お盆休みに遠出する人を悩ませる、帰省やUターンのラッシュ。交通機関が混み合うと、さまざまなトラブルが起きる可能性がある。その一例は、新幹線の自由席の利用者が、指定席を勝手に「占拠」してしまう問題だ。
今年の3月にも、ある大学教授が、空いている指定席に座っていたところ、車掌から自由席に移るように求められ、「来られたら移動ではダメですか」と抵抗したエピソードがツイッターで話題になった。
逆に、ネットの掲示板では、自分が予約した指定席に座ろうとしたところ、自由席の乗客に占拠されていて、トラブルになった事例が多く書き込まれている。空いてるからといって、勝手に指定席を占拠しても問題ないのだろうか。岡田一毅弁護士に聞いた。
●契約上許されない行為「JR各社の列車を利用する乗客は、JR各社と旅客運送契約を締結することになります。その契約内容は、旅客営業規則という約款の内容に基づいたものになります。
指定席に乗車することができる乗客は、指定券を所持していけなればならないので、所持していない乗客が指定席に座ることは、契約上許されないということになります。
また、自由席の特急券をもっている人がグリーン車の座席に無断で座った場合も、鉄道会社係員の承諾がないまま『乗車券に指示されたものより優等な車両』に乗ったということになり、刑罰が科せられる可能性があります(鉄道営業法29条2号)」
では、やはり指定券を持たないまま勝手に占拠することは、問題になるということか。
「そういうことです。旅客契約上、指定券を所持している人は、自分の指定席に指定券を所持していない乗客が座っている場合、JRに対して、自分をその指定席に座らせるよう請求することができます」
JRはどういう対応をすることになるのか。
「JRは、旅客営業規則に基づいて、指定券を所持していない乗客に対して、座らないように請求できます。それでも、その乗客が座り続けている場合は、指定券を所持している乗客から、座れないことによる損害の賠償を請求される可能性が出てきます。ですから、座っている『指定券不所持の乗客』に対して、損害賠償請求をすることができます。
指定券を持っていない人が、勝手に空いているからと言って、指定席に座ることは許されず、指定券を購入して座るべきです。空いてるからと言って座らせてくれと請求し、JRに拒否されても、文句は言えないということになります」
岡田弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
岡田 一毅(おかだ・かずき)弁護士
2013年度京都弁護士会副会長。交通事故などの交通法務に詳しく、大手損保会社の顧問弁護士も勤める。また医療法人の顧問弁護士など、医事法務についても手がけている。大の鉄道好きでもある。
事務所名:赤井・岡田法律事務所
事務所URL:http://www.akai-okadalaw.com/