女優の吉永小百合と嵐の二宮和也が12日、親子役で初共演している山田洋次監督最新作『母と暮せば』のクランクアップ会見に出席した。現場では互いをファーストネームで呼び合うほど仲がよかったといい、二宮は「現場では“和也さん”と呼ばれていたんですけど、ドキドキしました。母親のように接していただきました」と明かし、吉永も「どういうふうにお呼びしていいかわからなかったんですけど、二宮さんのほうから“小百合さん”と呼んでもらえて、とてもうれしくて。それで距離がずっと縮まった気がしました」と初共演を振り返った。
本作は終戦から70年の長崎を舞台に、原爆で一瞬にして人生を失った母子を描いた山田監督初のファンタジー作品。会見には共演者の黒木華、浅野忠信、山田監督も出席した。
山田監督の作品に初めて参加した二宮は「現場の空気が独特でした。監督に紙とペンを渡されて、『はい、自分の気持ちを書いてごらん』と言われているような気がしました。書きなぐるような気持ちで初日の現場に立たせてもらいました」と印象を述べると、戦争が題材になっている本作について「こういった題材、史実に基づいた映画を通じて、長崎の原爆についてあらためて考える機会をいただきました。自分がどう考えるかどう思うかは全て映画においてきたつもりです。ぜひそれを何度も観て感じていただけたらなと思います」と真摯(しんし)に語った。
吉永も「今回が一番監督の情熱を感じました」と言い、「まるで鬼気迫るような感じ。それにわたしがなかなか応えられなくて落ち込んだくらい。それを息子役である二宮さんが現場で支えてくださいました」としみじみ。「今、若い方たちの中に広島や長崎で何が起こったのかを知らないという人が増えていると聞きます。語り継いでいくことの大切さを感じています。この映画を観てぜひあのとき起こったことや、命のこと、これからわたしたちがどんなふうに未来に歩いていけばいいかを感じていただければ」と平和への思いを訴えていた。(取材・文:名鹿祥史)
映画『母と暮せば』は12月12日より全国公開