「内部統制の有効性に関して確認すべき事項を発見」健康・美容メディア運営のリッチメディアが上場取り消し | TechCrunch Japan

東京証券取引所(東証)は8月6日、東証マザーズ市場への新規上場を承認したリッチメディアの上場承認を取り消した。東証では「同社の取締役会において、予定していた新株式発行及び株式売出しの中止が決議され、有価証券上場規程に定める形式要件を満たさないこととなったため」と説明している。

リッチメディアは「ヘルスケア大学」をはじめとする健康・美容情報を取り扱うメディアのほか、ヘアサロン予約サービス「Kamimado」、ヘアスナップSNS「HAIR」などを展開している。これまでにリンクアンドモチベーションやKDDI、日本アジア投資、みずほキャピタルなどが出資をしている。7月6日に上場が承認され、上場を8月10日に控えていた。

ではなぜリッチメディアは上場の要件を満たせなくなったのか? 同社コーポレートサイトでは、以下のようなアナウンスがされている。

平成 27 年7月6日及び平成 27 年 7 月 17 日開催の各当社取締役会において、当社普通株式の株式会社東京証券取引所マザーズへの上場に伴う募集株式発行並びに株式売出しについて決議いたしましたが、当社内部統制の有効性に関して確認すべき事項が発見され、本日開催の当社取締役会において、当該確認に時間を要するものと判断したことから、募集株式発行並びに株式売出しの中止と、それに伴う上場手続きの延期を決議いたしましたので、お知らせ申し上げます。

なお、今後の上場手続きの再開時期につきましては、当該確認の結果を踏まえ、状況を慎重に見極めたうえで総合的に判断する予定です。

こういったケースはそうあるわけではないが、例えば2012年にはジャパンケーブルキャストが「コンプライアンス体制の有効性に関して確認すべき事項が発見され、当該確認に時間を要するものと判断した」として、同様に上場を取り消している。

リッチメディアの発表では「内部統制の有効性に関して確認すべき事項」があったということなので、財務報告の信頼性や法令遵守などに関わる課題が出てきたと見るのが妥当だろうか。

ここからはリッチメディアの話ではないが、これまでに上場を承認された会社が上場を見送ることになったケースについて紹介しておく。

まずは雇用や労働に関する課題が上場承認後に見つかるケースがある。上場審査の過程では、コーポレートガバナンスや内部管理体制の有効性などが厳しく審査される。しかしその審査を通過しても、あとから元従業員が「以前にこの会社パワハラを受けた」「賃金の未払いがある」なんて内容のメールやファックスが証券取引所や主幹事証券会社に送ればどうなるだろうか。その体制の見直しが求められるだろう。

また、事業上のトラブルに起因するケースもある。2006年にはゲームオンが上場を取り消しているのだが、この背景には顧客情報流出事件があった。同社は上場の約1カ月前、自社で運営していたゲーム情報ポータルサイトにおいて、新規登録ユーザーに対して、本人のメールアドレスとパスワードに加えて他のユーザーのメールアドレス・パスワードを記載したメールを送ってしまい、3900件近い情報が流出したのだという。これを受けて「内容を確認するとともに、投資家に周知徹底することが必要と判断した」とアナウンスし、上場をいったん取り消すことになった。ほかにも2011〜2012年には、東日本大震災や当時の市場状況を鑑みて上場を中止するというケースもあった。

上場後に株価が上がらない企業を揶揄して「上場ゴール」なんて言うことが増えたが、そもそも上場自体が大変なことを忘れてはいけない。市場と向き合うには信頼性や健全性が求められるということだろう。