スマホなどの端末の進化により、電車やバスなどでイヤホンを付けて音楽を聴いている人がさらに増したのではないか。自宅でもより音質にこだわり、性能の良いヘッドフォンで音楽を聴く人もいるだろう。しかし最近では、若年性の難聴患者が増加の傾向にあると2015年3月に世界保健機関が発表している。まさか、イヤホンが影響しているのではないか……? そこで今回、耳鼻科医の榊原昭先生に、イヤホンやヘッドフォンのメリット、デメリットについて話を伺った。
■耳の健康にとってメリットはない
「耳への影響という点で言いますと、イヤホンを付けて常時音を聞くことのメリットは何一つないです」(榊原先生)
耳にとって、イヤホンを付けるということはイレギュラーなこと。イヤホンで音楽を聴くことは、耳にとって良いことは何もないと言う。
「唯一メリットがあるとすれば、耳鳴りで悩む方にとって、静かな環境を避けるためにイヤホンで音楽などを聞くのが有効なことがあります。これを音響療法と言いますが、脳を耳鳴りに慣らす効果を狙ったものです」(榊原先生)
耳鳴りなどの症状に悩んでいる人にとっては、心身のやすらぎという観点では有効な使い方もあるそうだ。それでも大きな音で音楽を聴くことは、推奨できないと榊原先生。
■イヤホンの使用で耳にカビ
「デメリットとしてまず問題になるのは、難聴を起こすことです。特に大きな音量で長時間聞けば、それだけリスクが増します。更に電車の中など周りに騒音がある環境でイヤホンを使用しますと、ボリュームも大きくしがちなので注意が必要です」(榊原先生)
ついつい好きな音楽に集中するあまり、ボリュームを上げてしまうという人もいるのではないか。さらに電車やバスでの通学・通勤中の時間を有効に使うため、英語のリスニングをしている人もいるかもしれないし、暇つぶしで音楽を聴く人もいるかもしれないが、上述したようなリスクがあるのだ。
「もう一つのデメリットは、外耳道のトラブルです。外耳道とは耳の穴から鼓膜まで続くトンネルですが、ここをイヤホンで擦って傷つけたりすることは十分に考えられます。イヤホンを長時間使っていれば外耳道の中が蒸れますから、カビが繁殖しやすくなります。外耳道にカビが繁殖した状態を外耳道真菌症といい、症状は耳の痛み、つまった感じなどです」(榊原先生)
なんと長時間のイヤホン使用で、耳にカビが生えるという。擦れや蒸れにより、外耳道真菌症を発症し、耳垂れやつまりなどの不快感を引き起こす。炎症箇所に耳垢などがつまれば、難聴の原因にもなるとのことなので注意が必要だ。
■耳のために、イヤホン、ヘッドフォンは休み休み使用しよう
「音響が難聴を起こす仕組みはヘッドフォンでも同じで、大音響で長時間聞けばリスクが高まります。耳の痛みやかゆみを引き起こす外耳道炎や真菌症に関しては、耳に入れない分ヘッドフォンの方がましと考えられます」(榊原先生)
イヤホン、ヘッドフォンともに長時間、大音量で聞けば難聴のリスクは高まる。耳に直接入れない点で、ヘッドフォンの方が幾分健康に対するリスクは低い。ヘッドフォンが「耳に良い」というわけではなく、あくまで、音量、使用頻度を考慮し、耳を休める時間をしっかりとることが大切なのだ。
「教えて!goo」では「イヤホンで音楽を聴くことは多いですか?どんな時にイヤホンで音楽を聴く?」ということで、みんなの意見を募集中だ。
●専門家プロフィール:榊原 昭
教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)