どうも!ライターのノジーマです。
突然ですが、みなさん漫画は好きですか?
漫画を読むだけではなく、絵を描いたりするのが好きで、以前は漫画家に憧れていたという方は割と多いのではないでしょうか。
漫画家さんは売れっ子になってくるとアシスタントを起用して作品を仕上げたりするのですが、実は漫画家のアシスタントのお仕事もアルバイトだったりすることが結構あるのです。
「有名漫画家さんが以前○○先生のアシスタントをしていた」なんていう話もよく聞きますよね。
漫画家に憧れている人にとっては、作品を仕上げる現場の空気を感じたり、漫画の技術を学ぶことができるので、アシスタントは漫画家になるための経験を積むのに最適な仕事なのです。
そこで今回は、漫画家アシスタントの仕事に密着しつつ、ちょっとだけ体験もさせていただこうかと思います!
●漫画家の仕事場に潜入!
今回、取材に協力してくれることになったのは株式会社ミルノプロを立ち上げた見ル野栄司先生。
見ル野先生は設計開発の会社に10年勤務したのち、突然ギャグ漫画家に転身したという異色の経歴の持ち主です。
そして近年では設計開発の会社で務めていた経験を活かして、代表作「シブすぎ技術に男泣き!」をはじめ、工場や技術職の現場を取材して漫画にしたり、日本で唯一無二である『理工系ものづくり漫画家』としての地位を確立した人なのです! ニッチ!
仕事場の本棚には見ル野先生の単行本がたくさん!
これまでに20冊以上出版し、最近では電子書籍も出ているとのこと。
「理工系漫画」に並んで謎の鳥男の本がいくつかあるのが気になりますが…。
どれもとってもおもしろいので、興味のある方はぜひご一読を!
※作品一覧はコチラから
http://mirunopro.com/?page_id=80※WEB連載中「セミコン見ル野のシブすぎ技術に男泣き!」
http://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s01300.jsp?p=028●完全デジタルで作られている!
見ル野先生との挨拶もほどほどに、さっそく作業中のデスクを見学させていただきましたが、なんと紙もペンもありませんでした。
タブレット型のパソコンに直接絵を描き込んでいってます。すごい!
どうやら最近の漫画家さんはほとんどがデジタルに移行しているらしく、見ル野先生はいち早くデジタル化の波に乗ったひとり。
このあたりはさすが理工系漫画家といったところでしょうか。
もう数年はインクとペンに触れていないそうです。
ちなみにデジタル化させた当初は、出版社側がデジタルに対応しておらず、デジタルで仕上げた作品をわざわざプリントアウトしてから入稿したりもしていたというエピソードも…。
このように下書きやネタ出しの作業も、全部タブレットPCで行うとのこと。
取材で地方に新幹線移動するときも、車内でずっと作業ができるからとても効率がいいいそうです。
仕上げの作業もこんな具合にタブレットで。
漫画制作がここまでデジタル化されてるなんてほんと、全然知らなかったですね!
こうして、基本的にはほとんどの作業を見ル野先生がひとりで片付けてしまうのですが、見ル野先生は現在4本も連載を抱える売れっ子漫画家さん。
アシスタントの存在が必要不可欠となるわけです!
そこで、見ル野先生のアシスタントとして株式会社ミルノプロでアルバイトをしているのが迎さん。
おもにカラー原稿の色塗りや背景の処理など、こまかい作業を担当しているそうです。
アシスタントのお仕事についてはのちほど詳しく突っ込んでいきます!
●事務所には見ル野先生ならではのアイテムがたくさん!
株式会社ミルノプロの事務所には漫画家ならでは、見ル野先生ならではのアイテムもたくさんありました。
窓際で干されていたのは寝袋です。
どうしても締切に合わせての作業になってしまうのが漫画家のお仕事。
やはり、仕事が終わらない時は泊まり込みになってしまうことも避けられないんだとか。
大変なお仕事ですね…。
ちなみに、どんなに忙しくてもアシスタントの迎さんが泊まり込みになることはないそうです。いい職場!
そして、見ル野先生ならではのアイテムがこちらの工具箱。
実際に自分で何かを製作し、作った機械を漫画のネタで使う機会があるとのこと。
ペンとか漫画の道具はないのに工具はあるってすごいですよね…。
さらにはこんな本格的な工具まで! 漫画家の事務所なのに!
さすがに、これらの工具に触れるのは見ル野先生だけで、アシスタントの迎さんはノータッチとのことです。
そして、こちらが見ル野先生が最近昼食として食べているというゴマ・豆・煮干。
「ちゃんと食べてしまうと、眠くなるうえに太るから」という理由で、行き着いた昼食がこれらだということです。
突き詰めているというか、なんというか……。
ちなみにアシスタントの迎さんにすすめても、まったく食べてもらえないそうです。
●アシスタントのお仕事に密着!
ここからは、本題であるアシスタントのお仕事に密着していきたいと思います!
まずは、株式会社ミルノプロでのアルバイトという形でアシスタントを務めている迎さんについてですが、彼女は現在26歳で、ミルノプロ3代目のアシスタントとのこと。
もともとは九州の出身で、2年前からネットでデータをやりとりしながら原稿制作の手伝いをしていたそうなのですが、今年に入って上京してきたそうです。
どうやって仕事を探したのか、どうしてアシスタントの仕事を始めたのか、いろいろ気になりますよね。
直接聞いてみたいと思います!
●やはり漫画家になりたい!
ノジーマ「迎さんがアシスタントの仕事を始めたきっかけって何ですか?」
迎さん「私は漫画家になりたいんですけど、漫画家になるためには出版社に作品を持ち込んだり、賞をとったりしなければいけないんです。でも出版社に持ち込みをしても、そこまで詳しく指導をしてもらえるわけではありません。それだったらアシスタントで技術を学びつつ、先生に自分の作品を見てもらうほうが成長できるかな、と思ったんです」
ノジーマ「迎さんが作った作品に対してアドバイスをもらえるんですね!」
迎さん「毎週1回、1時間とキッチリ時間を決めて、アドバイスをいただけてます」
ノジーマ「アドバイスの時間をしっかり作ってもらえるんだったら、漫画家志望の人にはたまらないですね!これって、見ル野先生にもプラスになったりするんですか?」
見ル野先生「そうですね、自分の仕事だけだとルーチンワークみたいになってしまうので、とても新鮮でいい刺激になってますよ」
ノジーマ「なるほど、お互いにメリットがあるんですね!」
●アシスタントの仕事はどうやって探すの?
ノジーマ「今回のアシスタントのお仕事ってどうやって探したんですか?」
迎さん「今回はちょっと特殊で、Twitterで見ル野先生がアシスタントを募集しているという情報をキャッチして、直接応募してみました」
ノジーマ「Twitter!すごい!アシスタントの仕事って本来はどうやって探せばいいんですかね?」
迎さん「漫画の雑誌で募集がかかっているのはよく見かけます。でも今回みたいに、漫画家さんが直接ネットで募集をかけてることも多いみたいですよ」
ノジーマ「じゃあ、気になる漫画家さんのSNSなんかはよくチェックしておいたほうがよさそうですね!」
●実際のお仕事をチェック!
インタビューの最中もずっと手を動かし続けていた迎さん。
ミルノプロでのアシスタント業務はおもに「カラー原稿の色塗り」や「背景処理」などの細かい作業だと聞いていましたが、ちょうどそれとはまた別の作業をするタイミングになりました。
それは「トレース」といって、写真などを忠実にうつして漫画の中に組み込む作業です。
特に、見ル野先生の作品には機械などが出てくることが多いため、非常に重要な作業だといえるでしょう。
今回、迎さんがトレースしたのはこの「サーブロボット」「レシーブロボット」という機械のイラスト。
こちらには細かく線が書かれていますが、つづいて次の画像を見てみてください。
実はこのように写真を配置して、機械の輪郭をペンでなぞっていたんですね。
少しでもバランスが狂うと違和感が出てしまうし、トレースはとても繊細な仕事だそうです。
これはアシスタントの仕事を体験するっていっても、簡単にはできなさそう…。
そして、つづいて迎さんが行っていたのは漫画への色塗り作業。
お、これは細かい部分じゃなければシロウトでもできそうな雰囲気だぞ…!
そこで、見ル野先生と迎さんにお願いして、ちょっとだけ色塗りの仕事を体験させてもらうことにしました!
これは緊張する!
●色塗りの作業を体験!
見ル野先生と迎さんに快諾してもらえたので、迎さんのPCとタブレットを拝借し、簡単な色塗り作業に挑戦してみます!
今回はこちらのページの肌色部分を着色させてもらうことになりました。
タブレットを使って作業をするのですが、紙でお絵かきをしているかのように、まったく違和感なく作業ができるのにびっくりです。
どうしても慎重にはなってしまいますが、これはとっても楽しい作業!
デジタルなので「失敗しても戻せるから」と、気楽にできるのがとてもいい感じです。
真剣に取り組んでいるようすを背後から若干不安そうに見つめる見ル野先生。
実際のところ、僕のような未経験者でもアシスタントのバイトってできるのでしょうか?
手を動かしながら見ル野先生に聞いてみました。
ノジーマ「漫画家のアシスタントって未経験からでもできるんですか?」
見ル野先生「うちにはもう枠はないけど、デジタルの環境だったら割といけるかも。ある程度PCが使えて、細かい作業が好きな人なら特にかな」
ノジーマ「そうなんですね!やりながら覚えていくような感じで…」
見ル野先生「実際手が回らないときは、いろんな人の助けを借りたくなるからね。スポットで手伝うような感じからなら、案外仕事はあるのかも」
なるほど!作業をしたことがなくても、やる気があればできる仕事はありそうですね!
●色塗り完了!
そうこうしているうちに、無事にメインキャラの肌色部分の着色が終わりました!
これは楽しかった!案外上手にできたかと思います。
ただ時間は結構かかってしまったので、PC・タブレット・デスク・イスとすべてを貸してくれた迎さんに悪いことしちゃいました。
その間なにも作業ができなくなってしまいますからね…。
そして申し訳なさを出しつつ、迎さんにも質問をぶつけてみます。
ノジーマ「普段って1日にどのくらいの作業をするんですか?」
迎さん「だいたい1日に4~8ページくらい分の作業をしますね。ページによって作業量の差は大きいですけど」
ノジーマ「それはそうですよね。1日の作業時間はどのくらいなんですか?」
迎さん「基本的には1日8時間半で、休憩もしっかりいただいてる感じです」
ノジーマ「さすがミルノプロ、勤務時間もしっかりしてるんですね。アシスタントの仕事ってだいたいどこでもこんな感じなんですか?」
迎さん「いや、泊まり込みや住み込みでやってる人もいれば、1ページ単位で自宅作業している人もいるし、結構バラバラですね」
なるほど、働き先によってかなり条件が違いそうなので、もしアシスタントの仕事をする場合は詳細をしっかり確認したほうがよさそうですね。
●アドバイスをしっかりもらえる!
そうこうしているうちに、この日の作業も終わりとなりました。
最後に見ル野先生が迎さんの仕上げた原稿をチェックし、細かく指示を出していきます。
受けた修正指示は次の出勤時に対応していく形になります。
また、技術的なアドバイスももらえるので、迎さんはそれをしっかりメモ。
アドバイスをもらうようになって、色塗りがうまくなったと自分でも実感しているそうです!
●喫茶店でアドバイスタイム!
片付けも終わったら、そのまま外に出て喫茶店へと向かい始めました。
迎さんの作ってきた作品に対してのアドバイスタイムが始まるのです!
そしてどうでもいいですが、見ル野先生は放っておくとひとりでスタスタと先に行ってしまうので危険です。
危なく見失ってしまうところでした。
事前に受け取っていたネーム(ラフ画・構成図のこと)のチェックを済ませていた見ル野先生から、1ページ、1コマずつ丁寧にアドバイスを受ける迎さん。
それまでは割と無口で、集中して作業をしているようなイメージでしたが、自分の作品へのアドバイスとあってか、迎さん自身がかなりヒートアップしてきました!
「ここのコマはこんな感じにするといいんじゃないでしょうか」
「あ、そしたらこういうのはどうですか!?」
という具合に白熱した討論を重ね、あっという間に1時間が経過。
この日のアドバイスタイムはお開きとなりました。
迎さんは今回もかなり得るものがあったようで、とても充実していた表情をしていました。
とにかくおもしろいものを作りたい、結果を出すまでは地元には帰らない、という固い意志を持ってアシスタント業に取り組む迎さん。
いずれ、彼女の作品が世に出ることを期待したいですね!
普段ひとりでボンヤリしながら働いてる僕とは対照的に、目の前でとてもアツいやりとりが繰り広げられ、「こういうのもいいなぁ」と思いましたよ。ほんと。
●漫画家アシスタント体験を終えて…
喫茶店での打ち合わせが終わり、そのまま現地解散をして漫画家アシスタント体験の1日が終わりました。
正直、漫画家のアシスタントはハードワークを強いられているんじゃないか、という悪いイメージを持っていたのですが、株式会社ミルノプロに限ってはまったくそんなことはありませんでした。
無理やりゴマや煮干を食べさせることもないようですし、とても良い環境です。
他の職場がどんな環境になっているかはわかりませんし、キツい職場もたくさんありそうですが、探せば自分にあったアシスタントの仕事を探すこともできそうですね。
まったくの未経験でも、好きならやれないことはなさそうですので、漫画が好きな人は実際チャレンジしてみるのもいいかと思いますよ!
※この記事はタウンワークマガジンとガジェット通信で共同制作しました。
取材・文:ノジーマ 企画:ガジェット通信
【見ル野栄司プロフィール】
漫画家。
10月13日生まれ。
日本工学院専門学校メカトロニクス科卒業。半導体製造装置、アミューズメントゲーム機などの設計開発の企業に10年勤務。代表作に理工系ものづくりの人々の姿を描いたコミックエッセイ「シブすぎ技術に男泣き!」「鳥男(シリーズ)」など。
オフィシャルHP:http://mirunopro.com/
Twitter ID:toriopon
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