テレビ視聴率「5%取れば合格」の時代がきた!? もはや数字を追わない方がいいのかも...! | ニコニコニュース

イメージ画像:TBS系『半沢直樹』公式サイトより
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 日本テレビの役員が定例会見の場で同局のドラマの視聴率が振るわないことに関連し、「他局を含めて良い内容のドラマが多いが、視聴率が伸びていないのは意外」などと発言した。これが強気な姿勢だと物議を醸している。

 現場のスタッフたちもそのように考えているのだろうか。この会見のコメントを現場がどう捉えているのか聞いて回った。

「正直なことを言えば、局の上層部にいる人間としては、このように答えるしかないんでしょうね。たしかに現場は『面白い』と思えるドラマを産み出しています。これはどんな企業だって同じですが、『絶対に売れない』と思っている商品を発売しないですからね。でも、そのような商品を出しても、全く手に取ってもらえない状態なので、困っているのが今の実情です。本当に理由が明確にあるならば聞きたいですね」(テレビ局ドラマプロデューサー)

 役員の言葉には同意するとのことだったが、他の関係者からも同じ反応だった。

「しっかり腰を据えて見た場合、面白いドラマもあります。そう思ってドラマを作っていますしね。でも、お茶の間では"テレビの前に腰を据えて見る状態"が減っています。一昔前は『美味しいと思ってラーメンを作っている』のに、みんなに『まずい』と言われていた状態でした。でも今は、そこでラーメンが食べられることさえ知らない人が増えており、『まずい』とも言ってもらえない状態です。ラーメン屋がオープンしても、誰からも見向きもされずに3カ月後には閉店しているような感じです。ただ、稀に高視聴率が出ることもあるので、上のほうにはまだまだ期待感もあり、現場がもがいている状態ですね」(ドラマ制作会社幹部)

 たしかに生活習慣の多様化によってテレビの視聴者自体は減っているのは確かだろう。しかし、上の期待によって現場がもがいているとは、どういうことか。

「『半沢直樹』(TBS系)のような事例があるので、局の上層部はそこを目指せと言ってきます。その結果、余計な演出が増えたり、知名度だけで配役を決めたりするようになって、面白くないドラマが生まれることもあるんです。数字はほしいですが、数字のことばかりに目が向いて、企画書の段階では面白かったものがつまらない内容になることもあり、ジレンマを抱えています」(同)

 さらに、他の関係者からは、こんな声も聞かれた。

「ラジオも1%程度の聴取率で推移する番組が多いですが、かつては10%を獲得していた番組もありました。でも今は1%前後が当たり前で2%を取れば局内はドンチャン騒ぎになることもあります。つまり、ラジオ業界は10%が当たり前だった時代を諦め、"1%が当たり前"という水準に視点を落としたのです。テレビドラマも20%が当たり前の時代がありましたが、ここ数年は10%を超えれば、『まずまず合格点』と言われます。でも、未だに20%の時代の尺度を引きずっているお偉いさんも多いので、現場は苦しんでいるんです。ラジオのようにテレビドラマも5%を取れば『よくやった』と言える環境があれば、数字ばかり気にせず、本当に面白いものが出てくるかもしれません」(テレビ局プロデューサー)

 つまり、かつてメディアの中心であったテレビが斜陽産業の仲間入りを果たした事実を受け入れることも重要のようだ。

 インターネットにはインターネットの良さがあり、テレビにはテレビの良さがある。「ネットがあればテレビや新聞は要らない」という意見も散見されるが、新しいメディアが台頭したからと言って、古いメディアが必ずしも消える必要があるわけではない。それぞれの良さを活かして共存していける形がベストだ。テレビから多くの夢や希望を与えてもらった世代の人間からすれば、テレビにはまだまだ頑張ってほしいものだ。
(文=吉沢ひかる)


※イメージ画像:TBS系『半沢直樹』公式サイトより