電車内のルール「優先席付近での携帯電話(スマートフォン)オフ」が今後見直され、混雑時以外は電源を切らなくてもよくなる――と話題になっています。ただ、テレビ朝日など一部メディアでは報じられているものの、編集部で鉄道会社側に確認してみたところ、現時点ではそのような予定はないとのことでした。
【今年6月23日「生体電磁環境に関する検討会」で配布された指針改訂案】
そもそも電車などの優先席で携帯電話の電源を切るべきとされているのは、電波利用機器から発せられる電波が、心臓ペースメーカーなどに悪影響を及ぼす可能性があるため。総務省ではこの問題について以前から調査を行い、指針のとりまとめを行ってきましたが、今年6月23日に開催された「生体電磁環境に関する検討会」の中で、新たな指針を発表。これまでの調査はかなり極端な状況で実施されていたとし、今後は新たに「一般生活の中でペースメーカーなどに影響が出る可能性はかなり低い」といった内容を盛り込むとしています。今回の「優先席付近での携帯電話電源オフ」撤廃はこの改訂を受けてのもの――と一部では報じられていました。
総務省に電話取材を行ったところ、医療機器や電波利用機器の具体的な利用状況はケースバイケースで大きく異なるため、同省では安全面に配慮し、あえて厳しい条件で調査を行っているそう。指針の該当箇所の変更は、そのような調査の前提条件を記載することで参考にしやすくするために行われました。ただ、心臓のペースメーカーの扱いに関しては大きな変更点がなく、具体的な状況を想定した対応は各社の判断で行うことを想定しているとのことです。
一方、JR東日本、東京メトロ広報にも取材したところ、優先席付近での携帯電話の扱いについて変更する予定は今のところないとの回答でした。ルール変更にあたっては、利用者や社会動向の把握、各社間での情報共有などが必要で、少なくともこの2社に関しては、まだ検討が進んでいないそうです。
なお、総務省の指針はこれまでにも何度か変更されており、2013年には植込み型医療機器と離すべき距離を「22センチ以上→15センチ以上」へと縮小。これを受けて、2014年には関西鉄道協会に加盟する鉄道事業者、JR西日本で「優先席付近では『混雑時のみ』携帯電話の電源を切る」という形に車内マナーを変更しています。