パリの隠れ人気スポット「下水道博物館」で華麗なる“臭い”を体験 | ニコニコニュース

パリ下水道博物館(Musée des Égouts de Paris)
日刊サイゾー

「せっかくパリに来たのだから」と、観光客は本場のフランス料理に舌鼓を打つ。あるいは、映画『アメリ』のように、小じゃれたカフェでクレームブリュレを割りながら、その甘さにうっとりとするだろう。美食の街パリでは、世界中の人々がおしゃれな味わいを楽しんでいるのだ。

 けれども、口に入れたら当然、下から出さなければならない。

 もちろん、多くの観光客は、そんな自分のカラダから出た「フランス料理の残骸」たちには無頓着。だが、もしもあなたが本当にフランス料理を心から愛する人ならば、ぜひ「パリ下水道博物館(Musée des Égouts de Paris)」に行ってほしい。そこでは、おしゃれなパリジャンやパリジェンヌたちが排出した下水をその目で見ることができるのだ。

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 美しいパリの街並みやエッフェル塔が一望できるアルマ橋を通り過ぎると、すでにプ~ンと不穏な臭いが漂ってきて、来館者の期待(?)は高まるばかり……。てっきり人もまばらなB級施設かと思いきや、開館前から十数人が列をなしている、ちょっとした人気スポットだったのも驚きだ。小さな入り口で4.2ユーロ(約570円)の入場料を支払って地下へと下りていくと、ドブ川のようなその臭いは、さらに強烈になってくる。マスクやハンカチを持ってこなかったことを後悔しながら、いざ博物館の中に入ってみよう!

 もわ~っと、生暖かく湿度の高い博物館の地下空間はトンネル状になっており、はじめにパネルによる解説が行われている。どうやら下水道の仕組みを説明しているようだが、説明文がフランス語で書かれているので、その詳細はよくわからない。だが、フランス語のわからない日本人でも臭いのはわかる! こんな環境では、どんなに熱心な下水道ファンでも集中して解説文を読むなんてできないんじゃないだろうか……。

 下水道を整備する様子を描いた人形の展示などを横目に奥に進んでいくと、どんどんと臭いが強烈になっていく。そして、ついに目に飛び込んできたのが、灰色の水。そう、これが、雨水や生活排水、そして芸術品のように美しかったフランス料理の成れの果てなのだ! く、臭い……不気味な白いものが浮かんでいる……。よく見ると、この水の中からポツポツと泡が湧いているのも不快感をかき立てる! 世界広しといえども、実際に使用されている下水道をその目で、その鼻で楽しめるという施設は聞いたことがない。ほかの来館者たちも、眉をひそめつつ、その灰色の水を興味深そうにのぞき込んでいた。

 さらに、トンネルを進んでいくと、今度は下水道の歴史を記した英語とフランス語で書かれたパネル展示。14世紀から始まったパリの下水道整備は、現在、総延長2,000kmに及ぶ長大なものになっている。そんな下水道が日進月歩で進化してきた過程や、下水処理の進歩、さらには、下水の詰まりを防ぐために生み出されてきた機器の数々など、これを見ればパリの下水道が一目瞭然! ……なのだが、臭いにやられすぎて痛くなってきた頭では、読み慣れない英語の文字がまったく入ってこない。結局、足早に通り過ぎざるを得なかった。

 目で、鼻で体験できるパリ下水道博物館の説得力はハンパじゃない! ここに来れば、地上にきらめく「花の都」とは違ったパリの風景が見えてくるだろう。展示を見終わってトイレに入りながら、「この排泄物も下水道を通ってセーヌ川に放流されるのか〜」と感慨にふけりつつ、朝食に食べたクロワッサンを下水道に垂れ流したのであった。
(取材・文=萩原雄太[かもめマシーン])