編集部記:Karen Roter Davisは、Crunch Networkのコントリビューターである。Karen Roter Davisは、Urban Enginesのジェネラル・マネージャーである。
50年後に自動車業界の収益モデルは、自動車の販売ではなく、サブスクリプションモデルに大きく転換すると言ったら、あなたはどう思うだろうか?特に鋭い指摘ではないと思うだろう。しかし、1900年頃に同じことを言っていたら違うかもしれない。1900年代半ば、自動車レンタルとリースが急増するのを目撃できただろう。
その当時でもこれに気を留めなかったかもしれないが、設備のリースやレンタルモデルは古代バビロニアの時代からあり、産業革命時にはミシンがレンタルされていた。18世紀後半には、馬車のレンタル市場が急拡大したのも知っているかもしれない。
私が「5つの要素」と呼ぶものは、これからの自動車業界の消費モデルに影響を与えるだろう。そして、他に関連する業界にも波及することが考えられる。
資産を所有することは、借りたり、サブスクライブしたりする以上にそれを活用できる場合がある。もし音楽を購入してダウンロードしたのなら、他の音楽とミックスしたり、マッシュアップを作ったり、更には他の端末でも聞けるようコピーしたり、形式を変換したりすることができる。車を所有していれば、サブウーファーをつけたり、Megadethのシールをバンパーに貼ったり、スマホの充電器を車に付けたままでも構わず、フロント座席の下に翌日までお菓子をこぼしたままにしていても、私の主人が嫌な顔をするだけだ。(あなた、ごめんなさい。)
しかし、車を所有する場合と「サービスとしての自動車(CaaS)」を利用する場合の「利用の自由度」の境が狭まるほど、価値の方程式に変化が起こり、CaaSの方が魅力的に映る。音響システムが向上したり、車からスマホを充電できたりするだろう。バンパーにシールを貼ることが制限されたり、もっと綺麗に食事したりことは強要されるだろうが、その方が私にとっては良い影響がありそうだ。音楽ストリーミングでも同様にサービスが成熟するほど、サービスに登録するだけで、オリジナルのミックスやマッシュアップ曲を製作することができるようになる。所有する必要性はますます低くなるだろう。
自動車リースの割合は、ここ数年で上昇 した。最新の乗車体験とインターネットに接続した自動車を利用したいと思うコンシューマー層が増えているのが一つの要因だ。
SaaSの進化も関係している。企業は、柔軟なサブスクリプションモデルでカスタマーに最新テクノロジーと進化した機能を提供するために、オンプレミス型の導入や低価格にするための投資を進めている。
所有からサブスクリプションへのバランスの変更におけるもう一つの重要な分野は、保証とメンテナンスだ。これはコンシューマーが面倒に思っていることなのだ。
現在、自動車のリースではCaaSの「走行距離」で料金が決まる。しかし私たちは、全ての道が同じように作られていないことを知っている。地形、気温、天気、移動距離、環境、運転習慣、荷物の量といった要素は自動車のパフォーマンスに徐々に影響を与える。詳細なデータや測定技術で、自動車製造業は「サービス期間」を保証するモデルへと進化している。SaaSのように、必要な時に利用可能であること、そして耐用期間を保証し、ユーザーが車をメンテナンスのために整備工場に持っていかなければならなくなる前に交換を事前に行うことが可能となる。
必要な時に複数の車種から必要な物を選べるようCaaSをカスタマイズすることができるようになれば、それは更なるブレークスルーをもたらすだろう。夏に24日間、山にキャンプに行くのと冬に10日ほど使うために毎回、値段の高く付くSUVにメンテナンス費、ガソリン代や他のコストをかけるのはもったいない。特定の日を事前に予約することで、割引価格で利用することが可能になってもおかしくないだろう。予約することは、CaaSのプロバイダーが需要を予測するのに役立つのだから。
「あの、それは今でもできます。『レンタカー』と呼ばれています」とあなたは言うかもしれない。
もちろんだ。そうすることはできるが、経済的な事情は必ずしも想像通りだとは限らない。例えば、CaaSは自動車メーカーの収益を圧迫すると懸念されている。いつでも利用可能なサービスを好み、自動車の所有に対する需要が減ることになると予測されているからだ。しかし、アクセサリーや洋服のレンタル業界を見てみると(例えば、RocksboxやRent the Runway)、収益の面でサブスクリプションの方がレンタルや販売より注目が集まっているのが分かる。何故か。
自動車リースの割合は、ここ数年で上昇 した。最新の乗車体験とインターネットに接続した自動車を利用したいと思うコンシューマー層が増えているのが一つの要因だ。
まず、ビュッフェに行った時と同じように、ほとんどの人は限度まで食べられるわけではない。サブスクリプションで3着の洋服を好きなだけ交換できたとしても、多くの人は1着か2着を数ヶ月交換しない場合が多いが、それでも料金は変わらない。これは駐車場にしばらく動かさずに鎮座している自動車と同じような状況だ。海辺に行く計画を立ててはいるが、未だに実現していない場合だ。その内行く予定だ。そう、近いうちに。でも、それまでは、思い立ったら行けるように、月額料金を支払っておこうと思うのと似ている。
そのようなシナリオを鑑みて、私が最も望むのは、かかる利用コスト分を十分に活用でき、初期費用が比較的安価なサービスだ。つまり、定額の月額料金で必要な時に車を利用でき、走行距離に応じた料金を加算し、運転したい種類の車が多数揃っていて、利用期間を調整できるようなサービスだ。
「でも、それは既に『Zipcar』メンバーならできますよ?」とあなたは言うかもしれない。
確かに、Zipcarや他のカーシェアリングのサービスは、短距離や短期間、都市部で利用するには最適なサービスだ。しかし、例えば片道だけの利用や7日間以上車を利用したい場合、「走行に対する不安(range anxiety)」が生じる。これは電気自動車のバッテリーが持つかどうか危惧するという意味でもあるが、ここでは、必要な車を必要な期間に利用できないかもしれないと危惧することを意味する。
SaaS企業は、ユーザーが抱えるこの不安にサービス品質保証(SLA)で対応する。つまり、サービスを一定の水準で常に利用可能であること、待ち時間の短縮、問題の把握と対応、サービスが利用できない場合の補償を準備することだ。これを実現するためには車ごとの売上ではなく、車を利用する「体験」を提供することに考え方をシフトする必要性がある。CaaSの利用率を高めるには、自動車サービスのコンセプトを壊れた部品を修復することから、いつでもどこからでも利用できるサービスに変えなければならない。
SaaS企業は自社のサポートチームを保有するだけでなく、自社のチャネルパートナー、コンサルタント、システムインテグレーターのエコシステムを保有し、プロダクトがユーザーに最大限リーチできること、そしてサービスの品質が一定水準に保たれることを保証する。ここが面白い部分だ。Zipcar、Uber、Lyftや公共の交通機関をこれまでの意味での「プロのサービス」や「サポート企業」であるとは言わないが、サービスレベルを一定に保つことが、CaaSを加速させるのに最も重要な推進力を生むことにつながる。
次の数年で、自動車製造業はコンシュマーのニーズに対応し、高い価値を提供するために、自動車のセンサー、データ、分析結果、彼らの周りに構築された交通エコシステム、そして上記の5要素を取り入れたクリエイティブな施策を行い、利益を生むことが求められている。(データがどの程度利用できるか、そして規制上も制限は多いが、乗り越えられない課題ではないだろう。)
次のアクションが取れるようなデータは自動車から生成される。例えば、車内の利用状況、車の相互通信、エコシステム、更には車を利用する個人の毎日の生活の文脈からデータが得られるだろう。これらのデータは5要素を突き動かし、勝者と敗者の未来、そして私たちが移動手段の利用方法を含め、業界の運命を握るだろう。
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