戦後70周年の終戦記念日を前に、中国と韓国が矢継ぎ早に新たな「日本攻撃」を繰り出している。
7月中旬には、中国系のメディアが中国社会科学院近代史研究所の最新研究結果として、 「抗日戦争中に死亡した中国兵、民間人は3500万人以上だった」と報じた。うち、兵士が380万人以上としたうえで、「第二次世界大戦中の中国人死傷者は世界全体の死傷者の3分の1を占めた」と伝えている。
いくら白髪三千丈の世界でも、度が過ぎるのではないか。終戦直後、国民党政府が主張していた中国の犠牲者数は320万人だった。それが時代を経て1000万人、2000万人と膨れあがり、1995年に当時の江沢民主席が「3500万人」と根拠のない数字を言い出した。
今回、その数字に「以上」という2文字がついた。それは今後、犠牲者数が4000万人、あるいは5000万人とさらに多くなることを意味する。「南京大虐殺30万人説」と同じ“水増し”の手法ではないか。
中国がそうしたデタラメ数字を発表するのとほぼ同じタイミングで、韓国の「元慰安婦」の女性2人が、かつて「性奴隷として扱われたことが人権侵害にあたる」として日本政府などに2000万ドル(約25億円)もの損害賠償を求める訴えをアメリカ・サンフランシスコの連邦地裁に提起した。訴訟対象として、昭和天皇や今上天皇、安倍晋三首相、旧日本軍と関係のあった日本企業などが含まれているという。
アメリカで「慰安婦問題」を騒ぎ立てるのは、韓国のいつもの手と言える。カリフォルニア州・グレンデール市に2013年に慰安婦像を設置した際も、韓国系市民団体が「慰安婦は性奴隷だった」と事実ではないことを喧伝し、世界に広めた。
折しも今、裁判が提起されたサンフランシスコの市議会では、慰安婦像か慰安婦の碑の設置を支持する決議案が取り上げられ、議論が進んでいる。
この決議案は「慰安婦は日本軍に拉致され、性奴隷の扱いを受けることを強制された20万人のアジアの女性・少女」と説明し、設置を支持するもので、市議11人中、8人による共同提案である。アメリカでは今も韓国系団体によるロビー活動が“効果的”に繰り広げられていることの証左だろう。
両国とも、戦後70年の節目にあたって、「作られた歴史」を振りかざして国際世論に“日本の残虐性”を印象付けようと躍起になっているのだ。最たるものが、中国・盧溝橋にある抗日戦争記念館で始まった「抗日戦争戦勝70周年記念展」である。
中国は、捏造、誇張された資料などを展示したこの“反日展”に、7月中旬、500人あまりの各国の大使・領事、外国メディア、国際組織などの中国駐在員などを招待した。ロシアの駐中国大使であるアンドレイ・デニソフ氏は、「多くの史実や資料が展示されていて、よく理解できた」と感想を述べている。
ここで日本が反論しなければ、国際社会では中国や韓国が訴える嘘が、“事実”と見なされてしまいかねない。
他国を攻撃するのには長けていても、真正面から反論されると意外に弱いのが中国と韓国だ。70年たっても終わらぬ「戦後」に区切りをつけ、未来に向け歩み出すためにも、日本は歴史問題について、中韓と国際社会に繰り返し繰り返し真実を伝え続けていくしかない。
※SAPIO2015年9月号