【イスマイリア(エジプト)時事】地中海と紅海をつなぐスエズ運河の一部を拡幅・複線化する「新運河」の工事が完了し、エジプト北東部イスマイリアで6日、竣工(しゅんこう)式典が催された。エジプト政府は、物流活性化による経済効果と通航料収入の増加を期待している。
工事区間は72キロで、うち約半分は既存の運河を拡幅し、残り半分はバイパス運河を新たに掘削。船がすれ違うことのできる区間を伸ばすことで「通過待ち」が減り、通航に要する時間が大幅に短縮される。スエズ運河庁は、2023年までに通航船舶が現在の1日平均49隻から97隻に、通航料収入が年53億ドル(約6600億円)から132億ドル(約1兆6400億円)に増えると見込んでいる。
エジプトは11年のムバラク独裁政権崩壊後、政情不安が続き、主要外貨獲得源の観光産業が打撃を受けた。シシ大統領は就任2カ月後の昨年8月に新運河建設を発表。国家の威信を懸けたプロジェクトと位置付け、着工から1年弱で完成にこぎ着けた。
シシ大統領は式典で演説し、新運河は「全世界への贈り物だ」と宣言。運河に隣接するシナイ半島で過激派組織「イスラム国」傘下の武装勢力によるテロが相次ぎ、軍が大規模掃討作戦を展開していることを踏まえ、「われわれはテロリストと戦い、打ち負かす」と表明した。
式典にはフランスのオランド大統領、ヨルダンのアブドラ国王、パレスチナ自治政府のアッバス議長ら内外の要人も出席。会場周辺は、武装した兵士が配置されるなど厳重な警備態勢が敷かれた。