊した母艦から水上を航行し、そのまま上陸して作戦を遂行する。母艦となる輸送艦「おおすみ」型は現在、オスプレイやAAV7を運ぶための改修が行われている最中だ。
※SAPIO2015年8月号