豚骨醤油ベースのスープにコシのある太麺が絡まり、一度食べたら癖になる「家系ラーメン」。
ここ2、3年、全国各地で新チェーン、新店が続々と登場し各店舗の評価がネットでも飛び交っている。そんな中、うまい店、まずい店をどうやって見極めればいいのか?
ラーメン業界に長年関わってきたA氏が匿名を条件に教えてくれた。
「かなり乱暴な言い方になりますが、最近、急にできたお店はまずいところばかりなので要注意。居抜き店舗で業態変換したケースが非常に多いのですが、そういった店は資金力に任せてチェーン展開している会社が利益重視で急速に出店した場合がほとんどなんですよ」
A氏によれば、有名店で修業するなど情熱を持ってこだわりの味を追求するような店主は、そういったフランチャイズ店(FC店)にはほぼいないとか。
「FC店が増えた理由のひとつに、家系ラーメンは調理工程が少なくマネがしやすいため、ある程度のクオリティの味をすぐに作れるようになるという点が挙げられます。ただ、それはあくまで“ある程度”のレベル。うまいラーメンを作るのとは別次元の話です」
実は最近の家系ラーメン店には、専門業者が工場で大量製造した冷凍スープを購入し、店内で解凍して提供するケースも増えている。しかし工場生産だからといって、決してすべてのクオリティが低いわけではないようだが…。
「冷凍スープでもおいしいお店はありますが、まだまだ数が少ない。せっかく食べるのだから個性のある自家製スープのお店に行ってほしいですね。冷凍か自家製かを見分けるポイントは、店の外まで豚骨の香りが漂っているかどうか。
そもそも、朝早くから寸胴鍋いっぱいに豚骨を炊いて作るのが家系ラーメンのスープですから強いにおいがして当然。それにイチからスープを作っているなら店内にスープ用の寸胴鍋がいくつもあるはず。
また、繁盛店は客の回転が速く、卓上調味料の減りも早い。すり下ろしたニンニクの色や香りが新鮮かどうかはわかりやすいポイントです」
最後に、A氏は家系ラーメン店が氾濫する現状にこう警鐘を鳴らす。
「そこで修業したわけでもないのに、有名店と似たような店名にするFC店も多いです。要するに、客が勘違いするようにわざと紛らわしい店名にしているのです。昔から頑張っている店からすれば、その程度の情熱しかないFC店だけを食べて『家系ってこの程度か』と思われるのが一番悔しいこと。
せっかく一大ジャンルになったのに、まずい店ばかりというイメージが強くなってしまうと、家系ラーメンというジャンルごと衰退させる原因にもなりかねません」
つまり、我々がうまい店を見抜くことも家系ラーメンの未来を支えることになるのだ。
(取材・文/牛嶋健、昌谷大介[A4studio])