焚書に向けて暴走必至! 国会で審議されている「ヘイトスピーチ規制法案」が、表現の自由を破壊する | ニコニコニュース

参議院HP「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案:参議院」より。
おたぽる

 安保法制をめぐり紛糾する国会で、新たな「表現の自由」を侵害する法案の審議が続いている。8月4日、参議院法務委員会で審議が始まった「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律」。通称「ヘイトスピーチ規制法案」が、それだ。

 この法案は、近年社会問題のひとつとして盛んに取り上げられている、特定の人種や民族への差別をあおる「ヘイトスピーチ」を規制することを目的としたもので、5月に民主・社民両党などによって参議院に共同提出されていたものだ。

 もちろん、人種や民族を理由とした迫害が、容認されるべきものではないことは当然だ。

 しかし、その当然の「正義」を推進するために、この法律は「表現の自由」をないがしろにしている面が否めない。それが最も端的に表れているのは、差別を定義した第二条の部分。ここには、こう記されている。

第二条
この法律において「人種等を理由とする差別」とは、次条の規定に違反する行為をいう。
2
この法律において「人種等」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身をいう。

 法案では、この定義を示した上で第三条からは「不当な差別的取扱い」「侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動」などを禁止することを定めている。また、そのために国や地方公共団体が必要な施策を定めることを求めている。

 ヘイトスピーチ規制法案という通称で呼ばれてはいるものの、罰則は設けられていない。

 にもかかわらず、この法案が危険なのは第二条で定められた「定義」が極めて広いことだ。ここでは「人種等」の説明の中に「種族的出身」を含むことが明記されている。

「種族的出身」とは「出自」よりも広い枠で出身地域や文化、集団を指すことと理解される。それを「人種等を理由とする不当な差別的取扱い」という禁止行為に含めば、拡大解釈をしてさまざまな表現を「差別」として禁ずることができる。

 想定される事例は、特定の地域の文化や出身者を題材にした報道や創作に対する萎縮効果だ。例えば、県民性をテーマにしたネタはテレビのバラエティ番組からマンガやアニメまで、さまざまな場所において見ることができる。

 こうした題材も毒が強くなれば「不当な差別的取扱い」と糾弾される可能性がある。例えば、筆者は岡山県は岡山市の出身なのだが、「よそ者にはつらく当たる県民性(主に岡山市)」だとか「県庁所在地でもないくせに、岡山市よりも目立っている倉敷市に対する怒り」などを幾度も記事などで書いている。こうした表現も糾弾されかねないのだ。これは過剰な心配であろうか?

 近年、盛り上がった「ヘイトスピーチ」に反対する運動は迷走し、今や「自分がヘイトスピーチだと思ったものがヘイトスピーチ」とでもいいたげな、独善的なものへと堕落している。

 いくら罰則を設けず、理念を訴えるための法律だと説明したところで、実際に法案が成立すれば善意の皮をかぶった「ヘイトスピーチ狩り」が始まるだろう。この法案を推進する人々は「反ヘイトスピーチ」運動の迷走と暴走が、見えていないのだろうか?
(文=昼間たかし)