それほど安全性に問題があったわけではない?
宇宙に向かって飛び立ち、そのまま戻ってきては、再び同じ機体で宇宙へと出かけられる。そんな昔ならば夢でしかなかったコンセプトを現実のものにしたスペースシャトル。いまでは惜しまれつつ引退し、宇宙計画における歴史の1ページになってしまいましたよね。
ところで、スペースシャトルそのものは、まだまだ何度も宇宙へ飛び立てる状態のまま役目を終えたのをご存知でしたか? スペースシャトルが最後のフライトを終えたとき、3機が残っていました。その時点における各スペースシャトルの宇宙飛行の回数は、25回、33回、39回だったそうです。実際のところは、スペースシャトルは最高100回まで宇宙飛行ができる設計だったとのことですから、まだ予定の半分以下しか使われなかった機体ばかり!
もちろん、事故を起こして貴重な人命が失われたこともありました。老朽化するパーツの交換メンテナンスという問題だって抱えていたのは事実です。しかしながら、宇宙旅行に危険はつきものという現実だってあるはずです。スペースシャトルだけが、打ち上げなどに高確率で失敗してきたのではなく、ほかのロケットと比較しても事故率は変わりばえせず、安全な飛行ができないことを理由に引退を余儀なくされたわけではないんですよね。
スペースシャトルによる宇宙計画が打ち切られた真の理由は、お金がかかりすぎたことにある。同じ機体を繰り返し使えるので、低コストで宇宙飛行が行なえるという当初の目算とは裏腹に、スペースシャトルにかかるコストはとても高かった。
もし、予定通りに低コストで繰り返し打ち上げることができていれば、いまでもスペースシャトルは飛行を続けていたと思う。より改良された新しいスペースシャトルが姿を現わして、格段にコストを抑えた宇宙計画を担っていたはずだ。
NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)でシステムエンジニアを長年務めたMark Adler氏は、米GIZMODOへ寄稿しつつ、こんなふうに解説しています。財政難に悩む米国が、NASAのために割ける予算は増額を見込めません。そこで、もしも新たな宇宙計画へと足を踏み出したければ、既存の膨大な資金を要する一連のスペースシャトル計画を見直し、廃止する以外に選択肢はなかった……。これがスペースシャトル打ち切りの真相のようですね。
なお、スペースシャトルが役目を終えた現在、もっともNASAでお金がかかっている別のプロジェクトは、国際宇宙ステーションの運営絡みとのことですよ。さすがに、いますぐ宇宙ステーションへの支援をNASAが打ち切る展開はなさそうですけど、将来的にはスペースシャトルと同じような運命をたどる可能性も否定できないんだとか。次の新しいステージへと進むためには、それもやむを得ないことなのかもしれませんが…。
image by NASA/Ben Cooper
Mark Adler - Gizmodo US[原文]
(湯木進悟)