GoogleがAlphabetという会社に再編されたというニュースを聞いてカレンダーをチェックした読者も多かっただろう。いや、やっぱり4月1日ではなかった! その後、詳しい内容も判明した。
Googleは現在も本質的にインターネット企業だ。16年前に誕生したGoogleはわれわれが現在知っているインターネットを形成するのに決定的な役割を果たしてきた。5万7000人の社員に「Googleといえば何を連想するか?」と尋ねれば、おそらく全員の答えに「インターネット」が含まれるだろう。
Googleが会社の使命を述べた有名な一節がそれを証明している。
Googleの使命は世界の情報を組織化し、われわれに役立つような形で普遍的にアクセス可能にすることだ。
しかしGoogleは次第にその枠に収まらなくなってきた。
今やAlphabetという名で知られるようになった巨人は数年前からインターネット以外の分野への進出が目立ち始めた。ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは地球上で最良の頭脳を集めていくつかの野心的プロジェクトを立ち上げた。明らかに彼らは「検索企業」という範疇に安住するつもりはない。
会社の使命は、たとえば次のように改定される必要があるだろう。
Alphabetの使命は現実世界をわれわれに役立つよう形で普遍的にアクセス可能にすることだ。
現実世界の中にはもちろん情報も重要な要素として含まれる。その分野はスンダル・ピチャイが指揮を取るGoogleが担当する。
では再編されたGoogleの各ユニットはそれぞれどんな役割を担うことになるのだろう?
インターネットで何かを探すことは相当以前から「ググる」と呼ばれている。それにはもっともな理由がある。Googleが最良の検索エンジンだからだ。Googleの圧倒的な検索シェアに近い将来変化がるとは思えない。当分Googleはインターネットへのポータルであり続けるだろう。
しかし、検索はモバイル・インターネットへのポータルではない。この点に対処することがピチャイに課せられた使命だ。
検索、広告、AndroidというGoogleのコア・ビジネスはスンダル・ピチャイの新Google事業部に残された。ピチャイはGoogleサービスのモバイル体験の改良に全力を挙げるだろう。再編によってピチャイは他の事業に精力を割かずにすむようになった。
爆発的な成功を収めたスタートアップはこれまでのGoogle(に買収される)というエグジットの代わりにAlphabetというエグジットを考える必要がある。Alphabetに買収された場合、それがNestのようなすでに大規模なオペレーションになってるなら、ラリー・ペイジの直属となる。これまでのようにGoogleの巨大な官僚組織の迷路のどこかに埋もれてしまうという心配をしなくてよくなる。当然、意思決定も速くなるだろう。
これまで新たに買収された企業は、Googleのコア・ビジネスを補完する場所をあてがわれてきた。コア・ビジネスを補完するような位置づけができない企業は、多くの場合、そのまま放置されてしまった。
もしAlphabetがもっと早く誕生していたら、Oculus Riftはその傘下企業になっていたかもしれない。 たとえば、そういうことだ。
アポロ計画に匹敵するような野心的プロジェクトという意味でムーンショットと呼ばれているGoogleの各種事業は投資家を苛立たせてきた。自動運転車だって? 気球でインターネットを中継するって? なんで広告テクノロジーの改良とかに集中しないのだ?
ムーンショット事業にとってAlphabetは大きな朗報だ。決算発表のたびに浴びせられる厄介な質問(「グラウンドホッグデーのジリスの行動を観察するために5人のエンジニアを派遣した理由は?」)はペイジが直接さばいてくれる。
Alphabetはますます奇妙な会社になっていくだろう。
成功した巨大持株会社としてはウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイという前例もある。Googleはすでにリアル世界のあらゆる側面に投資を行っている。今回の再編でAlphabetはGoogle事業と、それどころかインターネットとも無関係な事業への投資がしやすくなる。Bill Maris率いるGoogle Venturesチームは「世界を組織化する」というAlphabetの新たな使命に即していっそう大胆な投資をするようになるだろう。火星のテラフォーミング? バーテンダーを対象としたUber事業? われわれの多くはGoogleが世界中の道路を写真に撮ると聞いて正気かと疑ったものだ。ともあれ、Alphabetから今後何が飛び出してくるのか大いに楽しみだ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)